脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

女子高生と水戸と実学について

http://www.kajisoku.com/archives/eid730.html
まつろう者には寛容を、刃向かう者には鉄槌を!!


 枕が思いつきませんです。
 今宵の御題は「女子高生GIRL'S HIGH」「水戸」「福沢諭吉+学問のすヽめ+実学」久しぶりに歴史系のネタだぞ、っと。

しあわせの見本とか既存の意味に 惑わされてるうちは きっとすれ違う

女子高生GIRL'S HIGH

光あふれる宇宙をめざして - 脱積読宣言

女子高生GIRL'S HIGH
2006.4.3より関東独立UHF放送局*1で放送、全12話。
製作・著作:「女子高生」製作委員会、制作:アームス
原作:大島永遠、監督:ふじもとよしたか、企画:臼井久人・森尻和明、プロデューサー:伊平崇耶川瀬浩平・野中郷壱・越中おさむ、シリーズ構成:白根秀樹、キャラクターデザイン:きしもとせいじ、音響監督:清水勝則、音楽:Angel Note
メインキャスト
高橋絵里子:生天目仁美、香田あかり:雪野五月、鈴木由真:浅野真澄佐藤綾乃能登麻美子、姫路京子:氷上恭子、小川育恵:石毛佐和

 『コミック・ハイ!』で好評連載中のマンガと同作品のアニメの総称。
 まずはマンガの方の解説。『週刊漫画アクション』で『女子高生』の題で2001年3月に連載開始するも、'03年9月の休刊で一旦連載終了。新雑誌『COMIC HIGH』のオープニングスタッフとして連載再会('04.3)するもこれまた半年弱('04.8)で休刊。'05年4月に『コミック・ハイ!』と名前を変えて復刊したのと共に復活して現在に至る。掲載誌に恵まれない不遇の作品。
 内容はおバカで脳天気で下品な女子校生活を描いたハイテンションギャグマンガ。同じ女子校生活を描いた『私立T女子学園』とは180°逆なベクトルなのが興味深いです。アクション出身の出自もあって、多分にエロ分を含みますが、作者が女性だからか不思議な清潔感があります。ノリと勢いが命の作品なので、波長が合わなければそこまでですが、合えば最高に笑える作品だとお勧めできます。書店での配置も表紙もハードルは非常に高いですが、勇気を出して読んでみてください。因みに作者の大島永遠は『バツ&テリー』や『おやこ刑事』で有名な大島やすいちの娘。

 アニメの方は豪華な声優陣のハイテンションな熱演と崩壊した作画のギャップが笑える泣ける盛大な失敗作。書き手が男になった所為か、原作の持つ不思議な清潔感も失われ、下品な下品さに留まってしまったのも残念。リメイクを期待したい作品です。

水戸

優しい悲劇 - 脱積読宣言

水戸
 茨城県中部、水戸市の中心。鎌倉初期、千波湖北側の台地に城を築き、佐竹54万石の城下町として発展。江戸期は徳川御三家の水戸家の城下。(『コンサイス日本地名事典 第4版』より引用)

 今を時めく井川の出身高所在地*2としてプチブレイク中(?)の町。主な出身有名人に立花隆本田博太郎渡辺裕之など。水戸泉雅山武双山など有名力士が多いのも特徴。名産は言わずと知れた納豆。因みに井川は納豆嫌い。

