脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『機動戦士ガンダム画報』

 季節も巡り、はや春の足音も聞こえる二月に入り、悪夢の一月のことは忘れ、心機一転日刊更新を目指そうと思った矢先、初日から更新するのを忘れてました。全く何やってんだか。というわけで頑張って二日分更新。「明日から頑張るんじゃない。今日だけ頑張るんだ。」の名言を心に刻み、行けるところまで行ってみようと思います。

 しかし珍しくいくら時間とやる気があるとはいえ、一つ目は軽めの脊椎反射で書ける奴を。

機動戦士ガンダム画報―モビルスーツ二十年の歩み (B media books special)

機動戦士ガンダム画報―モビルスーツ二十年の歩み (B media books special)

幾らなんでも気を抜きすぎな気もしますが、細かいことは見ない振りして、おもう存分ガンダムについて語っていきたいと思います。なお私は「頑駄無」世代*1なので、UCガンダムへの評価は不当に低いので、ファンの方はご注意下さい。では以下私情まみれの駄文注意

おぼえているかい少年の日のことを

僕にはまだ帰れるところがあるんだ
 スーパーロボットとリアルロボの間を埋めるミッシングリンク。この頃はまだガンダムが立派にスパロボしてて好感が持てます。とはいえ、私これだけ一度も通して見たことがないので、細かい論評は避けます。触らぬ神に祟りなし。

Believing a sign of Z

俺はお前ほど人を殺しちゃいない
 後付設定の嵐に、纏める気のカケラも感じさせない投げっぱなしジャーマンな終わり方、と黒富野節全開な本作。個人的には過大評価な気がしてならないのですが、劇場版でリメイクされるなど、人気は絶大な模様です。説教臭い長台詞や「りある」な展開がキライな私のような人間には不向きな作品だと思います。

アニメじゃない

前作の興行的苦戦を受けて、明るく楽しいガンダムを目指した怪作、と言う位置づけになるはずが、中盤での無理な路線変更を受けて、迷走の極みを見せた「失敗作」。マシュマーやキャラ、プルなどの魅力的なキャラがシリアス展開の美名の下にスポイルされゆく姿には涙を禁じ得ませんでした。

BEYOND THE TIME

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア [DVD]

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア [DVD]

私の母になってくれるかも知れなかった女性だ
 一言でいうと詰め込みすぎ。せめて2クールは欲しかったところです。ギュネイやケーラなど魅力的になれそうなキャラ達がシャアとアムロの踏み台にされてるのが惜しい限りです。

私にあなたのハートを下さい

機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争 vol.1 [DVD]
嘘だといってよバーニィ
 一年戦争後期を舞台にした外伝的掌篇。これといってけちのつけるところもない佳作。

Say goodbye to Avalon

ソロモンよ!私は帰ってきた!
OVAの特性を活かし潤沢な時間と金を注ぎ込んだであろう戦闘シーンの疾走感はシリーズ随一。脚本が終盤いらん昼メロ的三角関係に寄り道したのだけは余計。敵役がデラーズ閣下、ガトー少佐にシーマ様と綺羅星の如く揃っているのに比べて主人公サイドの影の薄いこと薄いこと。この辺りから、連邦の凋落とジオンの隆盛が始まります。

ああこのままで明日を探そう

機動戦士ガンダム F91 [DVD]

機動戦士ガンダム F91 [DVD]

ならば海賊らしく、いただいてゆく!
 機動戦士クロスボーンガンダム*2の前史。という冗談はさておき、主人公も敵役もキャラが薄く、話は非常に淡白に盛り上がりも乏しいまま終わります。製作者が悪い意味でのリアルに呪縛されてしまったが故の悲劇でしょう。小説のクロスボーンバンガード建国紀はある意味必見です。

天空を突き刺す蒼い稲妻

機動戦士Vガンダム 01 [DVD]

機動戦士Vガンダム 01 [DVD]

おかしいですよ。カテジナさん
皆殺しの富野の本領発揮。人の死にっぷりにかけては他の追随を許しません。とはいえ当時の子供達にとってはガンダム=SDであり、こんな暗くて地味な作品が受けるわけもなく轟沈。セリフも最盛期程富野富野してなく、展開も速い佳作だったので、Zは嫌いだけどという人もこれなら受け入れれるのでは。終盤のカテジナさんの暴れっぷりは必見。

優しさだけじゃ愛は守りきれない

機動武闘伝 Gガンダム 1 [DVD]

機動武闘伝 Gガンダム 1 [DVD]

