脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

「マリみて」まとめてレビュー 1年生編

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/893118.html
アホくさ。美しい国だとか国語改革とかをぶち上げるなら、さっさとこの醜悪極まりない「政治的に正しい」日本語を駆除して欲しいもんです。

 
 今現在*1、今日感想を書く予定の本*2の残りが200Pほどありますので、潔く諦める事にしました。その代わりに年末年始のドサクサで全巻揃えて読破してしまった。「マリみて」の一斉レビューでお茶を濁しとうございます。紙幅と根性と文才の関係で、中途半端なネタバレ満載となっておりますので、未読の方はご注意下さいまし。

黄薔薇革命

マリア様がみてる 2 黄薔薇革命 (コバルト文庫)

マリア様がみてる 2 黄薔薇革命 (コバルト文庫)

私、令ちゃんにもっと強くなって欲しいの」by島津由乃

 ベスト・スール賞に選ばれるほどの名カップ黄薔薇姉妹が破局!?生徒会の激務と間近に迫った剣道大会の練習に追われる姉の足手まといにならない為に病弱な妹が自ら身を引いたとの美談が校内に広まって、後追い破局が続出。山百合会はこの姉妹制を揺るがしかねない騒動を抑えられるのか?そして、最愛の姉支倉令にロザリオを付き返した島津由乃の真意は。


 前巻が好評だったのか、長期連載が確定した第一回目。約一年という十分な準備期間のせいか、非常に丁寧なつくりで好感が持てます。ただ、最近の暴走由乃に比べると、この巻の由乃は手術で脳までいじられたんでないかって程の別人ぶり。あと黄薔薇さまの扱いはかなり酷いのでファンの方は注意。全般的にキャラを掴みきれてない手探り感満載の一冊。

いばらの森

マリア様がみてる 3 いばらの森 (コバルト文庫)

マリア様がみてる 3 いばらの森 (コバルト文庫)

いばらの森

私は世界中の人たちにわかってもらわなくていいの。大切な人にさえ、わかってもらえればいいの。」by佐藤聖

 コスモス文庫今月の新刊の作者は白薔薇さま!?女学院に通う二人の女生徒の禁断の愛のもたらした悲劇を描いた自伝的小説。その内容は白薔薇さまの悲恋を彷彿とさせるもので・・・白薔薇一家に二年生が欠けている理由が遂に判明。


 全般的にキャラが固定されきってない登場人物達のなかで一人異彩を放つ存在感の「白薔薇さま」こと佐藤聖さまの魅力満載の一編。ただ肝腎の謎解き部分が冗長でつまらないのが難点か。アニメ版みたく白薔薇さまの告白部分でぶった切った方が綺麗だったのでは。

白き花びら

マリア様がみているから・・・!」by久保栞

 私は愛してはいけない人を愛してしまった。「世間」に適応できないひねくれ者の佐藤聖とシスター志望の純真無垢な聖女久保栞。気高くも脆く儚い孤高の少女二人の禁断の愛の結末は・・・


 これぞ少女小説といったベタ甘の展開。耐性のある人はどうぞご堪能下さい。相変わらずイベント以前以後で中の人が変わったかのように性格が一変する仕様なのはケンチャナヨ

ロサ・カニーナ

マリア様がみてる 4 ロサ・カニーナ (コバルト文庫)

マリア様がみてる 4 ロサ・カニーナ (コバルト文庫)

ロサ・カニーナ

いっそ黒薔薇の方が格好よかったわね。」by蟹名静

 長きに渡り無批判に維持され続けられた、三薔薇による生徒会の寡頭支配と世襲制に一石を投じんと雄々しく立ち上がった反骨の少女「ロサ・カニーナ」。山百合会の最も長い日が今始まる。


 生徒会選挙。飛び交う実弾、虚実ない交ぜのスキャンダル。少女小説にそんなどろどろの政治陰謀劇を期待した私がバカでした。ただ、そんな邪念を廃せば、志摩子白薔薇さま襲名の決意と「ロサ・カニーナ」こと蟹名静の屈折した白薔薇さまへの想いを綺麗に纏めた良作だと思います。相変わらず聖さまの個人的魅力におんぶにだっこな構成なのは否めませんが。

長き夜の

未来のある若者が、過去のことなんざ気にしちゃ駄目よ。」by佐藤聖

 祥子さまのお家で新年会!!


 清子小母さまが出てくると何でこんなにぐでぐでのまったりした空気になってしまうんでせうか。

『ウァレンティ−ヌスの贈り物(前編)』

びっくりチョコレート

何百分の一かの確率に賭けて、祥子とのデートをゲットしたくない?」by佐藤聖

 バレンタインデー企画!三人の薔薇のつぼみのバレンタインカードを探し出せ!!

 
 この作者は事件とそれにまつわる心の動きを描くのは上手いんですが、イベントを書くと急に説明過多のだらだらした文章になってしまいます。てな訳で全体的に間延びした印象で退屈です。

黄薔薇交錯

これ、本当に私宛てかしら。」by鳥居江利子

 令が姉と妹に配ったバレンタインチョコ。二人の手元に届いたのは予想していたのとは違うもの。ひょっとしてプレゼントが途中で入れ替わったのではと思い悩む黄薔薇の長姉と末妹。犯人の令の思惑や如何に。


 これでもかと黄薔薇一家、特に令の魅力が詰め込まれたショートショート。この作者はこういう毒にも薬にもならない掌編書かせると非常に上手いです。

ウァレンティーヌスの贈り物(後編)』

ファースト デート トライアングル

それじゃあ今の話をしましょうか。それから、ほんの少し未来の話を。」by小笠原祥子

 前巻のバレンタインカード争奪戦の勝者の副賞は「つぼみ」との半日デート権。見事カードを見つけた田沼ちさと&令・静&志摩子の二組のカップルにドサクサ紛れにデートの約束を取り付けた祥子&祐巳も混じって、三組のデートが同時開催。それにそれぞれの思惑で後をつける由乃・写真部の蔦子・新聞部の三奈子も絡んでさあ大変。


