脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

続・汚名挽回

 http://www.aurora.dti.ne.jp/~zumi/vtatsu/
 使用者の感想によると、呉の方言に近い変換がなされるようなので、中原元や達川光男の属する市内の方言とは多少違いますが、楽しむだけなら十分な性能だと思われます。このプログラムの作者からは広島弁への愛が感じられます。
 てなわけで、本ひいては文章・言語全体への愛がテーマな当ブログです。管理人が「正しい日本語」に噛み付くのは、ひとえにそれから愛が感じられないからであり、国語の教養を人を馬鹿にし、あげつらう事にしか使わない連中に鼻持ちならないものを感じるからであります。飽くまで学問は現実の後追いに過ぎないというのが、私のスタンスであり、現実を学問に服従させようなどというのは、学者の傲慢であるとしか思えません。彼等は夏目漱石徳川夢声の卓抜した造語センスを否定する気なのでしょうか。 ヽ(`Д´)ノな女子高生や夜露死苦哀愁なヤンキーが、後世日本語の新たなる地平を切り拓いた偉大な開拓者と讃えられる可能性を考えたりはしないのでしょうか。○×で全てを判断しようという態度は理系ならともかく文系の人間に許されるものではありません。
 というのが建前で、国語の教養とは無縁なうちの母が昔から汚名挽回を頻りに使うので、子供にまでそれが移っちゃった。今更矯正するのも無理ポいし、だったら理屈をこねて正当化しちゃえ。ってのが偽らざる本音なんですがね。とまれ一度始めた以上は母と我が一族の名誉の為、矢折れ刀尽きるまで*1戦い抜く所存であります。

汚名挽回への追記

 枕を書くのに夢中になってたら、前置きを忘れてました。iya氏に大分前に書いた「汚名挽回について」のコメントを頂いたのが発端で、有意義な議論に発展しているのですが、私の力量不足でコメントで収めるには困難な事態となりつつありますので、独立の一項を作ってみました。前回書きそびれたことも随分ありますしね。
 細かい経緯は当該項目エマの脱走 - 脱積読宣言を参照してもらいたいのですが、さんざ議論がすれ違っておりまして、その原因を考察すると、どうも「挽回」の意味の取り方の違いがありそうなので、今回はそれを深く考察してみたいと思います。
 私の意見だと、「挽回とは「正常な本来あるべき姿に戻す」という意味であり、「汚名挽回」は汚名を蒙るという異常な状態を以前のまっさらな状態に戻すという意味になり、名誉挽回や汚名返上とほぼ同義になる」というものです。ちなみにこの考えだと、「名誉挽回」は「現在損なわれた状態にある名誉を通常あるべき状態へと戻す」という解釈になります。「挽回」=「取り戻す」としたときより回りくどい解釈になりますが、個人的に「挽回」に「取り戻す」の意味が加えられたのは、名誉挽回の用法が敷衍された為だと考えるので、こちらの方が本来の解釈だと考えます。それというのも、挽回を単独で使った場合、ほぼ間違いなく「体勢を立て直す」という意味で使われているからであります。また、頽勢を挽回するなど、「取り戻す」の意味では解釈に致命的な齟齬をきたす用法も多く見受けられるところからも、「挽回」=「取り戻す」の用法は極限定的なものと推定できます。これによって、反対派がよく嘲笑混じりに使う「汚名を取り戻してどうする」の突っ込みは、的外れなものになります。
 次いでよくある意見として、慣用句としては名誉挽回もしくは汚名返上が正しいのであり、継子の汚名挽回は「日本語」として認められていない、というものがあります。これについては、語源を自身で確定してない段階でものをいうのは非常に危険なのですが、古典漢籍に典拠を持つ故事成語というわけではなさそうなので、名誉挽回と汚名挽回との間に、越えがたい溝を設定する必要はないというのが私の意見です。さらに言えば、現在も使われている言語を辞書的意味・用法で限定してしまうのは、不自然かつ不健康な行為であり、言語の「進化」をスポイルしかねない危険な行動であると、私は考えます。

誤用許容範囲について

 反論というか、前回あまりに長すぎる上に面白くもないので省いた、「私が汚名挽回を正しいと信じる訳」は以上です。これだけで終わってはなんなので、最後に各種誤用についての私の態度を付記しておきます。基本的な態度としては、「誤用」に至る過程が合理的か否かで判断しています。

  • 役不足・・・認めたいけど、現在の大弾圧の嵐のもとでは少し厳しいかな。「汚名挽回」ほど世の流れに逆らえるほどの材料も理由も持ってませんし、長い物に巻かれる事にします。
  • ら抜き言葉・・・口語は○。書き言葉では、使わない方が吉。西洋語の影響で、可能と尊敬・受身の意味の乖離が進んでいる現状では、無理に同じ形にとどめて置く方が不自然だと考えます。とはいえ、文字に起こした際、どうしても間抜けな印象がしてしまうのは事実。使い分けましょう。
  • 肯定的意味での全然・・・全然OKでしょう。係り結びなどのややこしい文法は省略されてゆくのが、言語の進化の一般的傾向。無理に抗う必要もないんじゃないでしょうか。
  • (感動で)鳥膚が立つ・・・詩的表現の一種。問題なし。とはいえ、濫用されて非常に陳腐な表現に成り下がりつつあるので、使用には細心の注意を。
  • 的を得る・・・的は得るものじゃなくて射るものです。といいたいところですが、某所で的を外すの対義語として考えれば、的を得るでも問題なしとの考察を発見したので、方針転換。許容範囲。何より射るより得るの方が言いやすいですしね。
  • よろしかったでしょうか・・・婉曲表現の極地。日本語の特質の一つと言ってしまえばお終いなのでしょうが、ここまで来ると何がなんだか。恐竜的進化の行き着く先は緩慢なる自滅なのは世の常。言葉狩りなんて野暮な真似はせずに生暖かく見守りましょう。
  • 絵文字・・・漫画に代表される日本文化の特質の一つ、絵と文字の同質性を表す典型例、だそうですよ。見てて頭がくらくらして来るのは確かですが、今後の「進化」の方向性としては間違ってないんじゃないんでしょうか。
  • ふいんき(←何故か変換できない)・・・ネタが古いのは仕様です。
  • オードソックス・・・間違えて何が悪い

今日の一行知識

名古屋で自転車を表す「けったマシーン」の語源は「ゲットマシン*2
名古屋の自転車は三台揃えば、あの超絶合体変形をしてくれるのでしょうか。是非見てみたいです。
    

小学生のための「正しい日本語」トレーニング〈1〉初級編

小学生のための「正しい日本語」トレーニング〈1〉初級編

*1:管理人にはこの類の間違いが頻出します。見つけ次第御一報下さいまし

*2:ゲッターロボの分離形態の戦闘機のこと