『封印作品の謎２』

黒歴史とは - はてなキーワード
　人間四半世紀も恥を恥で上塗りして生きていると、誰しも思い出したくもない思い出・経歴の一つや二つはあるでしょう。
http://hime.maxs.jp/photo/027.jpg
　特に功成り名を遂げた立志伝中の人物ともなれば、若気の至りや糊口をしのぐ為のバイトで、現在の立場を危うくするようなことがあってはならないと考えるのも分かります。
http://www.gx-japan.com/suruga/database/122001451001.html
　とはいえ、一度産んだからには如何に望まれない子供であったとしても、最後まで責任をとるのが筋というものではないでしょうか。
YouTube
　一愛書狂として、いかなる理由があろうとも、焚書だけは絶対に許さない。そう誓いつつ筆を進めます。以下ネタバレ注意

封印作品の謎 2

作者: 安藤健二
出版社/メーカー: 太田出版
発売日: 2006/02/16
メディア: 単行本
購入: 2人クリック: 44回
この商品を含むブログ (72件) を見る

薔薇の手錠はずして

　文章的には見るべきところもなく、ノンフィクション作家としても、事実の羅列に終わっている感があり、読み物としては非常に中途半端な作品となっています。しかし、後難を恐れ誰も深入りしなかった問題に踏み込んだ勇気は賞賛されるべきでしょう。
　２というからには１もあるのですが、どうやら資金欠乏の折に売っ払ってしまったようで手元にありません。結構面白かった記憶はあるのですが、手元に置いとくほどの愛着は湧かなかったようです。この本はそれの二匹目の泥鰌を狙った完全同コンセプトの本で、ここまで来るとむしろ男らしさすら感じるつくりになっているのですが、流石にネタ切れの感は否めず、ウルトラセブン幻の十二話や怪奇大作戦『狂鬼人間』などのビッグタイトルを手がけた前作に比べると激しくスケールダウンしており、インパクトに欠けます。とはいえ、四分の三が著作権がらみのトラブルであり、抗議を受けてのお蔵入りが基本の前作とは違ったアプローチになっており、製作者サイドにとっては今作の方が、鬱陶しいのではないでしょうか。

『キャンディ　キャンディ』

　原作者と漫画家との間でトラブって、お蔵入り。
　近年でもマガジン系で多用されている原作者制ですが、非常に問題を起こしやすい制度のようで、近年でも『ＭＡＳＴＥＲキートン』が同種のトラブルで絶版状態となっています。日本式責任の所在の曖昧さと著作権制度が致命的に噛み合わない典型例じゃないでしょうか。あまり思い入れもないので次へ。

『ジャングル黒べえ』

　オバケのＱ太郎が悪名高き「黒人差別をなくす会」に糾弾された煽りを受け、自主規制。
　今回唯一の非著作権系トラブル。９０年前後に暴虐を振るい、日本の漫画アニメから黒人を事実上追放した「黒人差別をなくす会」にも腹が立ちますが、それよりも、作品を守るどころか率先して抹殺する出版社側の態度に怒りを覚えます。「文化の担い手としての自覚を」なんて大仰なことは言いませんが、もっと自身の作品に愛情を持ってあげて欲しいものです。

『オバケのＱ太郎』

　藤子不二雄が分裂する際に、合作の本作の扱いに関して、両陣営の関係者間でトラブル。
　現在公式に流通できる『オバケのＱ太郎』はトリビアの泉でも取り上げられた『劇画　オバケのＱ太郎』だけというのは、有名な話ですが、その裏にはこのような事情があったようです。Ａ氏もＦ氏も本人同士は死ぬまで仲のいいままだったようですが、男の友情では家族及び利益権者を納得させられなかったようです。

『サンダーマスク』

　創通エージェンシーが放映権を製作会社から恐喝まがいのやり方で強奪したが、それが祟って、権利関係が現在の法慣習に堪えれるほど整備されてない。
　自業自得の極み。弱小プロダクション作成のアニメ特撮では、何処でも大なり小なりこのような現状だったようで、現在復刻されるマイナーヒーローは全て大手製作のものだけという有様となっています。大企業の横暴というのは現在でも変っておらず、今後もこのような作品が量産されてしまうことが懸念されます。

罪でもいい好きと言って

　著作権問題にしても、抗議への対応にしても、作者側の保身やエゴが作品の封印を招いているのがよく分かります。現状の順調な経営を守るのが大事だという考えは分かりますが、自分の子供をその為に勘当してしまうのは許される事ではありません。理想論ではありますが、文化を経済や法律に隷属させようなどという傲慢がまかり通る現状は看過していいものではないでしょう。どんなに手に負えなくなった子供でも最後まで愛情を注ぎ続けるのが親の義務なのではないでしょうか。と、不肖の息子がのたまわってみます。