脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

春暮康一と『野中広務 差別と権力』とシュミットについて

赤穂市民病院にいた脳外科医竹田くん 他の病院で勤務してやらかしていた:ハムスター速報
医者で外れ退くと比喩抜きで命に係わるんで、そこにはきちんと自由競争の原理が働くようにしてほしい。ガチ藪とゴッドハンドが同料金なのは悪質なガチャにもほどがある。


 風邪ひくと鼻づまりで薄味のものが全く美味しくなくなる→味の濃い脂っこいものを喰う→胃もたれで死ぬのコンボは人体のバグだと思う。

Livin' in the city it's a hazy way

春暮康一

春暮康一
 昭和六十(1985)年~。日本のSF作家。山梨県甲府市出身。
 山梨大学大学院物質・生命工学専攻修士課程修了。現在メーカー勤務のエンジニア。2019.8投稿作「オーラリメイカー」が第7回ハヤカワSFコンテストで〈優秀賞〉を受賞し、'19.11作家デビュー。(wikipediaより修整引用)


 ハヤカワSFコンテスト受賞作の「オーラリメイカー」を『SFマガジン』で読んで衝撃を受けて以来の大ファンな作家さん。毎年各章の受賞作の冒頭部分は読んでますが、速攻単行本買いに走ったのは確かこの人だけ。壮大で緻密な設定で描かれる異種族の物語に一発でノックアウトされました。以降も多作とは言えませんが、コンスタントに良作を発表してくれておりこれからの飛躍が楽しみな作家さんの一人です。

差別と権力

野中広務~差別と権力
 平成十六(2004)年6月30日初版発行
 著者:魚住昭*1、発行者:野間佐和子*2、発行所:株式会社講談社、印刷所:大日本印刷株式会社、製本所:黒柳製本株式外社
目次

  • 第一章:漂流する村
  • 第二章:融和の子
  • 第三章:祈り
  • 第四章:青雲
  • 第五章:田中角栄*3
  • 第六章:転機
  • 第七章:二つの顔
  • 第八章:争奪戦
  • 第九章:政治と土建
  • 第十章:シマゲジ*4追い落とし
  • 第十一章:経世会分裂
  • 第十二章:落城
  • 第十三章:村山政権の守護神
  • 第十四章:恐怖の絆
  • 第十五章:勝者なき戦争
  • 第十六章:差別の闇


 小泉政権下での悪役ぶりと、京大の桂キャンパス移転での暗躍の噂とで、恨み骨髄だった15年前の初読時以来の再読。改めての感想としては、汚職談合裏取引脅迫利権買収なんでもござれの日本の暗部を煮凝りにした様なエピソードの連続が一周まわってカッコよさすら覚えるほど。当時は全く気にも留めなかった点としては、自社連立や自公連立に三面六臂の大活躍で、今の自民党の堕落の元凶はお前かと言いたくなりました。意外だったのは、同和政治家の代名詞と認識していたので、同和利権をかなり抑圧していて一種の防波堤になっていたところ。彼が失脚したからパンドラの箱が空いて地獄絵図になって橋下府政を招いたのかと一人納得。以上、公明党主導の弱者利権構築阻止が大きな政治課題となっている今だからこそ読み返す価値のある一冊でした。

シュミット

シュミット Helmut Schmidt
 西暦1918~2015年。ドイツの政治家。ハンブルク出身。
 第二次大戦で東西の戦線に従軍し、イギリス軍の捕虜となって1945終戦ハンブルク大学政治学、経済学を学び、'46社会民主党に入党。'47-'48社会主義学生同盟(SDS)の委員長となる。ハンブルク市行政で働いた後、'52-'62連邦議会議員。'57連邦議会議員団の幹部会、'58連邦党幹部会、'61-'65ハンブルク市内相も務める。'62洪水災害での果断な対策指揮で一躍有名となる。'65連邦議会選挙で再当選し、キージンガー*5政権時には、'67-'68院内総務、'68同党副委員長として閣外から連立政権を支えた。W.ブラント*6政権では'69-'72国防相、'72経済・蔵相、'72-'74蔵相を歴任し、ブラントの辞職後に'74-'82首相となる。国際的通貨危機オイルショックの影響や、テロリズム対策など内外の危機管理に当たるが、連立のパートナーである自由民主党の離反とキリスト教民主同盟(CDU)のH.コール*7を後継首班とする建設的不信任案の議会通過によって'82退任に至った。その後週刊誌『ツァイト』の共同発行人となり、ヨーロッパの政治について論説をはじめ文筆活動に従事。(『岩波世界人名辞典』より修整引用)