出ろー!ガンダーム!
 マイフェイバリットガンダム。はったりの効いた展開、大仰な節回しのセリフ、愛を主題に意外にきっちりまとまった構成、何より比肩するもののない熱さで、非常に高い中毒性を持つ怪作。ガンダムというコンテンツの持つ懐の深さと無限の可能性を示す好例。それに比べて世のガンヲタどもの了見のなんと狭いことよ。といった戯言はおいといても、最終話前のデビルガンダム第二形態撃破から愛の告白に至るまでの怒涛の展開の破壊力は強烈。アニメに政治や哲学や文学を求めるような無粋な輩以外は、見ずに死ぬことなかれ。

気高くしなやかに

新機動戦記ガンダム W DVD COLLECTION 1

新機動戦記ガンダム W DVD COLLECTION 1

早く戦争になーれ
 リアルタイム視聴時はGよりこっちの方がお気に入りでした。主題は不明瞭で、軸線もぶれまくりの決して褒められたものじゃない脚本構成を強烈な個性の登場人物の魅力で強引に引っ張っており、ストレスなく視聴できます。中毒性は薄いですが、その分万人に勧められる名作なんじゃないでしょうか。昨今801臭さからか、不当に低い評価を受けていますが、埋もれさせるには惜しい作品だと思います。

いつか見たあの夢を

機動新世紀ガンダムX 01 [DVD]

機動新世紀ガンダムX 01 [DVD]

私の愛馬は凶暴です
 時代に翻弄された悲劇の作品。典型的なボーイミーツガールもので、地味ながらも良質なお話でしたが、GやWのような灰汁の強い作品の後では印象に残るはずもなく。サテライトキャノンの発射シークエンスはかっこよかったです。

10 YEARS AFTER 10年後のあなたを

俺は生きる。生きてアイナと添い遂げる
 一年戦争の東南アジア戦線での第08MS小隊の活躍を「リアル」に描いた名作。しかしリアルタイムで結構熱心に見てたはずなのに、今となっては米倉千尋の歌しか印象に残ってないのは何でだろう。

赤い赤い花びらよ

∀ガンダム 1 [DVD]

∀ガンダム 1 [DVD]

ユニヴァァァァァァス
 一言にして曰く地味。何をとち狂ったかオーガニック的なものに目覚めてしまった白富野の作品。往時の毒気が抜けて見やすくなった分魅力も半減か。とはいえ地味なのとMSのいかれたデザインに目をつぶれば心の温まる名作。

あんなに一緒だったのに

機動戦士ガンダムSEED 1 [DVD]

機動戦士ガンダムSEED 1 [DVD]

あんた自分がコーディネーターだからって本気で戦ってないでしょう!
 一話のエンディングへの入りを見た時これは化けるって期待したんだけどなぁ。見るべきところは多々あったものの全般的に見ると欠点の方が圧倒的に多く、正直なんでこれが受けたのかよく分からない。次作のお陰で評価が上昇しているとしか思えません。とはいえ音響方面は非常に豪華で、つくづく監督の人選が悔やまれます。

君の姿は僕に似ている

機動戦士ガンダムSEED DESTINY 1 [DVD]

機動戦士ガンダムSEED DESTINY 1 [DVD]

流石綺麗事はアスハのお家芸だな
 前作のシリーズ最大の商業的成功を追い風に、前作の個性を濃縮還元したらとんでもないものができちゃいました、な作品。とはいえここまで来ると逆に魅力的で、毎週土曜日が楽しみなほどでした。仮面ライダー剣や実写版デビルマンの類の魅力と言えば分かっていただけるでしょうか。つくづくインターネットは偉大だと思います。あと相変わらず、タイアップの魔の手を逃れた楽曲*3は名曲ぞろいです。見なくていいから聞きましょう。

まとめ

 適当に書き流してたら結構膨大な分量になってしまいました。流石に疲れたので本日分の更新はするかどうか未定です。本末転倒の極みな気もしますがやっちまったもんは仕方ありません。今後もこの調子で行くので、本年もご愛顧のほどおねがいします。

今日の一行知識

ガンダムの名前の由来はガンとフリーダムを併せた造語
間違ってもGeneral purpose Utility Non-Discountinuity Augmentation Maneuvering weapon systemの略ではありません。

*1:元祖とBB戦士以外で唯一持ってたガンプラ武者頑駄無摩亜駆弐(資料を見ずに書けてしまった自分が嫌だ)

*2:長谷川祐一作。富野節のうざったさが長谷川氏のスーパーロボット的ノリでいい感じに中和されている名作。上記のセリフのように、見得の切り方は一級品なので、アニメアニメした絵柄を許容できる人は是非ご一読を

