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人を呪わば穴二つ。自業自得の極みです。しかし相変わらず民主党は自爆がうまいなあ。
『天切り松闇がたり』残り三巻一斉レビューの予定でしたが、紙幅と時間と気力が尽きたので大人しく一冊ずつ感想書きます。
- 作者: 浅田次郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1999/09/01
- メディア: 単行本
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月のしずくで育てたならば
「残侠」
「なら、よおく見とけ。おめえらの笑う旧弊てえのは、こういうもんだ。」by政五郎
正月四日の初盆で寅弥が拾ってきた老人。彼が名乗ったのは耳を疑う名前だった。
清水の次郎長一味の小政と言えば時代劇に興味のない私でも知っているビッグネームです。明治の初年に死んだはずの彼を大正の世に登場させる度胸・根性は凄いものがあります。仁侠映画では泥臭くダサく聞こえる仁義の切り方が浅田次郎の手にかかると、垢抜けた小便ちびるほどかっこいいものになるから不思議です。
「切れ緒の草鞋」
「斬った張ったも、恨みつらみも、みいんな遠い昔のこって、今にして思やァ黒駒の勝蔵も安濃徳も、立派な侠客だったてえことでござんすかねえ。世の中、まったく男が少くなりやした。」by政五郎
前回の続き。ひょんなことで安吉一家に逗留することになった「小政」。時代遅れの流れ者の流儀を貫き通す彼の扱いに困り始めた頃、一家に面倒事の出来して・・・
話自体はどうってことのないものですが、江戸の侠客の礼儀作法が非常に興味深い作品です。この煩瑣な礼儀の1%でも今のヤクザが持ってれば、多少の尊敬もされるでしょうに。
「目細の安吉」
「親を恨むなよ、松。どんな親だって、てめえをこの世に生んでくれたんだ。血より濃い水なんてもんは、あるようでねえんだぞ。」by杉本安吉
警察と古い親分衆のやり口に嫌気がさして、抜け弁天の屋敷を引き払い、独立独歩の小所帯になって以来、トンと音沙汰のなかった「おしろい」から急の連絡。平民宰相原総理の下で辣腕を揮う岡警視総監が抜け弁天一家との手打ちを希望との事。この申し出に「目細の安」の出した答えは・・・
戦利品
- 白井検事・・・金時計
- 岡喜七郎警視総監・・・百五十円
「目細の安」面目躍如。個性的過ぎる部下の陰に隠れて今ひとつ影の薄かった親分が遂に出陣。自身を歌った童歌を背に中抜きをかけるシーンの映画的な演出は是非実写で見てみたいところ。しかし、問題は誰が演るか。この貫禄を出せる役者なんて本当にいるのでしょうか。
「百面相の恋」
「銭ってもんにァ、ちゃんと名前ェが書えてある。」by村田松蔵
偽帝大生本多常次郎は困っていた。大正恐慌の煽りで住み慣れた下宿が立ち退きを迫られているのだ。少し景気が悪くなっただけで紳士の仮面をかなぐり捨てて、賤しい金貸しの本性を露にする大銀行の無体を許すまじ、と「書生常」が恩と義と情とほんの少しの愛のために立ち上がる。
戦利品
- 三菱銀行丸の内本店・・・二千円
普段は東京帝大に通う風采の上がらない青っ白い学生、しかしてその正体は百の顔を持つ天才詐欺師「書生常」。ベタですが、こういう二面性を持つヒーローっていうは外れがありませんね。個人的にはこの「書生常」が一番のお気に入りです。「振り袖おこん」の艶やかさや「黄不動の栄治」の色気も捨て難いですが、やはり根っからの文系人間としたら「書生常」のスマートさに憧れます。
「花と錨」
「あたしの恋人はこの五本指さ。」by沢之井こん
おこん姉さんにラブレター!
おこん姉さんが朴訥の極みの海軍軍人に懸想されるお話。恋愛話は背中が痒くなって嫌いなのですが、候文でかかれた謹厳実直なラブレターは非常にかっこいいです。軽佻浮薄な昨今こんな正式な擬古文を書きこなせる作家は非常に貴重です。
「黄不動見参」
「これが天切りの七つ道具だ。あとは何もいらねえ。曲尺も鉋も墨壺も、何もいらねえ。どうでえ、身軽な稼業だろう。だが肝心かなめの道具があとひとつ―心意気だ。」by黄不動の栄治
松蔵天切りデビュー!!
作者大のお気に入り栄治兄さんの出番。かっこよくはありますが、内容がないよう。
ひっそり夢のどこかで咲くのでしょうか
ハードカバー一冊になんと八篇収録。さしもの「短編の名手」といえ、どれも消化不良は否めません。『鉄道員』バブルで忙しい時期の雑誌連載を収録しているようですが、出版社ももっと作品の質の管理維持に気を遣ってもらいたいものです。文才は消耗品だということをもっと認識しなければ、本格的に出版業界立ち行かなくなりますよ。
- アーティスト: 片倉三起也,宝野アリカ,ALI PROJECT
- 出版社/メーカー: 徳間ジャパンコミュニケーションズ
- 発売日: 2001/04/25
- メディア: CD
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*1:遊女が初めて客を取ること。