 これだけではなんなので、歴史について少々。語源は湖の出入口*3を意味する「水戸」*4。中世期には音通で「三戸」の表記や、支配者の名から「江戸」の呼称も。
 水戸の名が最初に史料上に見えるのは、鎌倉時代(年未詳)の「吉田社神事次第写」*5。平安期は対岸の吉田神社支配下にあった模様。建久四(1193)年に馬場資幹*6が居城を築いたのが武家支配の最初。しかし、まもなく、常陸大掾に任じられ、府中に根拠地をおいた為、水戸は飽くまで一支城の地位に留まった。
 室町に入ると、漸く大掾*7の勢力は衰退し、応永二十三(1416)年江戸通房*8水戸城を奪取。以降江戸氏の拠点として発展。
 天正十八(1590)年秀吉の小田原の役を背景にした佐竹義重*9常陸統一事業により、水戸城が奪われ、佐竹氏の支配下に落ちる。この際、佐竹氏が水戸を本拠に定めた為、常陸の文化・経済的中心が府中から水戸に移った。
 慶長七(1602)年佐竹氏秋田移封後、徳川頼宣*10が入るも同十三('08)年駿河移封。徳川頼房*11が下妻から移り、以降水戸藩二十五万石*12が定着する。
 二代光圀*13・九代斉昭*14ら名君を輩出し、勤皇の風の強い藩で、幕末動乱期の勤皇党の理論的リーダーを勤めるも、早くから対幕の先頭に立っていた為、内乱や安政の大獄で有為の人材を悉く失い早々に表舞台から退場。とどめに慶喜*15の実家ということもあり、明治期には冷や飯食らいを余儀なくされる。
 明治四(1871)年四月廃藩置県で水戸県になるも、同年十一月の統廃合で茨城県と改称。現在に至る。
 近代以降は特筆すべきことなし。現在は南東北の雄として関東で田舎者の代名詞に。

水戸黄門名作選 その1 [DVD]

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福沢諭吉+学問のすヽめ+実学

見よ風に鳴る我が旗を - 脱積読宣言

福沢諭吉
天保五(1834)〜明治三十四(1901)年。啓蒙思想家。慶応義塾創立者豊前中津藩士の子として大坂の藩蔵屋敷に生まれる。父の死去で中津に戻り、1854長崎遊学。翌年大坂の適塾緒方洪庵蘭学を学ぶ。'58藩命により江戸出府、藩中屋敷蘭学塾を開くが、翌年英学に転じた。'60-'67幕府に出仕し、この間三度にわたり幕府遣外使節随行して欧米を視察、『西洋事情』('66-'70)の刊行により西洋文明の紹介者として文名があがる。'68.4塾を芝に移して慶応義塾命名明治維新以降は在野の代表的啓蒙思想家として精力的な言論活動を展開し、明六社にも参加。『学問のすヽめ』('72-'76)、『文明論之概略』('75)を通して〈独立精神〉の国民精神の涵養による国民国家形成と対外的独立の達成を唱道した。'79東京学士会院の初代会長に就任、'82には『時事新報』を創刊した。民権運動の高揚に際して〈内安外競〉〈官民調和〉を説き、また〈脱亜論〉を唱えるなど国権伸張論を前面に押し出し、日清戦争では強硬な主戦論を展開した。イギリス流の議院内閣制・政党内閣制実現への期待は一貫していた。(『岩波日本史辞典』より引用)

学問のすヽめ
 福沢諭吉の主著。1872.2-'76.11刊。全17編。'80.7一冊の合本として出版。大きな反響を呼び、各編20万部、全体で340万部ともいうベストセラーになった。〈天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと云へり〉との人間平等宣言に始まり、封建的身分制を徹底的に批判して自由独立の国民形成を説き、〈一身独立して一国独立す〉との国家ヴィジョンを提示した。従来のいわゆる〈訓詁詩文〉の虚学に代る〈人間普通日用に近き実学〉を提唱した明治啓蒙期を代表する著作。(『岩波日本史辞典』より引用)

実学
 修養や処世の上に実際に役に立つ学問。また、理論よりも実用を重んじる学問。(『大漢語林』より引用)

 実学という言葉は福沢諭吉の発明の様に書かれている本をよく見かけますが、単語自体は昔からありました。初出は朱子の『中庸章句』の「其味無窮、皆実学也」であり、日本でも江戸初期には『太閤記*16などで用いられています。もっともここで謂う実学とは、仏教や道教に犯された堕落した唐宋代の儒教をすて、注釈を無視し、原文に当たろうという朱子学陽明学のことです。