*3:君は僕に似ている(See-Saw)、LIFE GOES ON(有坂美香)、焔の扉(FictionJunction YUUKA)

『まだ見ぬ冬の悲しみも』

 気づけばこのブログも放置されてからはや二週間になろうとしています。これというのも、文章の完成度を高め自身の発言に責任を持つために推敲に推敲を重ねているからであり無限の迷宮を彷徨う旅人の如く数多の平行宇宙を流離い唯一無二の真実を表すにふさわしい単語を探し薄皮を一枚一枚貼り付けていくようにイディオムを紡ぎ一文を織り上げるその作業のクォリティを保つ為には凡百のブロガーの如く日記形式でその場で思いついただけの思考の断片を垂れ流すという破廉恥なまねはできないと、ごめんなさいただサボってただけです。反省してます。しかし謝罪はしますが賠償は(以下略)

 とまれ、珍しくやる気と時間とネタがトリニティで光臨なされたので、頑張って更新します。2005年回顧シリーズに飽きたもとい、目線を変えるために、山本弘『まだ見ぬ冬の悲しみも』早川書房(2006)の感想です。
 これは以前*1も感想を書いた山本弘氏の最新SF短編集ですが、前作『審判の日』に比べると、ライトノベル臭の強い短編が多いので、SF苦手って人も読みやすいんじゃないでしょうか。例によってあたりハズレは激しいですし、物理学の専門用語やSF的ジャーゴンオタッキーなくすぐりも頻出しますが、理解を諦めれば意外とすんなり読めます。前も言った気がしますが、読み手を置いてけぼりにしながらも、十分な面白さを保つ文章力は驚嘆の一語に尽きます。いつか私の文章もこのレベルに達したいものです。では以下ネタバレ注意

まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

奥歯のスイッチを入れろ

 どんな体になっても、私たちはあなたを嫌いになったりはしないわ。あなたが人の心を持っている限り
 加速装置を持つ戦闘用サイボーグ同士の戦いを描いた一篇。400倍に引き伸ばされた時間の中での超人同士の戦いが、非現実的なまでにリアルに描写されています。小難しい思想も哲学もない清く正しいB級SFの鑑みたいな作品。20年近くもラノベの最前線に立ち続けた作者の確かな力量を感じさせます。ただし、主人公の正義感や恋愛感の独白は陳腐で青臭くて聞けたもんじゃありませんので、ご注意を。

バイオシップ・ハンター

 屈辱だ!我々は架空の存在のために働いたりはしない!
 異文化交流もの。ジャーゴンと専門用語の羅列と作者の主張。*2が鬱陶しいですが、文章・構成ともに力があり、さしてストレスもなく読み進められます。丁度一番感想の書きづらいレベルの佳作。

メデューサの呪文

 血と五角形にあんな関係があったなんて!
 本短編集で一番のお気に入り。超越者とコンタクトしてもなお狂気に陥らずに済んだ詩人の報告書。最後の落ちに至るまでのテクニカルな構成が見事です。人が自身の理解できない高次の概念・思考に触れた際の描写が狂ってて素敵です。中途半端にネタバレするのももったいないんで、是非自身でご確認下さい。

まだ見ぬ冬の悲しみも

 過ぎ去りし夏の喜びも
 まだ見ぬ冬の悲しみも
 時の碑に等しく刻まれ
 永遠に摩滅することはない
 過去への時間遡行が可能になった世界。人類初のタイムトラベラーの見た世界とは。表題作の割にはパンチの弱い作品。タイトルが詩的だったので抜擢されたんでしょうが、上記の「メデューサの呪文」に比べると、どうしても一枚落ちる気がします。最後のオチに頼りすぎてて、中途の描写が散漫なのが残念です。個性的な割りに感情移入しづらい登場人物にも問題ありか。ただ時間は未来だけでなく過去にも無数に分岐しているというギミックは秀逸です。

シュレディンガーのチョコパフェ

 遊園地のコーヒーカップのとこで待ってるよ
 上と逆で魅力的な主人公たちに平凡な展開。前の短編集にも似たギミックとモチーフを用いた作品*3がありますが、好きなんですかね。悪役が平凡で淡白すぎて役不足です。ギミックの説明と作者の願望惚気満載のデートシーンを削って因果律の乱れた世界の狂気の描写を増やした方がよろしかったんじゃなかろうかと。誰もあなたにラブシーンは期待してませんし。

