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ウマ違い。
多忙と体調不良のため、更新が遅れました。いつも楽しみにして下さってる奇特な皆様方には申し訳ございません。
さて今回はディープインパクトの四冠を記念して、浅田次郎の競馬エッセイを紹介します。では例によって例の如く以下ネタバレ注意
- 作者: 浅田次郎,久保吉輝
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/12/16
- メディア: 文庫
- 購入: 1人
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本命穴馬掻き分けて
嘘です。単に偶然先週読み終わっただけです。競馬は『じゃじゃ馬グルーミン☆UP!』と『風のシルフィード』ぐらいしか知りません。競馬中継とか見たり、浅田次郎や井崎脩五郎のエッセイ読むとやりたくはなるんですけど、はまると怖いので手が出せずにいます。性格からしてやればのめりこむのが目に見えてるんでね。
さて、要らん能書きはこれくらいにして、本題。最早当サイト常連の浅田次郎のエッセイ。相変わらずの確かな文章力と、商業主義の洗礼を受けた軽妙な語り口で、競馬ファンならずとも引き込まれる佳作です。時期的に、週刊大衆が良く似合う極道作家から直木賞受賞を経て、押しも押されぬ大家へと登りつめる道程をトレースしているので、一冊で作風の変化と確かな進化が感じられます。読み捨てるのには最適のボリュームと内容なので、通勤通学のつれづれの慰みにどうぞ。
しかし、この浅田次郎という人は、稼いだことも浪費したことも隠さず自慢する人で、このエッセイでも、いくら当てた、いくらすった、どこそこへ大名旅行したと、出入りの激しい景気のいい話が頻出しますが、それがちっとも嫌味に聞こえないのは、生粋の江戸っ子の粋の為せる業でしょう。地方都市生まれの御のぼりの身としては素直に羨ましいです。
作家としてのグレードが上がるにつれて、取材旅行の行き先も国内から海外にグレードアップしますが、ヨーロッパの競馬場の風雅な雰囲気に憧れつつも、生まれ育った鉄火場の狂騒も忘れることができず、深刻な相克に悩まされる姿は微笑ましくも哀れです。JRAの競馬のスポーツ化の推進の難航も、彼のような古参のファンの抵抗によるものでしょう。競馬が健全で安全な遊戯なわけなんかありません。不道徳だからこその魅力と存在意義を早く思い出して欲しいものです。そんな有識者の顔色窺って、女子供に色目を使ってるから、パチンコの台頭を許してしまうのです。政府は早く博打と売春の完全合法化を推進すべきです。グレーゾーンの存在を許し、魑魅魍魎の跋扈を容認することの危険性を一刻も早く糾弾すべきではないでしょうか。チワワの仮面をかぶったアイフルはどこの業界にもいるはずです。
追いつけ追いこせひっこ抜け
最後に、浅田氏も首を傾げる日欧の競馬文化の本質的な違いについて愚考を巡らして、筆を置こうと思います。その違いは、ギャンブルが貴族の社交場だったヨーロッパと、無頼漢の亡国の遊戯だったアジアとで支持層が異なっているからでしょう。億万長者のうたかたの夢に身を任せ憂き世を忘れる為の庶民の娯楽に、世の快楽を味わいつくした退屈なお貴族様の道楽の方法論を持ち込もうというのが愚かなのです。成金が金に飽かせて貴族のおべべを購っても、上下からの嘲笑のいい的になるだけでしょう。どんな綺麗なドームやスタジアムより、心置きなくバカヤローと叫べる場末の競馬場や市民球場のような悪所*1こそが、今の日本には必要なのではないでしょうか。