 元から視点の切り替えが上手い作者ではないのが、総勢9人の視点が錯綜する構成で正直わやくちゃ。とっちらかった印象は否めませんが、デートシーンの甘さは相当なので、根性ある人は自身に置き換えて妄想を膨らませてはいかがでしょう。

紅いカード

痛い?先生の言いつけを守らないから罰が当たったのよ。」by小笠原祥子

 バレンタインデーイベントでの紅のカードの紛失の真相がここに!!幼稚舎時代から祥子さまに憧れ続けた少女鵜沢美冬の屈折した想いが引き起こしたちょっとした悲劇と喜劇。


 女性作家らしく繊細な描写の積み重ねでキャラをゆっくりじっくり熟成させる作風なので、必然的に新キャラでの短編は不得手となります。てな訳でそれなりの出来。過大な期待は無用。

紅薔薇さま、人生最良の日

・・・最悪だわ。」by水野蓉子

 バレンタインデーと受験日と生理日が見事にバッティングした紅薔薇さま。思うに任せぬ体を引きずって辿りついた薔薇の館で彼女を待つのは彼女が望んだ光景だった。


 同じ短編でも既存のキャラを使えばこうも出来が違います。微に入り細を穿つ心理描写の繊細さ美しさは男の為し得る仕事ではなし。勇気を奮って少女小説に手を出した甲斐があったと言ってもいい優しい作品です。今まで今一つ影の薄かった感のある「紅薔薇さま」こと水野蓉子の魅力が大輪の華を咲かせます。蓉子さまファン必見の一編。

いとしき歳月(前編)』

黄薔薇まっしぐら

ああ、傘はり浪人の妻になりたい。」by鳥居江利子

 黄薔薇さま援助交際疑惑!!


 三薔薇さまの中でも群を抜いて影の薄かった「黄薔薇さま」こと鳥居江利子救済企画。なんでもできるは何にも出来ないと同義っていうのを実感させられるキャラクターがようやく一人立ちか?と思いきや、卒業を前にめっきり存在感を増した聖・蓉子が大暴れの一編。

いと忙し日々

マジな芸で感心するより、私は心の底から笑いたい。」by佐藤聖

 学校行事の「三年生を送る会」と内輪の送別会の日程が被って大忙しの山百合会幹部の面々。正式参加して初めてのビックイベントに大張り切りの祐巳のやる気は空回りして・・・


 祭りの前のてんやわんやなのに何処か心の浮かれるあの雰囲気が良く出た良作。特に私のように雑用大好きの人は祐巳に心の底から共感できるでしょう。ああ高校時代の文化祭を思い出すなあ。

一寸一服

そうだな。ピプシロホドンかな。ステゴケラスじゃ、少し大きいかもしれない。」by山辺先生

 江利子山辺の出会い。


 少女漫画はどうしてこう男共に肩入れがしにくいんでしょうか。肝腎の山辺の魅力に乏しいのでどっちに感情移入するにせよ難儀なお話。

いとしき歳月(後編)』

will

可愛げがないけれど、あれでも私にとってはかけがえのない妹なのよ。」by水野蓉子

 送別会も終わり、後は卒業式を残すばかりとなった三月のある日。三人の薔薇さま達はそれぞれの形で「遺言」を残していく。


 退場を前に薔薇さま方の魅力大爆発です。文句も賞賛も付けようのない傑作。集英社らしからぬ、もったいないオバケの出てきそうなキャラの使い方ではないでしょうか。
 

いつしか年も

大切なものができたら、自分から一歩引きなさい。」by先代白薔薇さま

 卒業式!!!


 完全に主人公を差し置いて、最強クラスの魅力・存在感・キャラ立ちを手に入れた薔薇さま方の独壇場。正直これが最終回といわれても信じる位の完成度です。主人公世代の影の薄いこと薄いこと。この状況で世代交代を断行した作者の勇気は賞賛に値します。

片手だけつないで

すぐに白か黒か決めないと落ち着かないの?生真面目ね。」by鳥居江利子

 志摩子と聖。非常に特殊な距離感を保ち続ける変わり者姉妹の出会いと契約の舞台裏。


 悪い作品ではないのですが、他の二作の完成度とインパクトが強すぎます。聖の性格設定が「覚醒」以前以後との狭間で漂う不安定なもので読んでて違和感を感じます。あと、後付設定を悪いものとは言いませんが、この出来事があったあと一巻に繋がるってのはちと苦しくはありませんか?

たとえ深い闇に はぐれて迷い込んでも

 以上一年生編のレビューでした。残りの「二年生一学期編」「同二学期編」「同三学期編」は、今後ネタの準備が間に合わなかった際の救済企画用にとっておきますので、奇特な方はどうぞお楽しみに。


今日の一行知識

「ちょん」は江戸時代のころから存在する由緒正しい罵倒語。*3
別に「朝鮮半島に居住する人」もしくは「朝鮮半島に出自を持つ日本人」を特定して嘲る単語ではござんせん。胸を張って使いましょう。

Chercher ~シャルシェ~ (通常盤)

Chercher ~シャルシェ~ (通常盤)

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*1:pm11:00

*2:人物叢書 井伊直弼』現在、第四「溜間詰筆頭」まで読了。まだ大老にすらなってません。

*3:ex.『西洋道中膝栗毛』「仮染にも亭主にむかって…ばかだの、ちょんだの、野呂間だのと」