闇からの衝動

 ウェイブにジャイアし、ギンブルし
シャンブロウ』で有名なC.L.ムーアを主人公にした作品。彼女の描くおぞましくも美しい淫靡な怪物の源泉を探す物語。正直ハズレ。怪物描写もありきたりで、展開も淡白。実在の人物を主人公にした短編というアイデアと思い入れだけが先行した感じ。

まとめ

 全般的に臭いのを除けば、非常に読みやすく力のある短編ぞろいだったと思います。SF冬の時代と言われてはや30年になろうかとしていますが、氏にはラノベでの経験を生かし、間口の広い分かりやすくも重厚な少しSukoshi Fushigiな物語を書き続けて欲しいものです。

今日の一行知識

 「パフェの語源は仏語のパルフェで、英語のパーフェクトと同じ意味」by裕美子「シュレディンガーのチョコパフェ」より
 作者いわく唐沢俊一しか喜ばないようなトリビアと言うことですが、ここにも喜ぶ人間がいます。意外とこの一行知識って探すの面倒なんですよね。

*1:必滅の世界で僕等は何の為に生きている - 脱積読宣言

*2:「人は何事も自分の意思で物事を決定すべきだ。神や独裁者・恋人などに依存し決定責任を放棄してはいけない。」理想主義的に過ぎはするが興味深いモチーフなのは分かりますが、この人の作品の三分の一位はこの主張が前面に出てくるので、流石に食傷気味です。

*3:「闇が落ちる前に、もう一度」この世界は混沌の海に浮かぶ泡に似た偶然秩序が保たれた世界に過ぎず、世界の崩壊が間近に迫っていると知った主人公が愛を叫ぶ

続『社会派くんがゆく 維新編』

 長くなりそうなんでカテゴリ移動アンドシリーズ化。気紛れ起こさなければ、全四回の予定です。それでは以下ネタバレ注意

睦月

NHK番組改変報道問題

 だいたい社会主義って「みんな一緒に貧乏しよう」っていう、ものすごくネガティブな発想じゃんBY村崎
 NHKブランドの失墜に続き、天下の朝日の美名を大きく汚す一年となった2005年を暗示するかの様な年初のこの事件でしたが、問題とされるべきは、記者の質*1 やクォリティペーパーの驕りではなく、時代遅れの社会主義の幻想を未だ振り払えてないところにあると思います。愚かな大衆を知識人が善導してやるという気概は、皮肉でなく立派なものだとは思いますが、時代の空気も読めず、過ちを改めるを憚るような小人を知識人とは呼びたくありません。精進して欲しいものです。

如月

大阪寝屋川中央小殺傷事件

 すべての人間は、明日にでもキチガイになる可能性があるby唐沢
 鬱病は直りかけが一番危険とはよく言いますが、引きこもりも同じことが言えそうです。この少年も引きこもりから立ち直り、大検を取り、社会復帰への道を着々と歩んでいたところで、唐突にやり残した復讐を思い出し、犯行に及んだ模様です。

ライブドア・フジサンケイ買収騒動

 今回の騒ぎで一番不愉快なのは、株屋ごときが全員が全員、なんでああもエラそうに人前に出てくるのかってこと。by唐沢
 酷くみっともない結末に終わったこの事件ですが、このような下品な金持ちを見ていると、貴族の必要性をひしひしと感じます。そもそも株なんてのは立派な博打であり、株屋とパチプロと本質的な違いはないのだということを忘れてはならないのだと思います。昔から相場師も地面屋も畳の上で死ねない因果な商売の代表です。

弥生

竹島の日条例制定

 「ウチの反日はスゴイです、カメラの前で手を切るんです」とかテレビ局に売り込んでるらしい。by唐沢
 去年は韓国の怪しさが白日の下に晒された記念すべき一年でしたが、それを象徴する事件です。韓国は竹島の日に対抗して対馬の日を制定するなど、見事に領土的野心の馬脚を顕しました。特定アジアに対して、妥協は禁物だというのがよく分かります。つくづく脱亜論は偉大です。

愛・地球博開催

 日本現代史の重大なエポックだった大阪万博二匹目の泥鰌を狙ったのでしょうが、結局対した話題にもならず終わったようです。やはり国際的イベントは発展途上国でやってこそ意味があるものです。ここからは完全に余談ですが、海島博*2アジア大会・花博と大きなイベントを全てポシャらせた広島人のアドバイスです。後に来る財政難にせいぜい気をつけて下さい。

