毎年年末吉例パソコンの不調の時期がやって参りました。我が家の可愛いグレムリンは家主に似て〆切が迫らないと仕事をしないようです。なのでいざという時の為にハードディスクの中身をここに非難させたろうかと思います。普段に増して、分からん人には全くわからん文章になるでしょうが、勘弁下さい。根が貧乏性なんで読んだ本そのままお蔵入りさせるのがなんかもったいなくて。以下如例ネタバレ注意
- 作者: 春名好重
- 出版社/メーカー: 淡交社
- 発売日: 2001/06
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
朕の新儀は後の先例なり
いつもに増して唐突な始まりですが、読み物としては欠片も面白くないので、要点のまとめだけ。日本書道史の時代分類。
- 飛鳥時代(570年高句麗使の来日の頃から)六朝風の流行。書道は帰化人とごく一部の最先端文化人(聖徳太子など)が独占
- 白鳳時代(645年大化の改新頃から)初唐風の流行。
- 奈良時代(710年平城京遷都頃から)晋唐風の流行。王羲之・欧陽詢の尊重
- 弘仁時代(794年平安京遷都頃から)和様の流行。三筆・空海ら。
- 藤原時代(894年遣唐使廃止頃から)和様の完成。仮名の創始。三蹟。この時代の藤原行成が後代のスタンダードとなる。
- 平源時代(1156年保元の乱頃から)書の実用の側面の強調。力強い武家用の流行。崩れた平易な字体の増加
- 鎌倉時代(1221年承久の変の頃から)一般層に和様、貴族層に代わる新知識階層の禅林に禅宗様(黄山谷など)が流行。二分化。
- 室町時代(1333年鎌倉幕府滅亡頃から)和様は前例固執により膠着化。禅林では五山様(黄山谷・張即之・趙子昂を尊重)が完成。仮名の衰退。
- 桃山時代(1571年比叡山焼き討ち頃から)前時代へのアンチテーゼとして平安期和様の復興
- 江戸時代(1637年島原の乱頃から)書の一般庶民への浸透。儒教の影響により、唐様(王羲之・文徴明・趙子昂など)が知識階層で流行。
- 近代(1868年明治維新頃から)芸術としての書道の開始。和様の廃止。非王羲之流(北魏風)への関心。六朝風の流行。
- 現代(戦後)書道の衰退。一般層の撤退。前衛書道・調和体の流行。
まとめ
各段落ごとの繋がりがめちゃくちゃ、表題と内容の矛盾がざら、と読み物としては最低に近いですが、小癪な無駄に凝った言い回しをしてない分だけ読み進めるのだけは楽でしょうか。理解には努力を要しますが。石川九楊が文章の書ける書道家として珍重されるのが分かる気がします。日本の売文屋と専門家との乖離の深刻さが伺えます。
全部自分に返ってきそうな悪口はここまでにして、感想を。書道が飽くまで実用のものだった為に、先例が墨守され、芸術としての発展が阻害された。特に現代は書家の玩ぶ「くろうと」だけの芸術に成り下がってしまっている。というのが作者の一貫した主張です。作者としては、旧例に縛られ、芸術として日本独自の発展を遂げられなかったのを嘆いているようですが、個人的にはそれでよかったのではないかと思います。そもそも日本人が大上段に振りかぶって高尚なものにしようとして成功したものが一つでもあるでしょうか。個人的に日本文化の神髄は下世話で庶民的な低俗なものにこそ宿ると信じているので、技術を芸術の下位に置く最近の風潮には肯じえないものを感じます。
歌舞伎のようにゲージツに堕落してまで命脈を保つより、すでに役割を終えた古代の技術として、「書道」でなく「習字」のままで、美しく忘却の彼方へ消え行くのも一興でないかと最近思います。