脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『文明崩壊』

 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060308ia26.htm 
 中韓に言われるまでもなく、本来守るべき国民に塗炭の苦しみを味あわせたA級戦犯は神格化されていい存在ではありません。愚かな両面作戦を展開し、八紘一宇の理想を破綻させ、陛下の御稜威を著しく損ねたその罪は、「アジア的優しさ」に満ちた進歩的文化人ではない我ら一般人ですら到底看過できるものではありません。陛下がA級戦犯合祀以来靖国参拝を行っていないのも、東亜新秩序の建設の大望を頓挫させた無能な廷臣を未だお赦しになられていない証拠でしょう。パクスアメリカーナの幻想に踊らされ、孤立主義を強めるネオコンの妄言に惑わされてはなりません。今こそ先の戦争の過ちに学び、君側の奸を除き、中韓と連携し、大東亜共栄圏を復活させるべき時なのです。

 てなわけで、今回は硬派に行きます。西太平洋に覇を唱えた大日本帝国、当時の国民で崩壊を予見できた者は少ないでしょうし、もし声を上げたとしても無視されていたでしょう。しかし、現在振り返れば、数々の無理や矛盾が目に付き、崩壊は必然であったことが分かります。現在繁栄を謳歌するこの世界も後の世からみれば、間近に迫った崩壊に気付かず、「最後の木」を切り倒してしまった救いがたい愚か者になるのでしょうか。正直自分は押し付けがましい環境保護運動には興味はありません。しかし、過去と現在の事例をみれば、「地球がもたない日」が来るのはそう遠くないことが知れます。可愛い海豚を守るためではなく、自分の生きる五十年後の世界を守るために、真剣に環境保護を考えるべき時が来ているのかもしれません。以下ネタバレ注意

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)

Apocalypse

 本文に入る前に本の説明から、『銃・病原菌・鉄』で一躍有名になったジャレド=ダイアモンドの新刊。前半で過去の環境破壊が原因で崩壊した社会の実例を挙げ、後半で崩壊を回避した社会を考察し、それらの過程と結論を現代に援用し、今やらねばならないことは何かを説きます。日系人を妻に持つだけあって、アジア特に日本への理解と愛情は深く、外人にありがちなキリスト教道徳絶対主義による偏見や説教臭さも少なく、私のような欧米嫌いでもストレスなく読めました。海外ドキュメンタリー特有の大仰な物言いと、翻訳文の固さが気にならなければ、知的エンターテイメントとしても十分楽しめるでしょう。『銃・病原菌・鉄』と同じく、ここ十数年間はこの本を読まずしてその分野を語ることなかれといった必読の書になるのではないでしょうか。

 上巻でイースター島・マヤ・グリーンランドなどが崩壊の実例として挙げられますが、400P強も同じ主題で書かれると、幾ら細部では全く異なる事例の羅列といえど、同工異曲で飽きてきます。もう少し絞ってもよかったのではとも思いますが、ブツ切れで読むにはこれくらいが丁度いいのかも知れません。あとこれは作者に文句言っても始まらないのですが、固有名詞が非常に耳慣れない言語なので、慣れるまでは判別に非常に苦労します。マンガレヴ島だのティコピア島だの言われても、すぐにはイメージが湧きません。つくづく世界史で非ヨーロッパ系の文明が無視されていたことのありがたさを感じます。それで、上巻の内容を要約すると、「森林資源の回復速度を上回る勢いで乱伐を繰り返した閉鎖系社会は、資源の枯渇による生活の不安定化に伴い、社会不満が増大し、反乱により国力が削られ、最終的には自滅か異民族の侵略という形で崩壊する」というものです。キーポイントは回復速度を上回る開発と閉鎖系社会です。テストに出るので覚えておきましょう。

 次下巻。環境破壊の克服に成功した社会と、現代社会の事例。そして今後への提言。バラエティには富んでいますが、一貫性に乏しく、散漫な印象を受けます。特に今後への提言は、作者の主張が前面に出すぎていて多少辟易します。トップダウン的な政策とそれを支持するボトムアップ的な一般庶民の意識改革が必要と抽象的な結論で、革命的な具体案があるわけでなし、余計な現状分析や提言は省いて上巻だけで纏めてしまった方が、完成度は高かったのではないでしょうか。所詮は過去の話と真剣に受け取られない可能性を考慮したのでしょうが、やはり蛇足な気がしてなりません。過去の事例だけでも、切迫した恐怖を喚起するには十分な力はあるのですから。なお完全な余談ですが、我らが日本は「徳川時代に森林乱伐をトップダウン式の政策で食い止め、現代に於いても、先進国随一の森林被覆率74%を誇り、世界に先駆けイタリアと並んで人口政策を成功させた理想的な国」として描写されます。少子化問題が切実な課題な現実を鑑みるに皮肉としか思えませんが、見方を変えれば、長所と短所は紙一重な好例でしょう。

Judgement Day

 中国インドといった超大国が先進国への階梯を順調に上りつつある現在、パラダイムシフトな発明が為されない限り、私たちの生きている間に、人類がしょうがないさと自嘲しつつ「最後の木」を切り倒す日が来るのは避けられそうにありません。「宇宙船地球号」なんて偽善的な言葉は使いたくありませんが、宇宙にコロンブスもペリーもいなさそうな現実を直視すれば、「人類に逃げ場なし」なのは間違いないでしょう。過去の閉鎖系社会と同じく資源を食いつぶすのが先か、生態系の再生速度以下に環境侵害レベルを抑制できるのか、後世の人にド=ゴールやアイゼンハウアーの如く救国の英雄と讃えられるか、近衛や東条の如くA級戦犯と罵られるのか、それは今この瞬間にかかっているのかもしれません。
あ、ゴミの時間だ。たまには分別してみようかな。

今日の一行知識

地球温暖化の主要因の一つはウシのゲップ
地球と焼肉究極の選択が今ここに。