まとめ

 バブル崩壊、1995年に次ぐと言っても過言ではないほど、時流の転換が感じられた一年でしたが、最初の三ヶ月は意外と事件が少なかったように思えます。まだまだ続くので、今日はこれくらいで。

今日の一行知識

 牛肉には麻薬成分が含まれている
 業務連絡。友人一同へ。焼肉食べに行きましょう。
 

*1:文化欄等を読むに、他の新聞社と比べても記者のレベルは朝日が頭一つ抜けていると感じます。飽くまで私見ですが

*2:余談の余談ですが、昔飼ってた愛鳥の名前がこの大会のマスコットにあやかったポッポとクックって名前でした。

『社会派くんがゆく! 維新編』

 年頭の挨拶を書いてたらむくむくと執筆意欲が湧いてきちゃったので、調子に乗って連続更新。家を出るまで一時間しか余裕がないので尻切れトンボで終わりそうですが、折角なので書き散らかさせていただきます。やる気は有限の資源です。浪費は慎みましょう。
 
 さてこの本は唐沢俊一*1村崎百郎氏がweb上で月刊連載した記事を単行本化したもので、各月の事件・話題を歯に衣着せぬ毒舌でぶった切るというありがちと言えばありがちな企画物ですが、論者の個性から類似の企画とは一線を画した凄みを感じさせる出来映えとなっています。外道鬼畜キャラが売りの村崎氏の妄想全開の暴走を、時に抑え時に煽り、エンターテイメントへと昇華させる唐沢氏の「芸」は驚嘆せざるを得ません。マスコミ主導の真面目で善人ぶった記事・評論では決して窺えぬ、事件の「本質」が垣間見えるかもしれません。「汚れ」たくない人には決してお勧めできる代物ではありませんが、少しでも興味を持たれた方は拙文にお付き合い下さいまし。それでは以下ネタバレ注意

社会派くんがゆく! 維新編

社会派くんがゆく! 維新編

鳥頭の為の備忘録

 評論を評論するのもバカらしいし、私の文才で魅力を損なわず紹介できるとも思いませんので、筆者の名文を取り上げつつ各事件を振り返るという形式をとりたいと思います。

安倍なつみ盗作問題

 小室だの相田だののクソみたいな詩を盗むなんてヒドイ、盗むならもうちょっとマシな詩を盗めby村崎
 いきなりしょぼい事件な上に一昨年の話題ですが、単行本の構成もこうなっているので勘弁下さい。盗作騒動と言えばabexが一躍有名になってしまいましたが、どうして誰も彼もメジャーで個性の乏しいとこから「いんすぱいあ」されちゃうんでしょうね。もっとマイナーで尖った才能の方が中毒性も高いし、そもそもばれにくいと思うんですがどうなんでしょうか。二匹目の泥鰌を狙いたくなるのは分かるけど、結局上記のようにバカにされるだけだろうにと思うのは、気楽な同人書きの僻目でしょうか。

奈良小一女児殺害事件

 今回の事件は、(中略)何の美学も哲学も知性のカケラも感じられない行き当たりばったりの衝動的なクソ犯罪だった。by村崎
 2004年の年末を騒がせた大事件も彼らにかかればこの一言でおしまい。猟奇犯罪は「神殺し」の代替としての文化的行為であると位置付ける彼等にとっては、こんな幼稚な「三文芝居」に感激し涙する大衆は我慢ならないのでしょう。それにしても最近強く思うのは、犯罪者のレベルの低下です。リスクと引き換えにイリーガルな行為に手を出すならもっと勉強し努力するべきです。我々凡人はそれができないからこそ大人しく法の鎖に従順に縛られているのですから。アウトローの方々にはいつの時代も英雄としての矜持を持ち続けて欲しいものです。

スマトラ沖地震

 (面白い発言拾えなかったので省略)
 阪神大震災オウム事件の時も似た感じでしたが、23万人の死者のでた災害よりも、たった一人しか殺せてない犯人の逮捕の方が、ニュースバリューが高かったと言うのも皮肉な話ですが、ジャーナリズムも所詮文学の一形態というのがよく分かっていいんじゃないでしょうか。「何が地球にそうさせたのか」なんて小説あんま面白そうじゃないですしね。

