『ベストSF2020』 - 脱積読宣言

【池袋母子殺害】飯塚幸三、２００１年にも同様の事故を起こした前科ありだった…裁判では遺族の供述中に寝る老害っぷりも披露:ハムスター速報
自身が絶対悪のイコンとして君臨し、高齢者ドライバーおよび上級国民問題にまつわる全ての対立と怨念を一身に背負った上で抹殺される「イイヅカレクイエム」を画策してるに一票。

　帰省のついでに京都に立ち寄ったところ、水ひっかけられるわ無理な右折車に轢かれかけるわと散々。関西ってこんな下品なドライバーばっかだったっけとちょっとしんみり。私も関東のお上品な運転に慣れてしまったもんです。

「絵の具は混ぜれば黒くなり、光は混ぜれば透明になる。歌はどちらか」by彼

なんとも衒学的なこれぞ円城塔な作品。しかし大森望は円城塔大好きだなあ

私たちのようなのを、「逃げ水世代」と呼ぶらしい。

なんだか藤子・F・不二雄の短編マンガチックな一篇。最後のオチが少し弱い気もしますが美しい物語です。・・・と書いたところでようやく<ねんきん>が年金と粘菌のダブルミーニングだったことに気づいた。鈍いなあ俺。

「どうでっしゃろそこのお客はん……興味ありますやろ？無・法・地・帯」byスミレ・シンシア・ヒル

　お見事！ハタと膝を叩くしかない見事な傑作。お気楽ご気楽な痛快スペースコメディーでありながら、遊泳生物の末裔たる我々の刹那的な生き方の脆さと矜持を感じさせる実に哲学的な名作となっております。・・・とうだうだ能書き垂れましたが結論はただ一言。スミレかわいいよスミレ。

『ビョートル竜帝　3056―3122』by墓誌銘

　仮想歴史は元から大好物なんですが、それに加えて見事なSF的な大オチが絶品。

「いや、そもそもその時代の女の子は鯨を狩る必要なんかなくて、笑っているだけで生きていけたんでしょう」byバイカル

　祝芥川賞受賞。それがフロックではないことを満天下に示す佳作。何が凄いって明らかに手なりで投げ遣りに書かれた作品なのにとっても文学してるのがスゴイ。神話のような荘厳さすら感じさせる前半から風呂敷を畳み入った瞬間一気にスケールダウンするのは残念ですが、それでもすごいものはすごい。

「そりゃそうかもしれないけどさ、こっちだってたいへんな日なんだぜ、そのくらいわかんだろ」by俊輔

　家族経営のブラック零細企業の親族役員の無能さと無神経さの描写が秀逸すぎて刺さる刺さる。もって他山の石とすべしですね。

「この船の容量にはかぎりがある。乗船の許可は種ごとに二匹ずつ、雌雄のつがいのみに与えたい」byヒトの長

　世界文学テイストとSFの融合に定評のある氏ならではの怪作。「選ぶ者」の傲慢さと「選ばれたがる者」の卑屈さの描写が出色。

「この後、私の部屋でちょっといい？」byクロエ

　名作。これは百合って言っていいんだろうか。登場人物両名の底知れぬ悪意が素敵。とは言え、地獄太夫との二重写しの描写は正直蛇足かなと。まあそれこそが空木春宵の作家的アイデンティティーなんでしょうが。

「はい、わたしは、ひとりなんです。わたしという意識は、この肉体、この脳、この空間的時間的位置に囚われているのです。そんなことあるわけがない」byあなた

　多量の専門用語で煙に巻きつつエスカレーションしていく様はなんだか筒井チックな快感。ちょうど「また春が来る」（『S-Fマガジン2020年8月号』）読んだばっかりだったんで、この作者はこのテーマというかモチーフ大好きなんだなあと

「それは、科学に身を捧げる人間としてあるべき姿でもありました―理解されなくても、もしくは不公平な扱いを受けたとしても、ひとり孤独に真理を追求すること。その真理も自分と同じように世の中の誤解と軽視にぶつかったとしても」byエマ＝ソフロニツキー

　再読ですがやはり傑作。上の草野原々と並べて読むと同じテクニカルタームを使いまくり架空理論を現出させる作風でも日中の違いがよく出てるなあ。片や「溢れる才能の無駄遣いによる全身全霊の悪ふざけ」で片や「衒いもなく王道を行かんとする士大夫の策問」

「プロポーズされたらどうするの？」by母親

　実に幻想的で抒情的な作品・・・なのはいいですが「海の指」前提すぎる作品じゃあありませんかねえ。自分は読んでたからよかったもんの。

　『年刊日本SF傑作選』が終了したときは絶望したもんですが、こうして形を変えてとは言え復活してくれて何より。これからも自分のようなヌルSF者のよき導き手であってください。

棘皮動物は全て海水生

言われてみれば川でウニやヒトデは見ませんね。