脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

日輪の刺客と進士と孝淑睿皇后について

http://www.tokuteishimasuta.com/archives/6299074.html
アッパー系の人格障害持ちなどの地雷さえ踏まなければ、病院でも不動産でもとりっぱぐれがないから美味しいんですよね。利用者も担当者も所詮他人の金なんで多少荒っぽい請求かけても余程の事がないと文句いってきませんし。ついでに「行き場のない人を仕方なく受け入れてやってるんだ」の正義面までできると。性善説に頼るのもそろそろ限界だと思います。


 そう言えばすっかり報告忘れてましたが、来週6/17(日)に介護劇団たなごころ第二回公演「おめでとう〜せめて父親らしく〜」があります。チケット余ってますんで、ご興味のある方は是非お声掛けくださいまし。


SRWZⅡ再世篇進捗

  • 2周目第55話「復活の暗黒神」アンチスパイラルと交戦中。トップエース:ジェフリー=ワイルダー@マクロス・クォーター要塞艦型。

涙はない涙はない明日にほほえみあるだけ

日輪の刺客

2007-03-11

日輪の刺客
 昭和十年八月、駒形の前川で鰻を食べていた安吉*1と松蔵*2は、場違いな軍人の姿に目を留めた。その陸軍将校はどうやら財布を掏られたらしい。なすすべもなく座敷に座っているところを見かねた安吉が救いの手をさしのべる。この人物は陸軍中佐相沢三郎*3。台湾への赴任をまえに、福山から上京してきたところであった。安吉は相沢を青山のアパートに連れ帰りしばし話をするが、なんとはなしに気がかりをおぼえる。翌朝、場所はかわって帝国ホテル。陸軍軍務局長永田鉄山*4を囲む朝食会が中庭で開かれていた。バンケット・プロムナードで永田鉄山と語らった常次郎*5は松蔵からきいた相沢中佐の話と考え合わせ、何事かが起こると予感する。部屋にとってかえし陸軍少佐に変装し、三宅坂陸軍省に向かう常次郎。途中で軍刀を下げた相沢中佐と行き会うが―。(『天切り松読本』より引用)

 みんな大好き浅田次郎作品の「長男」『天切り松闇がたり』の一篇。相沢事件をモチーフに目細の安一党の活躍を書くはずが、主役の書生常を筆頭に完全に傍観者状態で勝手に話は進みます。取り敢えず金甌無欠の完璧超人に造形された永田鉄山閣下が素敵です。てな訳で、浅田史観で解釈する相沢事件をご堪能あれ。内容が底本の松本清張の『昭和史発掘』そのままなのは内緒だ。

天切り松 闇がたり 4 昭和侠盗伝

天切り松 闇がたり 4 昭和侠盗伝

蒼穹の昴+進士

2007-01-06

蒼穹の昴
 浅田次郎*6著の長編小説、及びこれを基にしたテレビドラマ。1996講談社刊。
 清代の中国を舞台とした歴史小説。第115回直木賞候補作。浅田自身「私はこの作品を書くために作家になった」と、帯でコメントした。なお浅田は続編となる『珍妃の井戸』、『中原の虹』、『マンチュリアン・リポート』を書いている(いずれも講談社刊)。10年以上経た後に日中共同制作でテレビドラマ化された(全25回)。2009.4脚本楊海薇*7・監督汪俊*8のもと撮影が開始され、'10.1.2-7.10NHKデジタル衛星ハイビジョンで字幕版が放送されたほか、'10.9.26以降日曜夜にNHK総合テレビジョンでも日中2か国語により放送されている。'10中国版DVDが発売されたのに続いて、全8巻の日本語版が発売(2010.12 1〜4巻、2011.1 5〜8巻)された。(wikipediaより引用)

進士
 旧時の科挙制度に関わる名称。この呼称は『礼記』「王制」篇に初出する。
 唐代には貢挙の中に進士という1つの科目があり、これに応じた者は全て「進士」と呼ばれた。宋は唐制を踏襲し、科挙に応じた挙人はみな進士と呼ばれた。明・清時代は挙人のうち首都に赴いて、会試を経て採用された者を「貢士」といい、殿試を経て採用された者を進士といった。この殿試の合格者を「登科」といい、3等級に分け、「三甲」と称した。一甲は3名で、進士及第を授与され、二甲の若干名は進士出身を授けられ、三甲の若干名は同進士出身を授けられた。これが科挙試験の最高の段階であった。(『中国歴史文化事典』より引用)

 進士、特に清朝末期のマンダリンの方々と言えば、頑迷固陋にして旧例墨守既得権益護持にしか能のない亡国の官僚集団というのがパブリックイメージなはずですが、我らが浅田次郎の筆にかかるとあら不思議、有能無私の高潔なる憂国の士に早変わり。特に『蒼穹の昴』では主人公の一人の梁文秀を筆頭に楊喜楨・王逸・順桂・李鴻章と傑物揃い。逆に袁世凱や康有為なんかは非進士としてどこか考えの足らない下種な小人物に造型され、戊戌の変法の挫折は科挙の洗礼を潜ってない康有為に主導者を任せたからだといわんばかりの筆致。浅田先生の中華の学問の清華への尊崇ぶりがうかがえます。まあ、主人公周りがいつの間にか金甌無欠の完璧超人になるのは浅田文学のお約束と言ってしまえばそれまでですが。