結局2004年の回想になっちゃった

 時間切れなので今回はここで終了。思った以上の分量になりそうなので、連載化するかもしれんです。気長にお付き合い下さいまし。それでは。

今日の一行知識

 渋谷のハチ公は浮浪者の死体を食べて糊口を凌いでた
 道徳の教科書の常連も所詮は獣。


社会派くんがゆく! 維新編

社会派くんがゆく! 維新編

*1:トリビアの泉のスーパーバイザー。忙しいのか最近新刊があんまり刊行されないのが残念

久しぶりの次回予告

年の始めの例とて

 二三日の御無沙汰のつもりが思いもかけず長引いてしまいました。言い訳をさせてもらうと、パソコンにストライキ起こされた(三年連続実家(NEC)で年越し。いいご身分です)り、心がインナースペースをさまよったり、と碌なことがない年の瀬だったので、更新する気力がおきませんでした。楽しみにしてくださっていた奇特な皆さんごめんなさい。現在漸く心身機全て復調したので、ここに再開を宣言したいと思います。といっても週末は何気に忙しいので、更新は来週からになりそうです。一応読み溜めはしてあるので、そこそこの更新ペースは維持できる予定なんですが、管理人の性格が性格なので確約はできません。気長にお待ち下さいまし。長らく放置しといて勝手な言い草ですが、旧年中と変らぬご愛顧をよろしくお願いします。

読了済みの本たち

社会派くんがゆく! 維新編

社会派くんがゆく! 維新編

日野富子―闘う女の肖像 (中公新書 (771))

日野富子―闘う女の肖像 (中公新書 (771))

朝日新聞社最新事情

朝日新聞社最新事情

日本の名著 (9) 慈円・北畠親房 (中公バックス)

日本の名著 (9) 慈円・北畠親房 (中公バックス)

王妃の館〈上〉

王妃の館〈上〉

王妃の館〈下〉

王妃の館〈下〉

『マンガロン』

 最近重めのネタが続いたので毒にも薬にもならない埋めネタを。てゆーか今日更新しとかないとまた二三日間が空くのにネタがないんです。つーわけで今パッと目に付いた鶴岡法斎『マンガロン ”70年代生まれの”の極私的マンガ評論集』イーストプレス(2000)を下に一ネタ。さてこの鶴岡氏、私の敬愛する唐沢俊一氏の弟子として二三年前は精力的に本を出していたのですが、最近余り見かけません。内向的である種病的な雰囲気が魅力だった人なので心配です。世間に対して思いっきり斜に構えたシニカルで下品な文章で好みの分かれそうな文章ですが、不思議と読みやすく心に残る文章になっています。少なくとも東浩紀大塚英志といった手合いに比べれば、サブカルが宿命的に抱える業と真摯に向き合った誠実な評論をしています。サブカルチャーを食い物にするガクシャモドキに飽き飽きした御仁は一度手にとって見て下さい。生理的に受け付けないとかでなければ楽しめるはずです。では以下ネタバレ注意

マンガロン―“70年代生まれ”の極私的マンガ評論集

マンガロン―“70年代生まれ”の極私的マンガ評論集

昏い情熱

 水木しげる日野日出志徳弘正也江口寿志etcと普通の評論家があまり取りあげない日陰の漫画家を多く評論するこの本は、王道しか興味のない著名人連の浅薄な分析に比べて、非常に重く暗く、それでいていやそれだからこそ説得力に溢れ、地に足のついた感じを受けます。極私的と銘打つだけあり脈絡と必然性の感じにくい選本で、一般性なぞ皆無なのですが、読み終わった後には筆者の訴えたかったことがおぼろげながらも見えてくる気がします。とはいえ流石に一世代以上違うので紹介されている本の半分は読んだこともないので共感はしづらいですが。サブカルチャーなどという美名を給わりお上品になってしまった現在のマンガと違い、かって漫画だったころの淫靡で背徳的な魅力がこの本からは伝わってきます。大人が電車の中で堂々と読めるようなおされなマンガに私はなんの魅力も感じません。家の中で隠れてこっそり読む、それが大人な漫画の愉しみ方だと思うのですが皆様はいかがお考えでしょうか。

私の上を通り過ぎて行った漫画達

 評論を評論するというのは思った以上に難しいもので、微妙に短く纏まってしまいました。物足りないので、何処に需要があるか知りませんが、個人的に思い入れのある漫画五シリーズを紹介したいと思います。前項の結論と思いっきり相違しますが、好き好んでブログなんてやってる露出狂の自慰行為と嗤って御見過ごし下さいませ。

『じゃじゃ馬グルーミン★UP』『GS美神 極楽大作戦』

  
 私の青春時代はこの二シリーズと共にあったといっても過言ではないでしょう。一般的知名度も完成度もけして高いとはいいきれないこの二作ですが、わたしにとってはかけがえのない作品です。何を書いても贔屓の引き倒しにしかならなそうなので深入りしませんが、興味のある方はお声をかけて下さい。咽喉の嗄れるまで語り合いましょう。