 当然諭吉の説く実学はそれとは違い、虚学としての旧来儒教に対する実用の学問=西洋合理主義を称揚するものです。『学問のすヽめ』はその教科書というもので、多彩なボキャブラリーと卓越した文章力で、実学の必要と、儒教の唾棄すべきを力説しています。
 なお諭吉の漢学嫌いは病的なものがあり、「(慶応義塾漢詩文集を刊行したことを罵倒して)方今の時節フジカルサイヤンスを勧めても尚振はざるの折柄、其塾中の社員が詩文集を版にいたしたと咄々怪事、老生は之を聞て恥死せんとす。何者の馬鹿が右様のタワケを企てたるか」云々といい大人とは思えない感情的な罵詈雑言を飛ばしています。そんなに漢学を極められず途中挫折したのがコンプレックスだったのでしょうか。

学問のすゝめ (岩波文庫)

学問のすゝめ (岩波文庫)

根拠のない自信でも とりあえず'coz you're included in my life

 しかし、福沢諭吉とはなんとも面白い人物です。流石は立志伝中の人物と言ったところでしょうか。実学を偏重し、水戸学的大義名分論を唾棄する超現実主義者かと思えば、途方もない理想論を謳い上げるロマンチストで、一貫した理論を持たず時流に応じて身を変じて恥じない厚顔さと、それを変節と感じさせない老獪さを併せ持つ処世の達人でもありと、正に良くも悪くも慶応生の鑑といった愛すべき軽薄さを感じさせてくれます。
 そんな八方破れの紙一重の天才が一般受けを狙い、計算尽くして書いた『学問のすヽめ』が面白くないわけがありません。諭吉がバカ向けにレベルを落として書いたと豪語するとおり、文は平易で豊富な喩えは片時も読者を飽きさせません。もし文語文が廃止されてなければ、『女子高生GIRL'S HIGH』のバカ軍団でも楽に楽しんで読めると断言できます。国語教師の皆さん『源氏物語』なんざに無駄な時間を割くぐらいなら、文語文の時間を復活して、諭吉や西周を読ませませんか?昨今の腐れ文化人様の千倍面白くて為になる名文ですよ。

今日の一行知識

成年向けジャンルでは「女子高生」の語は使用禁止。
仕方ないので、音通で「女子校生」の語で代用しているようです。規制の理念はよく分かりますが、何もフィクションにまで網かけなくとも。

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*1:AT-Xtvkチバテレビテレビ埼玉サンテレビ名古屋テレビ放送BIGLOBEストリームGyaO

*2:出身地は茨城郡大洗町

*3:元は千波湖那珂川にはさまれた台地を水戸といっていた。

*4:因みに「江戸」は入り江の出入口という意味

*5:吉田神社文書』所収。「十一月寅日御神事御祭高禰宜付水戸宮」

*6:平国香の子孫

*7:馬場氏から改名。常陸大掾世襲したことによる

*8:佐竹氏配下の土豪。那珂通辰の子孫

*9:常陸戦国大名。父義昭、母伊達晴宗女。「鬼義重」「坂東太郎」などの異名を持つ北関東の猛将。

*10:紀州藩初代藩主。権大納言。父家康、母養珠院(お万の方)。

*11:水戸藩初代藩主。権中納言。父家康、母養珠院。

*12:元和八('23)年二十八万石に加増。

*13:水戸黄門権大納言。父頼房、母谷氏

*14:中納言。父治紀。

*15:第十五代将軍。内大臣、公爵。父水戸斉昭、母有栖川宮織仁親王女。

*16:巻二十「八物語之起」「恠力乱神を去て、致智格物之学に入にし書は、古今まれなり。(中略)こまもろこしのかた史なんどは、修身斉家之実学而已。」超訳「(わが国には)怪力乱神を語らず、致智格物の高みに達する本は今も昔も殆ど無い。(中略)(それに比べて)朝鮮や中国の史書は修身斉家の法を説く実学の書ばかりである。」