 サミットの産みの親にしてNATO強靭化の立役者って認識で合ってるのかしらん。確か親父が昔「日本の岸信介に西ドイツのシュミット」戦犯上がりの首相を許す腐敗した西側諸国の体制を糾弾してたのを思い出します。うん、俺よくそんな英才教育を受けて左翼に染まらなかったなと感心しきり。
 閑話休題。そんなシュミット氏の略歴を力不足を承知で略述。まずは青年期ですが、元ナチスって後ろ指さされるからにはどんな事をって思ってましたが、ほぼ単純に徴兵されて一将校として必死に戦っただけっぽくて、これでアウトなら戦中に一定年齢以上だった人間全アウトだろってレベル。正直どないすれと。で、戦後ハンブルク大学で経済学を学び市職員を経て政界進出。ハンブルクの大洪水時でのリーダーシップでその声望を轟かせ一躍ドイツ社会民主党SPD)の重鎮へ。ギョーム事件でブラントが退陣した後を受けて首相就任。外では欧州理事会や欧州安全保障協力機構 の創設やNATOやサミットの本格化などの傍らアラブ諸国への接近をはかり、内では「ドイツの秋」を強硬路線で鎮圧する一方で今に続く社会民主主義的な経済福祉政策に大きく舵をきるなど、右派的な側面と左派的な側面の同居するタフな政治家だったようです。最後はその左派的経済政策が自由民主党(FDP)の離反を招き退陣と相成りました。経歴と政策見るだけで右派左派どっちからも反発買いまくりなのが一目瞭然で、そら過小評価もされるわなといった感じですが、こういった中庸を行くバランス感覚のある偉人こそが本来評価されるべきなのではないでしょうか。

Picking up the pieces that get in my way

 外交ではタカ派も経済福祉政策はバリバリのハト派ってシュミットの経歴みると岸田総理まんまだなあと。『差別と権力』で描かれた野中広務の人生もそうでしたが、ハト派的な政策死守するためには外交面では各方面とバチバチにやり逢わなければいけないんでしょうね。春暮康一の描く苛酷な弱肉強食の異種族文明を思い起こされます。外交ハト派で内政タカ派だった安倍晋三とその逆の岸田総理歴史の審判はどちらに軍配を挙げるのでしょうか。今からちょっと楽しみです。


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*1:代表作:『特捜検察の闇』・『渡邉恒雄 メディアと権力』・ 『出版と権力 講談社と野間家の一一〇年』他。

*2:講談社第6代代表取締役社長。父省一、母(町尻)登喜子。子に省伸。夫の急死に伴い社長就任。父祖から引き継いだ名門出版社を順調に発展させた。

*3:第64-65代内閣総理大臣。陸軍上等兵。父角次、母フメ。佐藤栄作に寵愛され当時最年少で自民党幹事長を勤めるなど累進。角福戦争に勝利し首相就任。日中共同宣言などの功を挙げるも、オイルショックなどにより肝心の日本列島改造計画は頓挫し金脈問題により下野。その後ロッキード事件の発覚により表舞台からは失脚するも、三角大福及び次代の中曽根内閣まで闇将軍として君臨し続けた。

*4:島桂次。第15代日本放送協会会長。池田勇人番記者として頭角を顕し、報道部長として 『ニュースセンター9時』・『NHK特集』などを立ち上げ累進。NHK会長まで上り詰めるも、愛人問題や経費流用問題により失脚退陣。

*5:Kurt Georg Kiesinger。ドイツ連邦共和国第3代首相。欧州評議会副議長やバーデン=ヴュルテンベルク州首相などで名声を博し、エアハルトの後を襲いCDUの党首として連邦首相に就任。戦時中ナチ党に在籍していた過去から攻撃の的となるも、東方外交や学生運動の鎮圧などに一定の功績を残した。ブラント率いるSPDの躍進に伴い首班の座を彼に譲り下野。

*6:Willy Brandt。ドイツ連邦共和国第4代首相。父ヨーン=メラー、母マルタ=フラーム。戦前からドイツ社会民主党員としてナチスに対抗しスウェーデンへ亡命。戦後帰国しSPDに合流。西ベルリン市長としてベルリン危機に対処し名声を博し、SPD党首に就任。キージンガー政権での外相を経て首相に就任。東方外交によりノーベル平和賞に輝くなど多くの功績を残すもギョーム事件により失脚下野。以降は社会主義インターナショナル議長として活躍した。

*7:Helmut Josef Michael Kohl。ドイツ連邦共和国第6代首相。ラインラント・プファルツ州の地方自治で頭角を顕し、バルツェルを破りCDU党首に就任。連立内閣内でのSPDとFDPの不和に乗じて政権奪取に成功し首相戴冠。フランスやアメリカとの関係強化により冷戦末期の困難な世界情勢を泳ぎ切り、ドイツ再統一に成功。圧倒的人気を背景に長期政権を樹立するも、東ドイツとの経済格差問題による経済の低迷などにより1998年の連邦議会選挙で大敗し退陣。