脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『MM9』

http://w-ch.org/2007/12/13_02gou_001.php
知ってるの258曲でした。ぎりぎり半分に届かず。もっと精進します。


 旅行に行った自業自得とは言え、二週間休みなしは流石にきついっす。

MM9

MM9

ソドムの闇光の闇彼方の闇果てなき闇

 小説余り読まない私ですが、この人は大好きな小説家と人に紹介できる数少ない人物の一人です。そんな山本弘の最新作は、現実に怪獣が存在するパラレルな現代日本で怪獣対策に日夜奮闘する気象庁特異生物対策部、通称「気特対」の面々の日常を描いた短編集。氏お得意の独立の短編を連続させて一本筋の通った長篇に仕上げてあり、鮮やかなラストには特撮愛を掻き立てられます。気を抜くとおバカなギャグ作品になってしまいそうな素材を「人間原理」をギミックに組み込むことで、立派なハードSFに仕上げているのが鮮やかです。それでは以下各作品の紹介。

緊急!怪獣警報発令

ああまただよ。この前も丹沢にでっかい怪獣が出るって警報出して、はずしたでしょう?」by某タクシー運転手

 小笠原沖に謎の海生巨大怪獣出現。気特対、今こそ君達の出番だ!!

出現怪獣:怪獣3号「シークラウド


 導入編。登場人物と敵を丁寧に紹介しつつも一気に世界に引き込む第一話のお手本のような一篇。これ読んで面白いと思えなければ、残念ながらあなたにこの本は合いません。大人しく本を棚に戻しましょう。

危険!少女逃亡中

顔はもういい!首から下を写せ、首から下を!」by久里浜祥一

 巨人型怪獣出現。頑是無き少女という反則極まりない外見を持つ難敵に気特対はどう挑む!?

出現怪獣:怪獣6号「ヒメ」


 なんだか『大日本人』を思い出してしまう一作。放置は出来ず、かといって退治すれば各種ナイーブな団体からの理不尽な抗議が殺到することが確実というジレンマを描きたいのは分かりますが、その為に出して来るのが巨大な裸の美幼女という辺りに作者の業を感じます。

脅威!飛行怪獣襲来

こんな美人とデートの最中に、仕事のことを考えてるのがけしからんってこと。」by浜口映子

 UFOかUMAか?謎の未確認飛行物体が日本縦断中。たまのデートに勤しむ灰田涼のプライベートは守られるのか?


出現怪獣:怪獣1号「グロウバット」


 知的で独立心旺盛な姉御肌と私のストライクゾーンど真ん中のはずなのに、何故山本弘の書く主人公の彼女はこうも魅力に乏しく感じてしまうのでしょうか。

密着!気特対24時

怪獣は言うならば異次元の存在なんです。」by案野悠里

 涙と汗と笑顔と人情の気特対密着ドキュメント。誰もが知ってるが誰も知らない機密のベールに包まれた気特対の素顔を大公開!!

出現怪獣:怪獣5号「メガドレイク」


 「テレビや新聞の取材を真面目に受けてると頭が悪くなる」との研究室の教授の至言を思い出しました。傍若無人なマスコミを適当にあしらってる作者の苦笑が見えてくるようです。ただこれだけ皮肉っておきながら、テレビマンが単なる悪役になってないのが鮮やかです。

出現!黙示録大怪獣

この世界に、怪獣は必要なんだよ。」by伊豆野幹生

 史上初のMM9クラスの怪獣が遂に出現。神話時代の生き残りたる前人未倒の最強怪獣対気特対。気特対は日本国を守れるか!?

出現怪獣:怪獣7号「クトゥリュウ


 最終決戦!!だけあって出てくる怪獣もメジャーな大物です。怪獣の存在や決着法を説得するための各種神話のトンデモ解釈はと学会会長の面目躍如。これでもかと広げられたハッタリとばら撒かれた伏線がラスト一点に収束していく快感は見事の一言。

金のメッキの桃源郷

 等身大特撮は仮面ライダーを筆頭に大好きなのですが、どうも巨大ヒーローにはあまり食指が動きません。とは言え、ケイブンシャの『怪獣大図鑑』は少年時代のバイブルだったのは事実。種々様々な魅力的な怪獣達は今でも僕の血肉となっています。愚にも付かない「人間ドラマ」に走り勝ちな昨今の「硬派」特撮には原点回帰で、謎の怪獣の魅力をこれでもかと詰め込んだハッタリの利いた一作を期待したいものです。