「ざわけっと」福本伸行作品オンリーイベント
世の中物好きも多いようです。特徴を残しつつここまで美化できるとは、相変わらず日本の在野の士の底力恐るべし。
暫く試合もないので、のんびり自己満足の三題噺を更新。本日のお題は「意趣返し」「禁じられた遊び+DVD」「明治」の三つです。なお当サイトでは皆様のリクエスト出題を心よりお待ちしております。
制限された時間 邪魔されず 過ごしたの
[小ネタ]意趣返し
意趣返し
恨みを返すこと。復讐。(「広辞苑 第五版』より引用
意趣とは元々「心の向かうところ」という意味で、それが派生して「遺恨」の意味を持つに至りました。
「意趣返し」の語は近世以降に見られ、『浮世草子』「傾城禁短気」(1711)*1や『東海道中膝栗毛』(1802〜09)*2が初期の用例と思われます。
話の膨らまし様も思いつかないので以上。
[映画]禁じられた遊び+DVD
禁じられた遊び(原題:JEUX INTERDITS)
1952年公開。
STAFF 監督:ルネ=クレマン、製作:ポール=ジョリ、原作:フランソワ=ボワイエ、脚本:ジャン=オーランシュ、ピエール=ボスト、音楽:ナルシソ=イエペス
CAST ポーレット:ブリジット=フォルセー、ミシェル=ドレ:ジョルジュ=プージューリー他
受賞歴 アカデミ−賞名誉賞、ベネチア映画祭サン・マルコ金獅子賞
ギターの奏でる名曲「禁じられた遊び」が印象的なフランスを代表する古典映画です。著作権切れで叩き売りされているデジタルリマスター版を見たのですが、画面が綺麗過ぎて違和感が。やはりモノクロ映画は劣化した画面の方が味があっていいように感じます。
内容はハリウッドのケバケバしいド派手な演出になれた身には、実に地味で物足りない作品です。起承転結の節々での起伏に乏しく、伏線も回収しきれず、落ちも多少弱い気がします。とは言え、視聴後には「名作文学」を読み終えたあとのようななんとも名状しがたい静かな満足感が残ります。これこそが、この作品を名作たらしめている要因でしょう。
ノスタルジーか義務感がないと正直退屈な作品ですが、詩情溢れる展開に浸って、知的でロマンティックなムードを演出するのにはいいんでないでしょうか。
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[歴史]明治
明治
慶応四(1868)年.9.8〜明治四十五(1912)年.7.30までの年号。制定には、従来の公卿の難陳を廃止して天皇が神前でくじを引く方法を用い、新たに一世一元の制を採用した。これらは、王政復古による天皇親政という理念に基づくものであった。'12.7.30に大正と改元。出典は易経の説卦伝〈聖人南面而、聴天下、嚮明而治〉など。(『岩波日本史辞典』より引用)
「治まるめい」などと揶揄された明治への改元ですが、今に続く一世一元の制の始まりとして、大きな意味を持っています。今回は改元の際の背景などを少々述べてみたいと思います。
そもそも近世以前の改元は「代始改元」*3「祥瑞改元」*4「災異改元」*5「革年改元」*6の四種類がありました。慶応から明治への改元は最初の「代始改元」にあたります。「王政復古」「文明開化」をモットーに江戸時代以前の制定法を取りやめ、新しい方式での選定が行われました。具体的には、従来通りに堂上の学者(菅原五家)に案を記した勘文を提出させ、その中から議定の松平春嶽が数号を選び、それの中から明治天皇が籤を引いて選んだそう*7です。
因みに一世一元の制が導入された原因は、江戸期からずっと儒学者(特に水戸派)が「本場」の明・清の制度の導入を進言し続けており、更に洋行した連中も当時イギリスやロシアで行われていた「(国王や皇帝の名)何年」という紀年法に憧れたと言った辺りにありそうです。
明治の時代背景や主な出来事を記す予定でしたが、気力と時間が尽きたので省略。
日本の年号―揺れ動く〈元号〉問題の原点 (カルチャーブックス (13))
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とりつくろう笑顔は言い訳にもならない
「明治は遠くなりにけり」の時代すら遥か昔、昭和すら記憶の彼方に追いやられそうな昨今。戦後の進歩的文化人共は戦中の弾圧の意趣返しとばかりに、維新以来の戦前全てを否定しようとしました。しかし、今こそ明治の再評価と分析が急務なのではないでしょうか。改革という名の「禁じられた遊び」に手をでしてしまった我々が滅ぼさねばならないものたる官僚制度を始めとしたアンシャンレジームの淵源は全て、明治という時代にあるのですから。DVDに記録される平成という時代は、旧時代の旧弊を拭い新たな制度へと脱皮した明治の如き躍動の時代でしょうか、改革に失敗し暴走した戦前の様な停滞の時代でしょうか。それは我々の温故知新の行動にかかっているはずです。
今日の一行知識
中国では一年に四回改元された年*8がある。
西暦304年、西晋の二代皇帝の恵帝が行いました。病弱な恵帝が何か不吉なことがある度、改元したようです。心が弱ってると、藁にもすがりたくなるようです。改名を進めてくる怪しい占い師にはくれぐれもご注意を。
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*2:三編下(日坂→新居)北八「こいつはい々ことがある。おいらを川へはめた意趣返しをしてやらふ」
*4:何かめでたい瑞祥(麒麟を見かけた、朱雀を見かけたなど)があった際に改元すること。奈良時代に多い
*6:辛酉・甲子の年に改元すること。辛酉・甲子の年には革命が起こると言い伝えられている為。室町時代以降に多い。
*7:「高辻、五条、其の他これまで年号撰び仰せ付けられ候堂上(菅家と存じ候)、それぞれより撰定上申相成り候。岩倉公より小子へ撰定多分にこれあり候間、好き年号を撰み、五六差し出し候様、申し聞こされ候故、参台中直ちに相認め、岩倉まで差し出す。岩倉より相聞に入れ候処、これまでと違ひ、此の年号は衆人の決定を廃し、聖上みづから賢所へ入りなされ、神意を伺ひの処、明治年号を抽籤に相成り候につき、明治と御決定に相成り候」『逸事史補』