毎度コメントありがとうございます。長く成りそうだったので本文にて返答させてもらいます。まず結論から先にいうと、個人的に、天皇制は日本人の統治に最も適した政体であり、政権担当者がGHQであろうと自民党であろうと、変更の必要はないと考えます。確かに前回の一行知識をひっくり返すと、noharraさんの言うとおり、憲法九条と同じく天皇制もアメリカの意向であり、護持するのは同じように可笑しい、という議論も成り立つと思います。とは言え、世界に類のない畸形の条文と、少なくとも1500年の実績を持つ伝統とを同一視してしまうのはどうかな、というのが本音です。
とこれで終わってもいいのですが、前回のエントリーで書き残したこともありますし、当時の状況について少し書いてみたいと思います。カープも負けて、通常更新の必要もないですしね。
各人の思惑
『敗北を抱きしめて』から読み取れる各勢力の思惑。
- 昭和天皇・・・おれのせーじゃなーいもーん。リベラルな*1昭和天皇の軍部嫌いは有名で、特に東条を始めとする統制派とは反りが合わなかった模様。君側の奸も除かれ、さあこれから頑張るぞ。ってのが本音かな。事実、客観的に見ても、彼一人がどう足掻いても日本の運命にさしたる変わりはなかったでしょう。むしろ二・二六事件の際も、終戦の決断にしても、英明の誉れ高き彼でなければ、もっと悲惨なことなっていたように思えます。日本特有の実際の権限と名目上の責任者との乖離をどう考えるかが問題でしょう。
- 宮中・・・何でもいいからともかく穏便に。GHQの態度が天皇制存続と判明してからは、GHQに全面協力。泥をかぶることも厭わぬ献身的な態度は忠臣の鑑。代表木戸幸一・重光葵
- 皇族・・・天皇を退位させて、あわよくば自分が権勢を得ようと画策。特に退位論の急先鋒は東久邇宮と三笠宮。ちなみに後継第一候補は高松宮。明仁親王(現陛下)成人までのワンポイントの予定だったようですが、もし実現していたら、天皇家お得意の両統迭立泥沼のお家騒動が現在も続いていたことでしょう。
- 日本国民・・・あの英明にして慈悲深い天皇陛下であれば、自身のために死んだ多くの犠牲の鎮魂の為、自ら御退位なさるに違いない。*2
- 連合国・・・日本許すまじ。責任者出て来い。
- GHQ・・・折角旧統治機構がほぼ無傷で残ってるんだから、利用しない手はないよね
こうしてみると、日本側の意向は国体護持、それが叶うなら御輿の御本尊は誰でもいいや。という感じでしょうか。天皇様御謀叛の名目で幾人も押し込めた実績のある日本人の面目躍如といった感じです。
一方連合国は東京裁判でも分かるように、戦前の日本の政体をドイツやイタリアと同じファシズムとして理解しようとしていたようです。では何故GHQはそれに囚われず、天皇制護持の発想に行き着けたのでしょうか。ここからはほぼ私見に成りますが、これはマッカーサーのファインプレーだと思います。マッカーサーの一族は代々フィリピンの統治に深く関与し、フィリピンはマッカーサー王国と揶揄されるほどであったと言われます。この経験が、黄色人種の統治には、なんらかの絶対者が必要であるという思想を育んだのではないでしょうか。天皇ヒロヒトが幸運だったのは、マッカーサーがアジアに詳しくても、日本には疎かったことでしょう。日本人の天皇崇拝を、ヒロヒトへの個人崇拝と同一視してしまい、ヒロヒトのカリスマが過大評価されたのではないでしょうか。もう少し日本に詳しければ、天皇制という形さえ保てば、天皇は誰でもいいんだと気付けただろうに残念です。もしそこで、哀れな生贄の列に、名目上に過ぎなかったとは言え最高責任者を加えることができていたなら、今の戦争責任問題ももう少しすっきりしていたでしょうに。とはいえ、ソ連中国に支配される悪夢を思えば、日本は幸運だったのでしょう。多少いびつにゆがんだとは言え国体護持には成功したのですから。
まとめ
天皇制護持に成功したのは喜ばしいが、やはり昭和天皇は退位し、明仁親王に譲位すべきだったというのが、個人的な見解です。A級戦犯入りは流石にやりすぎにしても、せめて形だけでも*3退位してくれていれば、益体もない戦争責任論に割く時間がもう少し有効利用できたのでは、と思えて成りません。
それでは葦原瑞穂国とその象徴たる天皇家の永久なる繁栄を祈念しつつ筆を置きます。天皇陛下万歳!!!ちょっと白々しかったかな?