脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『舞姫・うたかたの記』

 ぶっちゃけ龍騎のパ(ry。失礼作品が違いました。小ネタはさておき、興が乗らず更新一日サボっちゃいました。すいません。さて本日の感想森鴎外氏ですが、歴史好きや軍ヲタにとっては、脚気に苦しむ兵士たちを見殺しにした最低陸軍軍医総監としての方が有名ですが、近代文学黎明期の大家として名高く、今でも根強いファンも多いようです。しかし、個人的には舶来コンプレックスと権威主義の固まりな俗物、といった印象で好きでなかったのですが、この度食わず嫌いはよかるめえと、久しぶりに読み返してみました。結果、久しぶりに本を読む苦痛というものを思い出しました。なので全五編中表題作の二編で挫折してしまいました。調子に乗って次回予告なんてするんじゃなかった。というわけで今日の感想は悪口満載ですので、ファンと国語教師はスルーするのが吉です。それでは森鴎外舞姫うたかたの記岩波文庫(1981)以下ネタバレ注意

舞姫・うたかたの記―他3篇 (岩波文庫 緑 6-0)

舞姫・うたかたの記―他3篇 (岩波文庫 緑 6-0)

愛情と友情、非情

 神童と讃えられ、挫折を知らぬ主人公が異国の地で貧しい少女と恋に堕ち、それが元で一度はドロップアウトするが、友人と人物眼のある名士の引き立てにより、再び栄達の道を歩み始める。一度は愛した彼女を捨てて。
 とありがちなストーリーな「舞姫」ですが、時期的に見てこちらがアーキタイプなのでしょう。しかし、表現技法の十分に発達した現在の小説に慣れた目から見ると、構成の甘さや、心情描写の稚拙さが目立ちます。「雷電朝青龍もし戦わば」っていうこの類の論争は人類永遠のテーマなのでしょうが、そのジャンルの創世記の天才も現代で通用すると喧伝するのは、ジャンルそのもののレベルの底上げというものを無視した暴論なのではないでしょうか。そこいらは時代的に仕方ないと目を瞑るにせよ、無意味な横文字専門用語の羅列がインテリの厭らしさを引き立てます。少女エリスに対する視点も常に上からで、それに自己投射しているであろう作者の人格が伺われます。とどめにエリスに引導を渡す一番の汚れ役も友人に押し付けられ、自分は飽くまで被害者の立場を動こうとしません。「近代的自我」とはこのようにおぞましいもののことを言うのでしょうか。
 すみません熱くなりすぎました。クールダウンの為、登場人物の比定を少々。主人公を引き立てる天方大臣ですが、解説書によると内務大臣山県有朋伯爵(明治二十一(1888)年当時)*1だそうです。森はここで山県に見出され、陸軍軍医総監へまっしぐら、って筋書きなんですね。

うそつきな、唇

 「うたかたの記」鴎外の処女作です。基本的な感想は上述の通り。ただマリィのキャラクターが非常に魅力的なので「舞姫」よりは読みやすいです。マリィの独白部分は、美しい文語調の文章と相俟ってぐいぐいとこちらを惹きつけます。しかし、ラストが酷すぎます。伏線らしき伏線もなく唐突に無意味に訪れる悲劇は僕に決断する勇気を与えてくれました。自分は常々小説はまとまった構成よりも、個々の描写を優先して評価していたのですが、ここまで読後感を完膚なきまでに破壊してくれるラストシーンは初めてです。近代文学への過渡期だからしょうがないとは分かりつつも、これならまだ前近代の戯曲のようにデウス・エクス・マキナでも担ぎ出して強制終了してくれた方がまだありがたいです。

shining☆days

 最後に一応纏め。今まで散々けなしてきましたが文章は文語調の非常に綺麗な旋律で、声に出して読むには最高でしょう。しかし今回改めて思いましたが、文語文は近代小説と致命的に相性が悪いようです。言文一致運動が希求されたのも分かります。いままで馬鹿にしててごめんなさい。結論としては、文学史上一大転機をもたらした画期的な作品だというのは理解できますが、現代人それも文章に慣れてない若年層にこれを読ませるのは本離れを推進してるとしか思えないのですが、皆さんいかがお考えでしょう。文章作成の見本にするにも、この文体を現代口語と調和させるにはよほどの才能と知識が必要とされるのではないのでしょうか。真似する気にもなりませんが挑戦する人は頑張ってみてください。努力でどうこうできる領域じゃない気がしますが。結論としては、過去の亡霊はおとなしく研究対象で満足してて下さいといったものでしょうか。
 追伸:リベンジしたいので鴎外作品でこれは面白いというものがありましたらお教え下さい。もう自分で開拓する気力ないです。

今日の名言

 われを狂人と罵る美術家ら、おのれらが狂人ならぬを憂へこそすべきなれうたかたの記」よりマリィ=ハンスル
 日本人は有名人に倫理や常識など益体もないものを求めるので困ります

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*1:当初私は名前の類似から大蔵大臣(山県外遊中は内務大臣兼任)松方正義伯爵(当時)だと思ってました。音が似ているところから当時の有名人の名前の漢字を拝借しただけだったんですね