脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『二・二六事件〜青年将校の意識と心理』

【画像】下品で人種差別的な8歳の少年がライブチャットに登場。まんまカートマン | ニュース2ちゃんねる
これはスマートでかっこいいなあ。日本の初等教育ももう少し見習って欲しいものです。


 祝・左手完治!なのですが、一ヶ月付き合ったギブスと包帯と別れるのは少し寂しかったり。力仕事忌避の免罪符として役立ったり、何より邪気眼的なカッコ良さに浸れたりとなかなか役に立ってくれました。大事に至らん程度の怪我や病気はなんだか嬉しくなっちゃうってのは、中二病の典型症状なんでしょうね、きっと。

二・二六事件―青年将校の意識と心理

二・二六事件―青年将校の意識と心理

キミがいるとどんなことでも乗りきれるような気持ちになってる

2・26事件
 昭和十一(1936)年2月26日に起きた陸軍将校による反乱事件。
 事件の背景には陸軍部内の対立・政党政治の腐敗・経済の行詰り・農村の疲弊などがあったが、反乱を実行したのは皇道派の隊付の青年将校であった。彼等は元老・重臣軍閥・政党を「君側の奸」として一掃する「昭和維新」の実現を目指し、歩兵第一・第三連隊・近衛歩兵第三連隊など1,400余名を動員、斎藤実*1内大臣高橋是清*2蔵相・渡辺錠太郎*3教育総監らを殺害し、永田町・三宅坂一帯を占拠した。事件処理で陸軍首脳部は動揺したが、側近を殺された天皇*4の怒りもあって、1936.2.27東京市戒厳令を布告、'36.2.28原隊復帰の奉勅命令が出され、'36.2.29反乱部隊は武装解除され鎮圧された。特設軍法会議で処罰('36.7.5判決。死刑は村中孝次*5磯部浅一*6・安藤輝三*7北一輝*8西田税*9ら19名。)された。事件後、陸軍は粛軍の名目で皇道派を一掃し、広田内閣組閣などに干渉し政治関与を強めた。(『岩波日本史辞典』より引用)

 安心の吉川弘文館ブランドなのですが、流石にこれは専門書に寄り過ぎ。豊富な史料引用と予断を挟まぬ徹底した実証主義で、「二・二六事件北一輝西田税に使嗾された青年将校が真崎ら皇道派幹部達の後援を受けて行ったクーデター事件」というパブリックイメージを丁寧に解きほぐしていきます。
 指導者らしい指導者がおらずてんでばらばらな迷走を続ける青年将校に、事なかれの穏便解決への期待及び青年将校らへの同情と股肱の部下を殺された昭和天皇の激憤との板ばさみに苦悩する陸軍首脳部、空気を読んであっさり「俺知らね」の責任回避に走った真崎甚三郎、勝手な暴走に頭を抱える北一輝、そしてドサクサ紛れに自身の勢力拡張を図らんと暗躍する山下奉文石原莞爾加藤寛治の非主流派トリオと役者は揃っているので、根性出して咀嚼すれば、上質の物語を堪能できます。平成維新の反面教師にどうぞ。

こんな日々がいつまでもきっと続いてくことを祈っているよ

 無事小沢首班の悪夢は回避できましたが、冷静になってみると菅総理続投でジリ貧以外の未来の見えない現代日本。閉塞感こそ半端でないものの忽ち衣食住に困窮するほどの世紀末覇者アナーキーな社会でもなし、このまま徐々に国威縮小して中流国家に着地するんでしょうか。もう高望みはしませんので、平成維新に立ち上がらなければならないほどの破綻だけは回避してくださいね。

雪の華

雪の華

帰ってきた今日の一行知識

二・二六事件の叛乱部隊の兵糧は全て原隊から支給されていた
衝突忌避の事なかれ主義もここまで来たら最早狂気の沙汰。日本人がテロリストに甘いのは昨日今日始まったことじゃあないようで。

*1:第30代内閣総理大臣。海軍大将。子爵。父耕平。軍政畑で累進を遂げ、海軍大臣に就任し日露戦役後の軍拡を推進。その後、朝鮮総督として武断政治から文化政治への転換などを指揮。五・一五事件後、挙国一致の中間内閣を組織するも帝人事件で退陣。内大臣となるもその穏健姿勢を憎まれ二・二六事件で暗殺。

*2:第20代内閣総理大臣。子爵。父川村庄右衛門、母きん、養父高橋覚治。日銀首脳として日露戦争の外債募集に功あり。政友会に参加し、原敬暗殺後、総裁と首相を後継するも閣内不統一により内閣は瓦解。その後、蔵相に再登板し昭和恐慌の混乱の収拾に尽力。世界に先駆け世界大恐慌からの脱出に成功するも、二・二六事件で横死。

*3:第16代教育総監。陸軍大将。父和田武右衛門、養父渡辺庄兵衛。ヨーロッパ流のリベラル派教養人として陸軍の要職を歴任。皇道派の勢力衰退に伴い真崎教育総監の後を襲ったことを恨まれ、二・二六事件で暗殺。

*4:昭和帝。第124代天皇。諱は裕仁。父大正天皇、母貞明皇后。病弱な父に代わり摂政として公務を代行、その英明を天下に轟かす。即位後は君臨すれども統治せずのイギリス流君主を模範として、激動の昭和を静かに見守った。

*5:歩兵第26連隊付。陸軍大尉。士官学校事件に参加するなど皇道派の中心人物として活躍。「真崎教育統監更迭事情」を作成し相沢事件を誘発。続く二・二六事件でも首謀者として活動し逮捕銃殺。

*6:野砲兵第1連隊付。陸軍一等主計。父仁三郎。北一輝に私淑し昭和維新を先導。士官学校事件に連座し停職。その間も各種パンフレットにより青年将校を煽動。二・二六事件でも主導的立場をとった為、逮捕銃殺。

*7:歩兵第3連隊第6中隊長。陸軍大尉。皇道派でも穏健慎重派として知られるも、部下を見殺しに出来ずに二・二六事件に参加。鈴木侍従長襲撃を指揮するも失敗し、逮捕銃殺。

*8:父慶太郎、母リク。安田共済生命事件や宮内省怪文書事件で右翼のフィクサーとして暗躍。その思想は青年将校を性急な昭和維新に走らせた。二・二六事件連座し処刑。代表作:『日本改造法案大綱』、『国体論及び純正社会主義』他。

*9:陸軍騎兵少尉。父久米造、母つね。頭山満北一輝に師事し、国家改造運動に奔走。相沢事件の公判に活躍するも、二・二六事件連座し処刑。