脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『一刀斎夢録』

片付けできない人の思考回路 - ピアノ・ファイア
あ、完全無欠にこれだ。長期休暇の宿題期限内に提出した例ないもんなー。反省、反省。


 風邪をこじらせて、気管支炎でも起こしたか、少しでも立ち動くと息切れ+肺からあがってくる深い咳のコンボ。当然仕事になる訳もなく、絶賛引篭り中なのですが、床に臥せってさえいれば、熱もないので普段以上に元気。なので、読書が進むこと進むこと。なんだか、文豪に肺病病みが多い理由が判った気がします。

一刀斎夢録 上

一刀斎夢録 上

一刀斎夢録 下

一刀斎夢録 下

信じるこころは一つ時代の迷い子であっても

 新撰組三番隊組長斎藤一。幕末動乱期の京都にあって壬生浪と恐れられた新撰組の中でも鬼と畏怖された稀代の人斬り。山口一・齋藤一・山口二郎・一瀬伝八・藤田五郎と四度の改名をせざるを得なかった彼の数奇な人生。老境に入ったかつての魔人は当代最強の剣士に何を語るのか?


 『壬生義士伝』『輪違屋糸里』に続く新撰組シリーズ第三弾。今回の主人公は斎藤一とあって、人情や純愛の皮をかぶった前作までとは違う、生成りピカレスクの匂いが漂います。しかし、抜き身の刀のような鋭い切れ味の悪漢ぶりは前半の坂本龍馬暗殺と長州藩密偵粛清でおしまい。中盤以降は新撰組の退潮と歩を一にする負け戦の敗走ばかりになってカタルシスに欠けます。鎮魂歌というにはちと陰鬱に過ぎるその重く泥臭い物語は個人的には少し残念でした。「男の死に場所とは何処か」というテーマは実に考えさせられるものがありますが、前半の雰囲気で単純に斎藤一大暴れの娯楽小説が読みたかったなあとちょっとしょんぼり。
 まとめると、雰囲気や構成・読後感は壬生義士伝に一番近いので同書のファンの方は必読。当時より脂が抜けて円熟味が増した分読みやすさや整合性に関してはこちらの方が上、その分往事の勢いには欠けてますけど。勿論吉村貫一郎も実に彼らしい活躍してますよ。

この乱れきった世に悪は栄え

 タレント揃いの幕末史においても頭二つ抜きん出た人気を誇る新撰組一党。なぜそこまで?とつらつら考えるにその魅力は良くも悪くも単純なところにあるんではないでしょうか。途中の変節もなく離合集散もほぼ隊内で自己完結。それでいて個性的な役者揃いと来ているのだから二次創作のタネにはもってこいでしょう。正直最近の歴女ブームには多少辟易している口ですが、平成の太平の世に幕末の英雄伝を壮大なサーガに発展させる原動力となってくれるのであれば、それはそれで寿ぐべきことのような気もします。まあ当人たちは草葉の陰で男泣きしてるかもしれませんけどね。

帰ってきた今日の一行知識

江戸時代江戸では醬油は嗜好品に分類されていた
味噌は生活必需品扱いだったので、ケの日の汁は味噌汁、正月の雑煮などのハレの日は醬油の澄まし汁といった使い分けがなされていたようです。日本は醬油の匂いがするってのは、結構最近になってからのことだったんですね。