http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2006/04/01/01.html
ついに大河がとち狂った。いや前からか?
風邪も治ったし、負債を完済しようのコーナー。上手くいったら拍手御喝采。ではさっさと、以下ネタバレ注意
- 作者: 井沢元彦
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/11
- メディア: 単行本
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満月の夜に結ばれた
嫌いな人にはとことん嫌われる井沢元彦氏が数年前の新選組ブームに便乗して書いた本書。便乗本にしてはましな方という程度な出来栄えです。幕末期の偉人六十七人*1をそれぞれ数ページで解説という体裁なので、歴史小説の簡易人名検索用と割り切れば便利でしょう。武田観柳斎とか玉松操とかのマイナー所もフォローしてくれてるのがありがたいです。その分メジャー所の解説はメタメタですが。
さて井沢氏ですが、高校時代に『逆説の日本史』に思いっ切り嵌った身としては、最近の零落振りは見るに忍びないです。得意の古代のフィールドを捨て、全時代に手を出すという愚挙に出たのが如実に祟っています。氏の歴史をエンターテイメントとして語る才能は端倪すべからざるものがありますが、古代とは違い、中世以降は数多くの文献が残り、研究は精密を極め、空想の翼を自由に広げる余地はほとんどありません。フィクションとして、嘘を持ち込むならともかく、ノンフィクションの体裁を保ちつつ、井沢史観を構築するのは無謀でしょう。あれだけ輝いて見えた『逆説の日本史』も中世に入ると陰りを見せ始め、戦国期に入り、現在の連載中の近世編などは最早見る影もありません。古代が最早ネタ切れしたというのは薄々分かりますが、これ以上醜態を晒さないで欲しいものです。
何度でも踊る 永遠に踊る
さんざけなしましたが、井沢史観なんて大それた野心を抱かなければ、歴史を分かりやすく語る才能は健在で、この本でもそれが遺憾なく発揮されています。マイナーな人ほど記事が面白い。というのもその表れでしょう。詳しくない人にとっての入門としては十分な深さ、しかしちょっと詳しくなれば馬脚が現れるほどの浅さ。それが井沢氏の本質でしょう。
いつの日か日本人が歴史の本当の面白さに気付き、彼を卒業できる日は来るのでしょうか。その日が来るまで、物知り顔の半可通共の罵倒に負けず、書き続けて下さい。何やかや言っても、僕もまだ卒業には遠そうですし。