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忙しい毎日にヒトの心を失ってませんか?
経過報告。PCの不具合は、修理カウンターの上に置いた途端に治るという結果を迎えました。我が下宿がグレムリンの集会場になってるのかと不安でしたが、持ち帰っても正常に動いておりますので、御主人様を舐めくさってくれてただけのようです。このじゃじゃ馬*1もちぃとか30だとかの名前をつければ少しは従順になって下さるのでしょうか?何かいい意見があったら紹介下さい。
てなわけで、以下ネタバレ注意
- 作者: 山本弘,李夏紀
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/05/31
- メディア: 単行本
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甦れA・Iの記憶!
人類が万物の霊長の座を失って早幾百年。機械の統べる地球の上で少年はある美しいアンドロイドと出会った。彼女の語る切なくも美しい7つのアイの物語。AIが語る、愛のかたちと、Iの意味。そしてiの秘密。物語は問いかける、あなたのアイはなんですか?
装丁・タイトル・紹介文すべてが、地雷臭さを漂わせる本書ですが、案に相違して、非常に良質の短編集でした。ホントこの作者は、現実とは違う社会制度とか、相互理解不可能な異質な存在を構築するのが非常に上手です。人間臭くないのに何処か暖かいアンドロイドの描写なぞ、小説家への志を挫折させるに十分な迫力があります。ファンタジーSFを書かせれば、当代随一と言い切ってもかまわないのではないでしょうか。
但し、相も変わらず、理想思想倫理歴史感及び文系的思考展開能力は永遠の十五歳のままなので、読んでて気恥ずかしくなる青臭い演説とべた甘の展開は健在です。覚悟して読みましょう。
宇宙をぼくの手の上に
メーリングリストを利用して、シェアードワールドノベルを執筆するサークル。そこに在籍する少年が殺人を犯し逃走した。自暴自棄の少年と現実を繋ぐのは、最早そのシェアードワールドしかないそのサークルの主催者の主人公は彼を救えるのか。
展開は御都合主義気味で、落ちもありきたりと言えばありきたり、それでも十分以上に読ませるのだからたいしたものです。小説家にとって、独創性なぞ、衆目を引き付ける為だけの、二義的な能力なのだとさいかくにんさせられました。
ときめきの仮想空間
ネットの進化は、ウェブ上に実際に体感できる仮想空間を生み出した。そこで出会った一番の少年少女。マスカレードの結末は、悲劇か喜劇か?それとも・・・
感想同上。ただ仮想空間〈さくらんぼ通り〉の描写は余人の追随をゆるさぬ出来栄え。是非とも長生きしたくなります。
ミラーガール
もしもしー? あたしシャリス。あなたはだーれ。
感想同上。流石にそろそろ怒らえそうなので、詳述。何か派手な事件が起こるわけでも、卓越した文章に頭を伏せざるを得ない。とかではないですが、ゆったり流れる物語の空気と温度が非常に暖かい佳作です。
ブラックホールダイバー
正義が正義である世界
両者とも読んでる最中はストレスを感じず読み進められますし、それなりの盛り上がりもあるのですが、感想を言語化するには少しインパクトが弱いです。無理して書いても、上記三つの感想の焼き直しにしかなりませんし。なのでしょーりゃーく
詩音が来た日
遂に実験段階にこぎつけた女性型介護用アンドロイドマルチ詩音。教育係を仰せつかった神原絵梨花の奮戦記。ヒトとアンドロイドの決定的なディスコミュニケーションの果て、詩音がヒトに下した診断は。
短編も悪くはないですが、やはり山本弘の本領は中長編にあります。理系作家の本領発揮の無駄のないプロットに、ゆったりとした文章。名作といって過言ではないでしょう。アンドロイドとヒト、研究員と現場、男と女、健常人とボケ老人。それぞれの間に横たわる決定的な意思疎通の齟齬の描写は秀逸。クライマックス間際に詩音の下した「ヒトは一人の例外もなく認知 症である」との結論も衝撃的かつ説得力に溢れており、これぞSFの鑑と言いたくなります。
アイの物語
緻密な設定を解題する能力も気力もないのであらすじ省略。一言で言うと、AIの独立宣言に至る道程と、人とのIの認識の相違と愛の形(3+10i)。をテーマに描いたお話。
アンドロイド同士のバトルの描写は必見。魅せる為の演出と、人知れず交わされる理解不能な本音のやり取りとの同時進行は膚の粟立つような感動を保証できます。小説と言う媒体を最大限に活用した戦闘描写は、実写アニメを遥かに凌駕する小説の無限の底力を確信させるに十二分な説得力を持ちます。小説家志望の人以外は是非読むべきです。
しかしこの作品の真骨頂はオマケのバトルシーンにあるのではありません。人とは完全に異質なAIの思考回路。私も、小賢しい解説をつけて、自身の無能を暴露するほどの露出狂ではありません。是非自身の目で御堪能下さい。読後の感動は保証します。
ただ今 修行中!!
誉めてばかりで背中が痒くなってきたので、最後に罵詈雑言タイム。
- ネーミングセンス。あなたは何処のDQNですか。もう少し地に足のついた名前をつけてあげて下さい。
- 過度の感情移入。ぶっちゃけキモい。中二病真っ盛り?
- 類型的なヒロイン&悪役。氏のどの作品とでも互換性のある優れた仕様です。
- 愛は地球を救って、努力さえすればどんな相手とでも理解しあえる。あまーい!どうやったらこのテーマからこの結論が捻り出されるのでしょうか。我々凡人の理解の範疇を超えすぎです。
- オレ様サイコー。いい大人なんですから、謙譲の精神くらい身につけて下さい。作品にまでにじみ出てますよ。
- 社会認識の稚拙さ。理系の悪い癖?簡単に善悪二元論に持ち込みすぎ。
とは言え、読む価値の有るというか、読まねば損と断言できるレベルの作品であることは疑うべくもありません。世評*2に惑わされず、好き嫌いせず読んでみましょう。同じ人間とはいえ所詮他人同士。絶対に分かりあうことなどできはしないし、する必要もないと実感させてくれます。ヒトが人たるにはATフィールドは必要不可欠なのです。
今日の一行知識
人間の人生の記憶のデータ量は約10MB。イラストをつけても1GB。
メモリは大切な資源です。要らない雑学で浪費しないようにしましょう。
A・Iが止まらない! (1) (講談社コミックスデラックス (1253))
- 作者: 赤松健
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/11
- メディア: コミック
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