脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『BLACK LAGOON』

VIPPERな俺 : 読書家のお前らオススメの小説教えろ。
浅田次郎の『プリズンホテル』、岳宏一郎『群雲、関が原へ』、中島敦の『山月記』、小島法師の『太平記


 肺の不調も早10日。医者にも客観的数字も画像も健康体とのお墨付きで匙を投げられ、本格的にやな予感。こりゃあ心療内科にでもいかなあきませんかね。出荷前のこの大事な時期に疵物になってると嫌だなあ。

ブラック・ラグーン (1) (サンデーGXコミックス)

ブラック・ラグーン (1) (サンデーGXコミックス)

Been burn in the hell By all those pigs put there

 血のカーペットの上を銃弾が飛び交う魔都ロアナプラ。そこで本拠を構える運び屋ラグーン商会。ひょんなことからそこに就職してしまった元しがない商社マン岡島録郎改め役立たずの見習い水夫ロック。彼の目にこの世界はどう映るのか。


 心が弱るとぶっちぎりのピカレスクに耽溺したくなる*1のが私の悪い癖。てな訳で、泣く子も黙る超バイオレンスピカレスクブラクラさんの登場です。
 暴力と陰謀の支配する町ロアナプラを舞台にレヴィやバラライカら魅力的な役者たちが小粋なジョークと共に暴れまくります。その圧倒的なバイオレンスシーンの迫力も最高ですが、特筆したいのはその台詞回し。実にアメリカンな芝居がかった大仰な会話は日本人離れしたセンスを感じます。まあ、合わない人には鬱陶しいの一言で片付けられそうですけど。モンティ・パイソンなどと同じく油断すると半分以上意味不明の呪文になってしまうのも難です。ガンバトルシーンも魅力的なのですが、日本人好みの一瞬の交錯とその前後の見得切り合戦って趣向ではなく、敵味方彼我の区別もつかないどろどろぐちゃぐちゃの大乱戦になってしまうのがちと困り者。最近シリーズの「ロベルタ復讐編」はそれで大分寄り道してちと冗長になっている気がします。
 最後にキャラクターについて。別の世界の理屈で動く人同士のディスコミュニケーションが徹底して描かれている為、主人公は勿論、小悪党からシリアルキラーまで一本筋の通った信念の人として確立されているのが素敵です。狂気の底に沈み二人だけの世界を構築した「双子」ヘンゼルとグレーテルに、ザ・任侠の世界に生きて死んだ鷲峰主従。実に歪な世界に生きる彼等の語る「まっすぐ」は実に心を抉ります。

Those aren't tears Don't let it trick on you

 この世界はどぶ川のように淀み腐っている、だから変えなければならない。宗教家や革命家の皆さんの常套句ですが、崩壊しかけとはいえこの世にあるべからざるユートピアに住まえてしまっている我々には別世界の御伽噺にしか聞こえません。難民キャンプやスラム、戦火に覆われた村に北朝鮮にでも住んでいれば、少しはその言葉の意味が分かるのかもしれませんが、そこまでの義理もなし。誰の言葉だったか、幸福とは格差の別名であるとはよく言ったもので、そういった「地獄」がどこかにあるからこそ、いまの我々が幸福を感じることができるのでしょう。人間生きていれば色々不満もあるでしょうが、少なくともこの『ブラック・ラグーン』をフィクションとして楽しめるだけの楽園にいれるだけの功徳を積んでくれた前世と祖先に感謝すべきだと思います。

Red fraction

Red fraction

帰ってきた今日の一行知識

かつて二丁拳銃を制式装備にしていた部隊がある
KGBの前身のNKVDがそれ。自動小銃実用化前に弾幕での面の制圧を実現しようとした試行錯誤の結果とのこと。なければないであるものでなんとかしようってロシアンスピリッツは尊敬に値します。

*1:大学ドロップアウト期に浅田次郎、前職末期にスクライドetc