脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『英傑の日本史 新撰組・幕末編』

http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2006/04/01/01.html
ついに大河がとち狂った。いや前からか?

 風邪も治ったし、負債を完済しようのコーナー。上手くいったら拍手御喝采。ではさっさと、以下ネタバレ注意

満月の夜に結ばれた

 嫌いな人にはとことん嫌われる井沢元彦氏が数年前の新選組ブームに便乗して書いた本書。便乗本にしてはましな方という程度な出来栄えです。幕末期の偉人六十七人*1をそれぞれ数ページで解説という体裁なので、歴史小説の簡易人名検索用と割り切れば便利でしょう。武田観柳斎とか玉松操とかのマイナー所もフォローしてくれてるのがありがたいです。その分メジャー所の解説はメタメタですが。

 さて井沢氏ですが、高校時代に『逆説の日本史』に思いっ切り嵌った身としては、最近の零落振りは見るに忍びないです。得意の古代のフィールドを捨て、全時代に手を出すという愚挙に出たのが如実に祟っています。氏の歴史をエンターテイメントとして語る才能は端倪すべからざるものがありますが、古代とは違い、中世以降は数多くの文献が残り、研究は精密を極め、空想の翼を自由に広げる余地はほとんどありません。フィクションとして、嘘を持ち込むならともかく、ノンフィクションの体裁を保ちつつ、井沢史観を構築するのは無謀でしょう。あれだけ輝いて見えた『逆説の日本史』も中世に入ると陰りを見せ始め、戦国期に入り、現在の連載中の近世編などは最早見る影もありません。古代が最早ネタ切れしたというのは薄々分かりますが、これ以上醜態を晒さないで欲しいものです。

何度でも踊る 永遠に踊る

 さんざけなしましたが、井沢史観なんて大それた野心を抱かなければ、歴史を分かりやすく語る才能は健在で、この本でもそれが遺憾なく発揮されています。マイナーな人ほど記事が面白い。というのもその表れでしょう。詳しくない人にとっての入門としては十分な深さ、しかしちょっと詳しくなれば馬脚が現れるほどの浅さ。それが井沢氏の本質でしょう。
 いつの日か日本人が歴史の本当の面白さに気付き、彼を卒業できる日は来るのでしょうか。その日が来るまで、物知り顔の半可通共の罵倒に負けず、書き続けて下さい。何やかや言っても、僕もまだ卒業には遠そうですし。

今日の一行知識

近藤勇が処刑されたのは板垣退助の私怨から*2
サヨクな皆さんが大好きな板垣も元は土佐陸軍の首魁でバキバキの武闘派。征韓論を主導し失脚した為、政府憎しの一念から民権派の仮面をかぶったに過ぎないのです。

JAM

JAM

YouTube

*1:新選組だけじゃあ足りなかったんで同時代人で穴埋めしたのが見え見え

*2:当時龍馬暗殺は新選組の仕業と広く信じられており、龍馬と懇意だった板垣が官軍で残敵掃討の任を受けていたのが、近藤の身の不幸であった