脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『「文芸春秋」にみる昭和史2』

カオスちゃんねる : 自称「腕時計つけない派」のやつって自分が納得できるレベルの時計持ってないだけだよな
「高齢者相手の仕事なので、咄嗟に抱きかかえたとき怪我させないように」ってのを建前にしてますが、面倒臭い・・・が本音だったり。


 被後見人および禁治産者でないことの証明書を取りに広島法務局へ。このご時世本籍地でしか取れない書類ってかなりの時代錯誤。まあ、これを口実に正月休み延長できたからいいか。

冴えない顔で泣いちゃった夜を重ねて

 世相を映す鏡、それは雑誌。日本を代表する国民的言論紙『文藝春秋』が描く昭和の世相。あなたはこの時代どう生きてましたか?

 大正十二年創刊の伝統を活かし切ったシリーズ。第2巻である本巻は昭和二十一年から昭和四十五年までの所謂戦後復興〜高度成長期。次第に段々と明るく力強く歩みを始める新生日本の空気を活写してくれています。折角なので各年ごとの印象に残った記事を一つずつ紹介。

  • 昭和二十一年「網走の覚書」・・・赤い貴族の筆頭格宮本顕治の描く網走獄中記。意外と牧歌的な網走刑務所の雰囲気が印象的です。
  • 昭和二十二年「国破れてハダカあり」・・・戦後すぐのヌードショー事情の回顧記事。内容的には大したことありませんが、個人的に額縁ショーには親父の本棚の戦後特集本で見かけて、思春期最初期に色々お世話になったので非常に感慨深いです。
  • 昭和二十三年「太宰治のこと」・・・親友井伏鱒二による太宰治の追悼記・・・なんですが、wiki等でも有名なクズエピソード満載なのでドン引きすること間違いなし。いくら人間性と作品の価値は無関係って言ったって限度はあると思うんだ。
  • 昭和二十四年「天皇陛下大いに笑う」・・・幹事辰野隆による、徳川夢聲・サトウ=ハチローを連れた昭和天皇との会見の回顧座談会。内容的には大したことは喋ってないんですが、面子が面子だけにそれだけでブンガクしてるのは流石。取り敢えず、コメディアン連も昭和天皇もミーハー的にキャッキャッしてた和やかな会談だったんだなあてのがよくうかがえて、微笑ましいです。
  • 昭和二十五年「朝鮮戦争・この戦いを私はこう思う」・・・朝鮮戦争勃発に伴う著名人からの寄稿記事。内容的には可もなく不可もなく。実に文藝春秋チックな内容でした。
  • 昭和二十六年「ソ連が還さぬ一人息子」・・・ロシア文学者昇曙夢氏によるシベリア抑留された自身の長男の捜索の顛末記。記事内では未だ帰還せずとなってますが、調べたところ後日無事帰国できたようで何より。久しぶりに本読む途中でネット検索した気がする。
  • 昭和二十七年「大蔵大臣はつらい」・・・池田勇人の半生記。『疾風の勇人』のタネ本の一つでしょう。しかし何度読んでも波瀾万丈だなあこの人。
  • 昭和二十八年「皇太子の評判」・・・今上天皇の皇太子としての初外遊であるエリザベス2世戴冠式出席の評判記。当然と言えば当然のことながらもヨイショ記事ではありますが、陛下のお人柄が感じられてほっこり。
  • 昭和二十九年「人我を『民衆の敵』と言う」・・・現オーミケンシこと近江絹糸紡績の近江絹糸争議の社長側からの弁明書。実に現在のブラック企業の経営者とそっくりのことを言っていて苦笑。
  • 昭和三十年「『夫婦生活』始末記」・・・伝説のエロ本雑誌『夫婦生活』の興亡記。単純に編集者の奮闘記として読んでも十二分に面白い出来栄えです。こんな筆才のある人が編集者やってたんだから、そりゃあ売れるはずだ
  • 昭和三十一年「第三十四回芥川龍之介賞決定発表」・・・文壇の後には政界の風雲児石原慎太郎芥川賞受賞の選評。喧々諤々の議論の末での受賞だったことがよく分かります。しかし、このころからもう「一人称の小説は〜」って眉ひそめられてたんですね。
  • 昭和三十二年「高橋球団来たり去る」・・・伝説の短命球団高橋ユニオンズの顛末記。出てくる選手たちの名前を一人も聞いたことがないあたりにも悲哀が漂います。
  • 昭和三十三年「紀元節についての私の信念」・・・皇室きってのいらんこと言い三笠宮崇仁親王殿下による紀元節に関しての私見。意外とまっとうなことを言っててびっくりしたのは自分だけでしょうか
  • 昭和三十四年「皇太子妃スクープの記」・・・皇太子妃は誰だ!のスクープ合戦記。今も昔も変わらぬブン屋の手段の択ばなさを堪能できます。
  • 昭和三十五年「文化勲章騒動記」・・・岡潔文化勲章受章した際の騒動記。今も昔も理系の学者ってのは変人しかいないのか
  • 昭和三十六年「だっこちゃん始末記」・・・題名通りだっこちゃんの始末記。ツクダヤ社長の企業人とは思えない、恬淡とした欲の皮の突っ張らなさに驚愕
  • 昭和三十七年「新幹線のトンネル野郎」・・・新丹那トンネル開通奮闘記。男の子でこれに燃えない奴は嘘です。
  • 昭和三十八年「人のいのち」・・・鶴見事故の被害者遺族の随想。裁判官である筆者の文章は職業柄かどこか他人事感がぬぐえないので感情移入は大分しづらいかと
  • 昭和三十九年「"オギノ式"乱用者に告ぐ」・・・へー、オギノ式ってこういう理屈だったんだ
  • 昭和四十年「死について語る楽しみ」・・・稀代の文学者高見順による闘病っていうか、死を目前にした自身の心境を赤裸々に描くエッセイ。達観しすぎてて共感は難しいですが、同じ境遇になれば少しは理解できるのかしらん。
  • 昭和四十一年「ベトナム最前線の日本兵」・・・ベトナム戦記の第一人者石川文洋の描く、沖縄県出身の日系米兵の物語。なんとも物悲しく一篇の良質な短編として堪能できてしまいます。確実に作者の意図からは外れますが
  • 昭和四十二年「日本列島改造の青写真」・・・田中角栄による「日本列島改造論」のプロトタイプになるのかな?今の目から見ても、人口稠密化への都市の耐性が少し悲観的過ぎるくらいでそれ以外は今でも十分通じる議論なのが凄まじいです。
  • 昭和四十三年「東大を動物園にしろ」・・・三島由紀夫による痛烈な学生運動と弱腰な大学当局への罵倒。見事な三島節が炸裂してますので、ファンの方はお見逃しなく
  • 昭和四十四年「安田講堂再占拠宣言」・・・東大全共闘幹部による負け犬の遠吠え。「結果」を知ってる身からすると滑稽でなりません
  • 昭和四十五年「三島裁判か陽明学裁判か」・・・三島由紀夫の父平岡梓による三島事件裁判への痛烈な罵倒。なんていうか、血は争えないんだなぁと。

良くなりそうな明日に期待する度に

 なんともまとまりのないというか、ごった煮な印象の残る四半世紀。我らの生きた平成は後世いかに語られるんでしょうか。今から楽しみです。さぞかしカオスなんだろなあ。

帰ってきた今日の一行知識

岡潔の多変数複素関数論における三つの大問題の解決の偉大な業績のバックボーンになったのは俳句の研究
うん、今に始まったこっちゃあありませんが、狂人天才の思考回路はよう分らん。