脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『歴史の本音』

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 昔話を一席。私が大学に入学した頃、世間は歴史教科書問題花盛りの時期でした。昼休みになる度、小林西尾藤岡らを糾弾する演説が声高に聞こえてきて、嗚呼俺は京大にいるんだ。と奇妙な感慨に耽ったものでした。父母の政治と宗教と山にははまるな*1との訓戒がなければ、若気の至りで無謀にもその議論の輪に加わっていたかも知れません。希望に満ち溢れた新入生の穢れを知らない無垢な瞳を見てるとなんだか無性に懐かしくなったので、当時の愛読書を引っ張り出してみました。ネタが尽きた*2の?とか、どーせ今日も負けるんだろと高をくくってたんじゃねーの、とかの邪推はしないでください。お願いプリーズ。では以下ネタバレ注意

歴史の本音

歴史の本音

愛する者を守るため傷つくこともあるだろう

 それにしても彼らはどこに消えたのでしょうか。世の右傾化の波に乗り遅れたか、新進気鋭の宮崎哲弥や老舗の本格派櫻井よしこに駆逐された感が否めません。一時とは言え、若年層のオピニオンリーダーに成り掛けた彼らの末路がこれとは涙を禁じえません。
 しかし、改めてこの本を読んでみるとその理由が分かる気がします。まず何より中途半端。本人たちは過激なことを書いているつもりでしょうが、ネットでの未検閲の議論に慣れた今となっては、日和見の弱腰にすら見えてしまいます。更に、センスや道徳観がいかんせん古めかしく説教くさい。とどめに、お偉い教授様のプライドが邪魔をするのか、エンターテイメントに徹しきれず、結果、学術書としては論外だし、読み物としては不親切な中途半端なできになっています。とはいえ、海部宮澤細川羽田村山橋本の「喪われた十年」を経て、日本が一番沈滞しサヨク勢力が最後の隆盛を誇った時代に書かれた世間へのアンチテーゼ、啓蒙の書物としてはこれ以上を望むのは酷なのかもなのかもしれません。このような「時代と寝た」本は、後代に一冊の本として読んでも価値がないのかも知れません。時代の空気も読書の大事なフレーバーだというのを思い出させてくれた一冊でした。

 このまま綺麗に終わってもいいのですが、一応内容についても。全体として、明治維新日清日露の大勝を成し遂げた明治人の偉業とそれを支えた高潔な精神を賞賛し、大東亜の取り返しのつかない敗北を招いた昭和人の精神の堕落を糾弾し、身も心も中共露助鬼畜米英の家畜に成り果てた平成人の奮起を促すという構成なのです。ほぼ精神論一辺倒なので、具体性と説得力に欠けます。例えれば、中谷彰宏齋藤孝の軽薄さに何処か通じるところがあります。楽して売ろうとか人々を善導してやろうとか色気を出してしまうと、きちんとそれなりの出来に収まってしまうのですね。誠実さこそが本の紙様の祝福へのパスポートなのでしょう。いつの日か僕もそれにありつける日が来るのでしょうか。

痛みを隠して起ち上がれ

 さんざけなしましたが、読み直すと、今の自分の歴史観の元*3になる意見がちらほらありました。
 花も恥らう青春時代、その頃に溺れた女など今更恥ずかしくてどんな顔して会っていいのか分からない。って気持ちはあるでしょうが、勇気を出してもう一度手にとって見ましょう。きっと自分の根っこを再確認できるはずです。ほら、赤川次郎神坂一村上春樹が本棚で貴方を待ち焦がれていませんか。

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*1:最後の一か条が女でない辺りに、両親からの絶対の信頼を感じます。

*2:「ぼくのすきなうた-我が青春のスターチャイルド編」とか「日本における各国への偏見の考察-Gガンダムをテキストに」とか書きかけてたんですが、理性が勝ちました。リクエストかネタ切れがあったら続きを書きます。

*3:明治維新の主体は武士ではなく下級官僚達であるとか、日露後に日本がとるべき道は満州共同経営による対米協調路線であったとか