脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『赤猫異聞』

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最近の子は真面目だなー。それだったら俺何回死んでなきゃいかんのでしょうか。


 ・・・・・・休みの日って一日こんなに長かったでしたっけ・・・


SRWZⅡ再世篇進捗

  • 3周目第40話「歌え、誰かのために」紅蓮聖天八極式降臨。トップエース:ゲイナー=サンガ@キングゲイナー

赤猫異聞

赤猫異聞

風よ今強くこの身に纏った炎を支えて

 火事と意趣返しは江戸の華!牢名主の繁松、キンギレ退治の七之丞、そして白魚のお仙。「三人共に戻れば無罪放免、一人でも逃げれば、全員死罪」の無体な条件とともに解き放ちを受けた三人の悪党どもは、紅蓮の炎に染まる江戸の夜に何を為すのか。


 皆大好き浅田次郎の新刊。今回は『憑神』の系統に連なる江戸最末期を舞台にした滅び行く者たちの挽歌がテーマの一冊。今回は一部を除いてきちんと新時代に「転生」できているので、それも主題の一つかしらん。
 内容は浅田次郎平常運転って感じの可もなく不可もなく手なりに進むよくも悪くも力の入りすぎてない作品。正直序盤の江戸末期の伝馬町牢屋敷の文化風俗の紹介パートが一番面白かった気がします。全体としてはミステリーの要素を取り入れていこうって気概が感じるんですが、最初の一人目であっさりうっかり「犯人」ばらししちまってるのがなんともトホホ。浅田文学に構成の妙は期待するだけ野暮とは重々知りつつもさすがに苦笑は禁じえません。
 とは言え、恐ろしいのはそんな手抜きや構成の失敗が思いっきり露になりつつも、しっかり最後まで読ませる小説になっているところ。作者の円熟を感じさせます。
 てな訳で、名状しがたい興奮とか説明不要の勢いとかとは無縁の安心して読める量産型娯楽小説ですので気軽に読みましょう。

消えた地平へと希望の種を捜しに飛び立つ

 「浅田文学の真髄は滅び行く者たちへの鎮魂歌にあり」ってのが個人的な見解ですが、これなんかもその典型でしょう。時代に取り残され忘れられ行く旧弊たちへの飽くまで優しい視線は逆説的に新時代の開拓への勇気をくれる気がします。いつの日かどんなパイオニアも果てしなき時の流れから外れ、澱み腐り行く旧時代の遺物に成り果てるのでしょうが、次代の浅田次郎が美しい物語を仕立ててくれるのならそれこそが本望な気がしませんか。

帰って来た今日の一行知識

現在でも「解き放ち」は法律上存在する
刑事収容法第83条第2項「(前略)被収容者を護送することができないときは、刑事施設の長は、その者を刑事施設から解放することができる。地震、火災その他の災害に際し、刑事施設の外にある被収容者を避難させるため適当な場所に護送することができない場合も、同様とする。」がそれ。ただ江戸時代と違って大人しく戻って来ても減刑の措置はないんですね。粋じゃないなあ。