浅田次郎新刊発売記念。感想予定地。今日は勝ちますように。南無南無。
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残酷な天使のテーゼ - 脱積読宣言
勝利を信じて願って祈願アゲ
http://nurusoku.blog60.fc2.com/blog-entry-697.html
流石中国。美意識も我々の遥か先を行っているようです。
勝ったどー。
- 作者: 浅田次郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/09/25
- メディア: 単行本
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死して終わらぬ 夢を焦がれども
時は日露戦争直後の1907年。ここは満州、中華帝国の一部ながらも長城に隔てられた辺境にして大清帝国の故地。ロシア・日本・中国の思惑が錯綜するこの魔都を実質的に支配するのは馬賊。権威にへつらわず腕力一つで己が義を押しとおすこの集団の長の一人に本作の主人公はいる。その名は張作霖。後に満州の王として日本や中華民国と渡り合った傑物の青年期を描く痛快武侠浪漫。日本人では決して為し得ぬ壮大なスケールの大陸人の活躍をしかと目に焼き付けよ。
浅田次郎期待の新作は『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』に続く、清国末期を描く大陸ロマン三部作完結編?今回のメインテーマは満州の覇王張作霖。相変わらず書店泣かせの新規読者の獲得を放棄したテーマ選定ですが、その分古参のファンにはたまらない一冊となっています。西太后・光緒帝・袁世凱らの実在組は勿論、李春雲*1や岡圭之介・トーマス=バートン*2らも登場し、前二作を読み返したくなること請け合いです。
内容の方は、浅田氏お得意のとびっきりのピカレスク・ロマンなのですが、漢民族の狡猾さとモンゴル遊牧民の残虐さを併せ持つ満州族の倫理・道徳を規範にしているので、感情移入が非常にしづらいです。敵の支配下の村を女子供や戦意喪失した味方諸共皆殺しとかされると、カッコいいけど正直引きます。『壬生義士伝』や今度映画の公開される『椿山課長の七日間』に代表される「人情・涙の浅田」を期待する人は見ないほうが吉です。あと、目に一丁字も無いはずの馬賊連中の台詞が詩情に満ちて教養溢れてるのはいかがなものでしょうか。作者より頭のいい登場人物は描写できない、というのは定説ですが、文章のレベルを下げるのも同じ位難しいんでしょうね。
いちゃもん付けに近い難癖はこれくらいにして、惚気に入ります。台詞の一つ一つに無駄が無く一言発する度にそのキャラが深まっていく様は、正に小説技法の完成形をみるが如きです。頁数が限られイラストの助けも無い小説誌での連載において、僅か数行の描写で登場人物のキャラを立たせるテクは最早神業。イラストにおんぶにっだっこなラノベ作家連も見習って欲しいものです。尤も比べる方が野暮でしょうが。
独白・会話シーンではそれぞれの内面の葛藤をを余すところ無く活写し、風景や人物は絵では決して表せない各人にとって最良の姿を想像させるなど、小説媒体の利点を最大限に活用している上、活劇シーンも疾走感溢れる描写で小説のハンデを全く感じさせません。まったく、小説家を目指す人は決して読んではならない作家の一人です。
望みは汚れても 心の錦を信じていてください
相変わらず好きな作家の方が感想書きにくいのは、下手の証拠でしょう想いが溢れて文章になってくれません。ここは大人しく来月*3発売の二巻を待ちましょう。春雷と春雲は無事再会できるのか、清の滅亡の不可避なるを悟る西太后・光緒帝の決断は。そして、張作霖は悪逆非道の魔の大日本帝国の干渉を振り払い、中華帝国の再建を為し遂げることが出来るのか!?『中原の虹 第二巻』刮目して待て!
今日の一行知識
清の王族の姓「愛新覚羅」を日本語訳すれば「金の眷属」
これを知っていれば、宋を滅ぼした「金」と「清」が同族の女真族ってのを覚えやすいですね。受験生の皆さんご活用下さい。
- アーティスト: ALI PROJECT,宝野アリカ,片倉三起也
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2006/10/25
- メディア: CD
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