寄生獣

寄生獣(1) (アフタヌーンKC)

寄生獣(1) (アフタヌーンKC)

 打って変わってこちらは不朽の名作と言い切っても何処からも文句は来ないでしょう。個性的で魅力的な役者達が計算しつくされた脚本に従い舞い踊る極上の戯曲。回収され残された伏線もなく蛇足にならず完全なる調和をみせる本作はまごうことなく芸術作品足りえてます。突如降り注ぐ理不尽な終焉に怯える人間とレゾンデートルに思い悩む「パラサイト」達。娯楽作品として一級の品質を保ちつつテツガクしてみせたその力量には感服するしかありません。

キン肉マン

 初めて買った漫画。脚本が如何に矛盾してようが、絵がどんなに下手だろうが、そもそも作者が物理法則というものを知っているか怪しかろうが、そんなのが問題にならないほどの熱さがこれにはあります。こじんまりとまとまった現在のマンガにはない破綻の魔力というものを内包していた旧き良き時代を象徴する名作だと思います。

はだしのゲン

はだしのゲン (1) (Chuko★comics)

はだしのゲン (1) (Chuko★comics)

 R指定でも足りないと思います。小学生の平和授業で強制的に読まされ、純真な少年の心に一生消えないトラウマを刻んでくれた名作。その傷の深さは未だに年に一度は原爆で死ぬ夢を見る程です。私が今の反動的ナショナリストな思想信条を持つに至るのには、これへの恐怖と憎悪が根底にはあります。幼児期の刷り込みの恐ろしさをというのを示す好例でしょう。

まとめ

 マンガもいつかは教養に成り下がり、我々はきっと次の世代に向けて『DRAGON BALL』『SLUM DANK』の価値を滔々と語ることになってしまうでしょう。その時子供たちは我々が鴎外や太宰を忌み嫌うが如く、それら過去の名作を嫌うのでしょうか。願わくばいつまでも愛されるコミュニケーションツールであり続けて欲しいものです。

今日の名言

 今でも少年犯罪の事件を耳にすると心が痛む。どうして殴る程度で我慢できないのか
 「他人を傷つけてはいけない」これほどの欺瞞が他にあろうか。

『武家と天皇』

 以前ちょろっと予告した通り天皇家の権威の源泉と推移について少し考えて見たいと思います。と言っても、参考文献なしに一席ぶれるほどの知識も度胸もないので、今谷明武家天皇-王権をめぐる相剋-』岩波新書(1993)の感想で換えさせてもらいます。さて今谷氏ですが、学者と思えぬほど面白い文章を書きます。学術書の体裁を崩さずにここまで「読める」文章を書ける能力は素直に賞賛に値します。流石にメインテーマの部分は専門的過ぎて面白くないですが、前史として取り上げた部分は、生半可な歴史小説を鼻で笑うかのごとき臨場感と疾走感に満ちています。氏ほどの筆力を持つ歴史家が後数人いれば昨今の大河ドラマのごとき似非歴史小説の跳梁を許さずに済むと思うのですがいかがでしょうか。

武家と天皇―王権をめぐる相剋 (岩波新書)

武家と天皇―王権をめぐる相剋 (岩波新書)

僕が小僧の頃イメージした壮大な

 さてネタバレ感想に行く前に、私自身の天皇に関する態度立場を表明しときたいと思います。
 日本人の文化的連続性の象徴と、動乱時における現政権に対するアンチテーゼの役割を果たすことができるのであれば、金の鋳物だろうが後南朝の後裔だろうが葦原将軍だろうが構わない、尊崇の対象が何であるのかが問題ではなく、尊崇するという行為自体が尊いのだ、というのが基本的スタンスです。しかし、現実的には1500年もの間尊崇の対象となり続けた血族というのは簡単に代替物を用意できるほど簡単なものではなく、「神官」は「神」の意思が如何なるものであろうと、国家鎮護の象徴として、「神」の一族天皇家を存在させ続ける努力をしなければならないと考えます。神に人権など考える必要はないのです。

