『J・G・バラード短編全集1〜時の声』

８５才老害による女子高生２人重体の事故状況がクソすぎる:ハムスター速報
障碍者と一緒で、「自立」・「自己決定」・「自己実現」を金科玉条の旗印にしている以上、甘受しなければいけないリスクではあるんですが・・・。移民政策と一緒で権利ばっか主張してると、容認の閾値を超えた瞬間地獄を見ますよ。

　年明け前からの懸案事項が一個解決。ってゆうか、上層部がブラフを真に受けて踊らされてただけだった。「やれるもんならやってみろ」の開き直りもたまには必要ですね。

DQⅪ進捗

• クエスト「消えたカメさま」クリア。称号：「最強のマルティナ」

J・G・バラード短編全集1 (時の声)

ぐるぐるぐるぐる時を巡って

プリマ・ベラドンナ

「邪悪？いいえ、誇り高いのよ」byジェイン＝シラシリデス

　なんとも雰囲気たっぷりな一篇。読後振り返ってみると雰囲気だけなのはご愛嬌。

エスケープメント

「君が気づいていない場合のために言っておくけど、この芝居は今、同じシーンの四回目をやっているんだよ」byバートレー

　タイムループものの最初期の作品かな？山ほどの派生作品が生まれ洗練された現代からみれば大分陳腐ではありますが、それはむしろ勲章。個人的にはバラードにコメディのイメージ全くなかったので、こんなに面白いとはちょっとびっくり。

集中都市

「あいにく、この辺は西百万番台ですよ。あなたの行き先は東九百七十七万五千三百三十五番だ」

　超過密都市の（以下略）。名状しがたい閉塞感はバラードによく似合う

ヴィーナスはほほえむ

「音響彫刻は目下の流行なんだよ。三十年前に大衆が敗北した戦いを、ひとりでやり直そうというのかい？」byハミルトン

　自己成長する音響機器。秀逸なシチュエーションコメディがなんでこんなに美しい物語に化けるんでしょうか。

マンホール69

「ナンセンスだよ、ジョン。無意識は抑制すればするほどよい。われわれは沼沢地隊を干拓しているのだ。生理学的にいって、睡眠は大脳の無酸素血症の不都合な症状にすぎない。きみが失うのをおそれているのは睡眠ではなく夢のほうだ。エロチックなのぞきからくりの最前列の座席を手離したくないんだ」byドクター・ニール

　
　言いたいこととやりたいことは分かるけど、精神崩壊の理由と描写に全くリアリティが・・・。「嘘」をつくならもっと大げさにやってくれないと。

トラック12

「一番最初に聞かせた細胞分裂のシリーズを憶えているかね？動物の細胞分裂を十万倍に増幅すると、まるで無数の梁とスティール板がバリバリと引き裂かれているように聞こえる」byシェリンガム

　秀逸なショートショート。観念的で形而上学的な描写から卑俗極まりないオチへの落差が見事。

待ち受ける場所

「世界が終わるとき、きみはどこにいたい？」byヘンリー＝タリス

　美しければそれでいい・・・って訳じゃあないんだなあ。

最後の秒読み

《……ランキンは、不意にバランスを崩して、手すりを乗り越え、下の玄関ホールで墜落死をとげた》by『ランキン日記』

　デスノートの直系のご先祖になるのかなあ。巻末の解題ではオチを「藤子不二雄A的な・・・」って評してましたが、自分は日野日出志を思い出した。

音響清掃

「スカラ座、コヴェント・ガーデン劇場、メトロポリタン劇場―みんなどうなっちまったっていうの？」byマダム・ジョコンダ

　過去の栄光にすがる老婦人と、彼女に心酔する従僕の哀れにして美しい物語。結末に一切救いがないのが実にバラード。個人的に本巻のNo1作品。

恐怖地帯

「いいかげんにしろ、ベイリス、進歩的な思想というのは、医師と患者が病気を共有し、それぞれの立場を忘れて、等しい責任を負うものだと思っていた。君は回避しようと―」byラーセン

　だんだん小難しいのが度を過ぎて来たぞ。

時間都市

「ただの看板よ。何の意味もないの。星や指輪みたいに」by母

　「時間」が禁忌とされたディストピアもの。絶望に沈む世界を描かせたらやっぱ上手いなあ。

時の声

「イソギンチャクだよ。いや、だったといおう。開いた体腔を持つ単純な腔腸動物だ」byパワーズ

　傑作の誉れ高い理由も分かるけど、個人的には好きになれないなあ。行間を深読みするのがお好きな人にはたまらないかと。

ゴダードの最後の世界

「理解できないのは、あのひとたち、いったいどこに昇ろうとしてたのかってことですよ。はしごをまっすぐに空にのばそうとしてたとしか思えませんよね」by副主任

　「エスケープメント」や「最後の秒読み」もそうでしたが、B級SFに翻案してこその奇想が結構目立つなあ。

スターズのスタジオ５号

「そこには自己犠牲の必要がなくなり、また犠牲を払ってまで創造する価値のある理想もなく―」byランサム

　詩作すら機械にとってかわられた世界の物語。AIの進歩著しい現在にこそ読み継がれるべき一篇。バラードにしては珍しいベタだけど熱いラストは必見。

深淵

「もしかしたら詩人で夢想家なのかもしれんが、そのふたつの種族はいまや絶滅したのがわからんのかね？」byショーペンハウアー博士

　シニカルなディストピアを書かせたら右に出る者はいません。

心の先のインナースペース

　バラードをまとめて読むのはこっそり初だったりしますが、世間での高評価と山本弘の酷評の理由がよく分かった。日本の純文学にも通ずる高踏的な文体と構成はそりゃあ文壇うけするわ。書評や論文書きやすいタイプの作品群をお気に召すかはあなた次第。世界観も文章も果てしなく美しいので読んで損はない作家かと。

吟遊Planet☆AKIBA-POP【通常盤】

帰って来た今日の一行知識

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