『傾いた世界～自選ドタバタ傑作集②』

　最寄り駅まで徒歩20分の超絶好立地を活かしたウォーキング三昧を半年続けた結果ようやく体重が減少局面に。さあこのまま個人的ベスト体重の80kg切り目指して頑張るぞー。

「関節話法を、そんなに大変なことのように考えなくていいのです」by局長

　
　食わず嫌いしていた筒井康隆の魅力に気づかせてくれた作品。やっぱり何度読んでも腹抱えて笑えるなあ。

「民主主義にかわる物語を作るのではないのですか」by論理谷認定

　日本沈没的なパニックものにすればいいものを女性による感情的な統治への皮肉を入れ込んだもんだから、どっちつかずの中途半端な出来栄えに。とりあえずこんなもんかいてるから断筆宣言なんかする羽目になるんだと思う（いい意味で）

「あっちの条件は全部呑まされましたが、こちらの主張も半分は通ったわけですから」by秘書官

　同時代を生きた者だったら手を叩いて快哉を叫べるであろう良質な諷刺がふんだんに含まれていると思しき作品。正直今更読んでも「はあそうですか」としか。そうかんがえるといしいひさいちってほんまもんの天才なんだなあ。

「飛行機というのは、羽ばたくものかね」by旗山

　初出が多分航空事故が起きまくってた時期。なので当時としてはにやりとできるブラックジョーク満載なんでしょう多分。

「酒は飲むがまだアル中ではない。怠けものだが自閉症ではない。喧嘩はするものの殺人鬼ではない。非常識ではあるが完全な馬鹿ではない」by局長

　
　前衛に片足突っ込んじゃっててもう何が何だか。

「これ以上被害者であり続けるよりは、むしろ小古呂同様の加害者たらんとする道を選んだのだ。被害者であり続け、おろおろし、マスコミに泣きごとを訴え続けている方がはるかに楽だし安易でもある。しかしおれは被害者としての適性のない人間だ。だからおれはより困難なこの立場を選んだ」byおれ

　これはいい筒井。凡人が些細な社会への怒りをエスカレートさせて自体が加速度的に悪化していく筒井お得意のドタバタコメディ。主人公のサイコパスじみた思考回路が実にホラーです。あととりあえず作者がマスコミとポリ公が死ぬほど嫌いなのはよく伝わってきた。

「鳥は飛ぶ。煙はのぼる。凧だってあがる。どうして人間が飛べないと断言できるのだ。おれは飛んでやるぞ」by浮田幸吉

初出が多分航空事故（以下略）。幸吉パートの出来が非常に言い分間に挿入される現代パートが実に蛇足。あれひょっとして筒井康隆って地味に時事ネタの諷刺って苦手だったりする？

　ああこれが俺の嫌いだった筒井康隆だと再確認できてちょっと感動。「関節話法」とか「毟りあい」とかは好きなんですけど、その他の作品は面白くないというか虫唾が走るレベルの嫌悪感。まあそうやって人の感情逆なでしてこその筒井って気もしなくはありませんが。

航空事故で死ぬためには8200年間毎日飛行機に乗り続ける必要がある

死亡事故遭遇確率0.0009%ってのはそのレベルの奇跡なんですね。

脱積読宣言