最近サボリがちだったんでペースアップ。永井路子『にっぽん亭主五十人史』文春文庫(1994)。癖がなく読みやすい一般向け歴史書の鑑のような本です。胸を抉るような鋭い表現も、頭を抱えるような難解な問いかけとも無縁なので、印象には残りませんが、通勤通学中の暇つぶしには最適でしょう。一度に読むには濃度が薄いので、小分けにちまちま読むのが正解だと思います。このようなこじんまりとまとまった佳作は非常に感想書きにくいので、さっさと内容に入ります。以下ネタバレ注意。
- 作者: 永井路子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1994/07
- メディア: 文庫
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宿六列伝
歴史上の著名人を、夫としての評価を中心に、軽くエッセイ風に解説する本で、文章力も知識も問題ない一般向けの書なので、突っ込み所も感心する所も少ない作品です。なので心に残った数人を取り上げたいと思います。
「山上憶良」貧窮問答歌に代表される「進歩的」な思想は中国にかぶれたせいだという指摘が目新しいです。今も昔も庶民の困窮は、進歩的文化人の大好物なのは変らぬようです。
「道鏡」愛子様の未来の旦那はほぼ確実に「今道鏡」の仇名をつけられるでしょう。誰が地雷を踏むのか知りませんが、天壌無窮の神勅に違背し、日本国二千六百余年の繁栄を喪う羽目にだけはならないよう願います。
「徳川家康」苦労人で粘り強く真面目で道楽をしないのが理想の亭主だそうです。友達にはしたくありませんね。
「大内義隆」彼の正夫人。恋文の誤配で旦那の浮気を知ると、両者に和歌を送り*1ちくりと牽制。風流というか嫌味というか。しかし、怒鳴るしかできぬ粗野な女性や、泣き寝入りしかできない覇気のない女性よりは、こうゆう才気走った聡明な女性の方が好みです。
関白失脚
えーと、纏めれるほどの感想がありませんが、永井女史の作品はどれも読みやすいのでお勧めです。おしまい。
今日の一行知識
日本一の子沢山は徳川家斉の五十五人
あきれるやら羨ましいやら
- アーティスト: さだまさし,渡辺俊幸,山本直純,福田郁次郎,act 21 Tour Band,信田かずお
- 出版社/メーカー: ユーキャン
- 発売日: 2003/01/22
- メディア: CD
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*1:二号宛て「頼むなよ行末かけてかはらじとわれにもいひし言の葉の露」(行く末までずっと変らぬと私にも言った露のように儚い言葉を頼りにしてはいけませんよ)旦那宛て「思うことふたつありその浜千鳥ふみちがえたる跡をこそ見れ」(思うことが二つあるようですね。浜千鳥の歩き方のように行き違った手紙をみて御覧なさい)