蒼穹の昴(上)

蒼穹の昴(上)

道光帝+母

2006-12-28

道光帝
 乾隆四十七(1782)〜道光(1850)年。中国、清第8代の皇帝(在位1821-'50)。諱:旻寧、諡:成皇帝、廟号:宣宗。
 嘉慶帝*9の次子。社会不安の増大、西欧列強の侵入など、難局に際会するが、柔軟な対応策に欠け、アヘン戦争の敗戦と、その後の中国植民地化の進行、および太平天国の蜂起を余儀なくされた。(『コンサイス人名辞典 外国篇』より引用)


1、はは。母親。
2、ばば。老女。
3、乳母。めのと。
4、雌。
5、もと。物を生み出す根源。
6、元手。元金。
7、親指。
8、物の大きいもの・重いもの。
9、養う。
10、根拠地。出身地。
(『大漢語林』より引用)

 アヘン戦争太平天国の乱で多難な治世をおくった道光帝こと愛新覚羅綿寧。その母親はというと孝淑睿皇后になります。満洲旗人の喜塔臘氏出身で、和爾経額の娘。乾隆二十五(1760)年生まれで、嘉慶二('97)年没の享年38。嘉慶帝の皇后で子に皇二女(夭折)、綿寧(道光帝)、荘静(固倫公主)の三子を為す。皇母ながらも息子の即位前に死亡した為、皇太后にはなれず。っていったところでしょうか。中国において、女子で記録に残るのは武則天とか西太后とかの怪物じみたお方くらいなので、事績も私レベルで分かるのはこれくらいでした。

撃てよ砕けよ地獄の底に落ちるとも

 道光帝のアヘン戦争に始まる清朝の零落。日月を動かす進士の力を以ってすら抗いがたきその頽勢と現代日本が何だかかぶって仕方ないのは私だけでしょうか。ジャパンアズナンバーワンの繁栄の余韻も醒めやらぬも気付けば世界の潮流から取り残された眠れる獅子に。小泉改革も挫折してリーマンショック以来の民主党の迷走は蒼穹の昴に描かれた清朝末期の西太后の暴走を感じさせるに十分です。我らが母なる邦を後世に伝えんが為にも、今こそ日輪の刺客が欲されているのではないでしょうか。まあ、問題は誰か一人や二人に人誅食らわした位で何とかなるほど問題の根は浅くないってことなんですけどね。ああ、勧善懲悪な物語の世界が羨ましい。

帰って来た今日の一行知識

科挙合格者の平均年齢は26歳
意外と若いのにびっくり。博士課程修了とほぼ同年と考えると英語訳のドクターの呼称はぴったりなのかもしれませんね。しかし、そう考えると一気にありがたみ薄れるな。

*1:杉本。掏摸師。通称:「目細の安」。「中抜き」の妙技を駆使し、童歌に歌われるほどの圧倒的な人気と知名度を誇る。そのカリスマは組織経営にも及び、仕立屋銀次が入獄した際には、古手の親分衆を差置き後事を託される。その際に見せた統率力と対官宥和の穏健路線を見込まれ、銀次押籠により一家の後継に推されるも、「親子」の情断ち難く出奔独立。見習いの松蔵を入れても六人の小所帯ながらも、大正〜昭和初期の帝都に雷名を轟かせた。

*2:夜盗。父村田平蔵。通称:「天切り松」。父に売り飛ばされ目細一家の下働きとなる。そこで黄不動の栄治に師事し、天切りの技を極め、東郷平八郎より「天切り松」の二つ名を賜った。晩年は留置所にふらりと現れては目細一家の活躍を語る語り部として活動している。

*3:台北高等商業学校配属将校。陸軍中佐。父兵之助、母まき子。陸士22期卒として順調に出世するも、昭和維新の風に当てられ皇道派に接近。真崎甚三郎教育総監の罷免に義憤を滾らせ、相沢事件を起こし処刑。

*4:陸軍第20代軍務局長。陸軍中将。父志解理。ドイツ留学の経験を活かし、ヨーロッパ方面の駐在武官として活躍。帰国後は軍務畑を累進し、国家総動員法の基礎作りに尽力。統制派の中心人物として将来を嘱望されるも相沢事件にて横死。

*5:本多。詐欺師。二つ名:「書生常」。「百面相」の異名をとる稀代の変装術と、東大教授をして「十年に一人の秀才」と言わしめる頭脳をもって数多の巨額詐欺事件を引き起こす。

*6:代表作:『鉄道員』、『壬生義士伝』、『一刀斎夢録』他。

*7:『結婚って、幸せですか?』他。

*8:代表作:『像霧像雨又像風』、『最后的99天』、『夫妻那些事』他

*9:清朝第7代皇帝。諱は顒琰。父乾隆帝、母孝儀純皇后。旧名:永琰、廟号:仁宗。乾隆期の全盛の反動から白蓮教徒の乱や回族・苗族らの反乱に悩まされ、なんとか鎮定するも財政難に苦しめられた。