脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『中原の虹 第三巻』

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/993358.html
アメリカよ、おまえもか!


 やっと追いついた!実に約三ヶ月ぶりの当日更新です。しかし、こんな週二弱の更新ペースで追いついてしまうって、カープどれだけやる気ないんだか。

中原の虹 第三巻

中原の虹 第三巻

弱さと怒りが姿無き敵ですか

 西太后死ス。宣統三(1910)年清国は不思議な平穏を保っていた。命脈の尽きた帝国をその身一つで支えた老女は既に無く、後を襲うべき有為の人材もないこの乱世に舞い踊る梟雄三人。平原にて李鴻章の後継を狙う北洋陸軍総帥袁世凱、江南にて新たなる秩序の構築を目論む革命軍主宰孫文。そして満州にて龍玉を片手に中原の覇者たらんと願う東北王張作霖。いずれ劣らぬ三人の英雄が末期の大帝国に刻む足跡は何処へ向かうか。


 待ちに待った『中原の虹 第三巻』なのですが、前二巻に比べてパワーダウンの感は否めません。一巻で魅せた馬賊張作霖ピカレスクロマンや、二巻で繰り広げられた西太后・光緒帝親子の悲劇に匹敵する主題を提示できず、ただ筆なりに1910-'12の中国政治事情と張作霖奉天奪取までの道程を書いているだけに感じてしまいます。期待の高かっただけに正直拍子抜けしてしまいました。是非2007.11刊行予定の最終第四巻では巻きなおしの大団円を書き上げてほしいものです。

仮初めのこの世の真はいづこ

 講談社編集部は嘘吐きだ。2007.3月発売予定が結局5月に発売延期。しかも、上述の通り、内容も半年待たされて肥大しきった期待に応えてくれるものとは正直言えません。やはり、前巻で張作霖の物語から逸脱して西太后サーガの完結に浮気したのが大分祟ってしまっているようです。これでは梁文秀と春児の相克から西太后周りの政治陰謀劇にシフトしてしまい完成度を損なった『蒼穹の昴*1の二の舞ではないでしょうか。繰り返しになりますが、浅田次郎には心の底から張作霖サーガの大団円を期待しています。某作家の様に期待は裏切り予想の斜め上に行くなんて事にならないで下さいね。

勇侠青春謳

勇侠青春謳

*1:浅田次郎は『鉄道屋』の前年に『蒼穹の昴』で直木賞を取り逃しています。その時の審査員のコメントが「前半での文秀と春児との関係の主題が後半に希薄になってしまったのが残念」と言うものでした。