 それでは上記の立場で、女系天皇論への対案をがんがえてみたいと思います。
1、女系天皇容認論
 愛子女王の立太子自体は先例(称徳天皇)もあることですし、問題ないと思います。ただ、結婚し子供を産みその子が跡を襲うとなれば、諸外国の考える王朝の連続性の要件を満たさなくなり、万世一系の神話が途切れることとなってしまいます。世界最古の王族の称号は何気に強力な外交の武器になるので、簡単に破棄するわけにいかないでしょう。というわけで却下。
2、臣籍降下した宮家の皇族復帰
 過去の先例(後光厳天皇他)を鑑みるとこれが一番妥当なんでしょうが、何度かTVで見た該当人物が非常にいけ好かない連中だったので心乗りしません。ので保留。
3、男児誕生を待つ
 こうなれば一番無難なんでしょうが、一時は「種無しカボチャ」の風評までたった皇太子殿下や一度流産を経験している雅子妃殿下に期待するのは酷でしょう。妾を添わせてってのができれば一番いいんでしょうがこの御時世にそんなことをすれば非難囂々でしょうから、実質的には無理でしょう。髭の殿下の頑張りに期待しますか。
4、折衷案
 適当な人望ある旧宮家の男子を皇族に復帰させて、愛子天皇(仮称)の婿にして男児誕生を祈願するというのが最良でしょうか。果てしなく実現性は遠そうですが。

 というわけで、私ごとき凡俗の頭では有効な解決策は見つけられませんでした。優秀にして高潔なる有識者の皆様方の一発逆転の妙案を期待しつつ本題に移りたいと思います。ではようやく以下ネタバレ注意。 

案外普通だし常識的なこれまで

 氏は天皇権威の推移におけるエポックメイキングな事件をあげながら、本題の後水尾天皇譲位事件へと至る前史を解説しておられますが、正直本題は専門的過ぎて面白く解説できそうにないし、ぶっちゃけ前置きで疲れたので、本題無視して前史だけ解説してお茶を濁します。
 

承久の変(1221)

 中世の本格的な始まりとして誰もが挙げるこの事件が、王権の衰微への致命的な一撃となります。全国の実質的支配権を武家に奪われ、王家は以降権威的象徴としての性格を強めます。

永享の乱(1438)

 叙任権すら失い権威としての地位すら危うくなった王権の衰退は、義満の皇位簒奪計画を以て最高潮に達します。強大な大名連を掣肘するため、次男の義嗣を即位させ、自身は上皇として、中華秩序の権威を背景に日本国国王の強大な中央集権を目指したこの計画は義満の急死により頓挫します。この一件において、公家は強大な王権の復活の為義満に協力し、武家は強大な中央政府の誕生を望まなかったので妨害に回るという逆転現象が起こっているのが興味深いです。
 一旦地に堕ちた王権ですが、将軍権力の衰退と表裏に力を取り戻します。特に永享の乱の「治罰の綸旨」出されたことにより、交戦の承認権を取り戻して以降は、世の乱れによる戦乱の頻発を背景に急速に王家の権威は復興します。

長久手の戦い(1584)

 なし崩し的に叙任権・調停権すら回復した王権が究極的な復活を遂げるのは、秀吉が長久手で家康に破れ、東国の自力統一への道が事実上閉ざされたことに端を発します。武士の棟梁としての征夷大将軍たる要件の一つ東国支配が不可能になった為、天下統一の正当性の確保の為、自身が王権の一部になることを選択します。必然的に秀吉の政策は王政復古的なものとなり、秀吉の権力増大と共に王権は極大値に達します。

徳川幕府誕生(1603)

 それに対し家康は東国支配を背景に、正当性の確保に将軍就任を選択します。その後の王権との相克が本書のメインですが、疲れたので省略します。リクエストがあれば書かないでもないですが、興味ある方は実際に読んでみてください。普通に面白いです。
 さて、家康死後東照大権現を王権の代用にしようとした幕府ですが、そんな付け焼刃が通用するわけもなく、折からの朱子学大義名分論の流行もあり、自身の権威の根幹を王権に握られ、結果として幕末に至るまで火種として天皇家を持て余すこととなります。 

いつまでも消えないように

 駆け足な上、前置きと本論の内容が微妙に一致しないちぐはぐな文章になってしまいましたが、今まで幾度も奇跡的な復活を遂げ現代まで命脈を保つ王家にはこの度のピンチも潜り抜け、人臣と同等にまで堕とされたその権威を再び「神」の座にまで引き上げて欲しいというのがこの長駄文の結論です。願わくば天皇のしろしめす葦原瑞穂国に永遠の繁栄と平和のあらんことを。

今日の一行知識

 天皇は在位中は外科的処置はおろか針灸の治療すら受けられなかった*1
 富貴な奴隷か自由な貧乏人か。世の中完全なる幸福なんてのはないようです。

*1:玉体を損ずるのは畏れ多いというのがその理由だそうです。