ATOK presents 日本語ドリル
59点。ちと低いかな。
友もすなるmixiなるものを、ということで、私も二三ヶ月前からmixiやってるんですが、ここ一週間ほど、面白そうな意見を見つけてコメント欄で議論をふっかけるんですが、うざがられておしまい、ということが続いてまして、せっかく準備した理論武装を無駄にするのももったいないので、このブログで垂れ流そうとおもいます。議論大歓迎なので是非訂正反論くださいまし。
君は間違えずに歩いた
経緯説明。「「いう」を「ゆう」と発音するのは、百歩譲って許せても、表記まで「ゆう」と書くのはいかがなものか。ましてや、「ゆわない」とかは問題外の暴挙だ。」(大意)に反論。「いう」→「ゆう」への変化の過程の説明と、「ゆう」という表記と活用についての私見をば少々。
日本語では、母音同士が連続した場合、発音が変化することがしばしばあります。以下その例()内は「日本語」にはない組み合わせ。:は長音記号。jはiが次の母音と結合して、半母音化したもの。(分かりやすく言えば、ヤ行の母音部分)
- 文字通り発音・・・ai/ae/ao/ie/io/ui/ue/uo/(eo)/oi/oe(ex.貝、家、塩)
- 長音化・・・aa/au/ii/uu/ei/ee/ou/oo(ex.扇augi→o:gi、能nou→no:)
- 半母音化・・・(ia)/(ua)/(ea)/(oa)(ex.ダイアモンド→ダイヤモンド、ケア→ケヤ)
- 半母音化+長音化・・・iu/eu(ex.九kiu→kju:、今日keu→kjo:)
しかし、物事には例外があります。熟語の連結部分(ex.改悪kaiaku、右腕migiude)とワ行五段活用動詞の終止・連体形の末尾*1(ex.買うkau、もらうmorau、思うomou)がそれです。なので、一つの「単語」の中では母音連続により発音が変化することがあると言った方が正確でしょうか。某氏が「いう→ゆう」の変化に違和感を覚えるのは「言う」が他ならぬワ行五段活用動詞だからなのでしょう。
とここで終われば、問題ないのですが、この例外にも例外規定があります。「その単語が一般化して二語からなる熟語であるという意識が薄れた場合は発音の変化が起きる」(ex.胡瓜ki+uri→kju:ri、毛糸ke+ito→ke:to)というものです。「言う」という単語も、使用頻度が高い為、二語結合の単語という意識よりも利便性の方が勝り、簡単な発音に変化したと考えることは出来ないでしょうか。
なお余談ですが、広島生まれの私には、「いう→ゆう」の変化は自然に思えます。広島方言では、「買う」+「て」を発音する際、撥音便を起こさず、「買うて(こうて)」(kaute→ko:te)と発音します。*2これに慣れていると、どうしても「言って」より「ゆうて」(iute→ju:te)といいたくなります。
以下明確なソースなしの私見
これで「いう」が「ゆう」に変化することの妥当性は説明できたつもりですが、「言わない」が「ゆわない」に置き換わる説明はまだです。こればかりは発音での説明は無理ですしね。
では何故このような混用が起きるかというと、「いく」と「ゆく」の共存が背景にあると思われます。「言う」と「行く」には共通点*3も多い為、市民権を得ている「ゆく」の表記*4と同様に、「ゆう」の表記も許されると混同したのではないでしょうか。
君はやっと自由になった
以下結論。「いう」を「ゆう」と発音するのは言語学上問題なさげ。「ゆう」を活用して「ゆわない」とかいうのは、「行く」と「ゆく」の共存に範をとった誤用。糾弾されるほどの致命的な誤用ではなし、市民権を得る日まで生暖かく見守ってあげてもいいんではなかろうか。但し、「ら抜き言葉」と一緒で文章に起こすと限りなく頭の悪い字面になるので、TPOを弁えて。
以上、「正しい日本語」シリーズ第二段でした。「汚名挽回」編でも言いましたが、昨今の日本人は「誤用」に不寛容になりすぎていませんでしょうか。言語とは進化するもの。刻々とその様相を変えるファジーでファニーな言葉の海での水遊びを楽しもうではありませんか。いつの日かその荒海を自由に泳げるようになれることを願いつつ。
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