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女だけが妖艶だなんて誰が決めた。
夏休みに三連休はちと寂しいなっと。てなわけで、夏休みの自由研究第二弾。
こないだ海に行った帰りの車内。夜もいい感じに更けて当然怪談大会となったわけです。しかし、その席で出たいくつかの質問に答えられないという致命的な失策を犯してしまいました。このままでは沽券にもかかわりかねないので汚名挽回のエントリーをでっち上げてみました。関係者一同は見逃す勿れ。
汚れ知らぬ少女のようにすべてを信じた
「妖」について
まずは分かりやすいのから。
Q、「妖」ってなんで女偏?
A、「妖」の原義は「(怪しいほどに)美しい」という意味なので、女偏なのは当然。
1、なまめく。あでやか。なまめかしい。しなを作る。「妖艶」
2、あやしい。わるい。まがまがしい。ばけもの。「妖術」「妖怪」
3、わざわい。「妖祥」 (『大漢語林』より)
これだけで終わると、いかに負けた腹いせの埋め草と言っても愛想も色気もないので解説。
「妖」の旁は髪を振り乱した巫女の形象で「なまめかしくもあやしい」を意味します。偏部分は強調の為に付けられただけで深い意味はないようです。ちなみに余談ですが、「巫女」が女性なのは、女性の方が「神憑り(一種のヒステリー症状)」を起こしやすいからだそうです。決して、赤袴にはあはあするためではないので、瀆神行為は厳に慎みましょう。
閑話休題。てなわけで、1の意味から、2の意味が派生するわけですが、「祅(地のわざわい。)」*1と音通を起こし、3の意味も包含するようになります。これに引っ張られて、2の意味が主流になったというのが経緯ではないでしょうか。
ちなみに車中で出た「男に騙された女が沢山化けて出てたから女偏をあてた」という説ですが、中国では死後成仏できずに迷い出る魂には「鬼」の字をあてるので可能性なさげです。残念でした。
ろくろ首
Q、ろくろ首の首は何故伸びる?体から離れないと体を隠して退治するってやり方通用しないじゃないっすか。
A、説多すぎてわかんね。
ろくろ首の先祖は中国の「飛頭蛮」*2という妖怪であるというのはほぼ間違いないようです。それが日本に伝わって、「抜け首」と呼ばれるようになります。それが「ろくろ首」に進化するのは江戸時代以降のようです。「抜け首」に退治法があって、「ろくろ首」にはない理由ですが、それが流行した時代の差ではないでしょうか。因果応報、勧善懲悪をテーゼとしオチを必要とした中世説話と、停滞した社会への鬱憤晴らしのオチの要らない近世怪談との差が退治法の有無に繋がっていると私は考えます。
今のろくろ首のアーキタイプが鳥山石燕の『画図百鬼夜行』の屏風の上から覗き込むろくろ首の図にあることは疑うべくもありませんが、そのイメージの源泉には多数説があるようです。
- 見世物説・・・学説的にはこれが有力なようですが、順序逆でねーのという疑いが捨て切れません。
- エクトプラズム説・・・『地獄先生ぬ〜べ〜』ではこの説とってましたね。「離魂症」いわゆる幽体離脱を絵で表した際、魂が口から抜け出す情景が、あたかも首が伸びるかの如くに書かれたことに端を発するのではないかとのことです。
- 「清姫」説・・・浄瑠璃で有名な安珍と清姫の物語から。己が身を蛇(龍とも)に変えた清姫がモデル。ろくろ首が女の説明にはなりますが、ちぃと突飛過ぎる気が。
- なんで浮気がばれちゃうの?説・・・石燕図のイメージが象徴するように、絶対にそこにはいなかったはずの女房が、見たかのごとくに的確に浮気の糾弾をしてくる。男性なら一度は経験のある女性の異常な洞察力に対する恐怖の具現化。
最後にオマケ。ろくろ首の語源。ろくろ首は先祖の飛頭蛮の血を受け継ぎ、首に縄目に似た痕を持つ為。細く伸びた横線を持つ首を轆轤縄*3に見立てたものと思われる。現在陶芸で用いられるろくろ*4とは同語源だが直接の関係はなし。お間違いになりませんように。
恋の亡骸も埋もれてなべて土の中
以上八つ当たり気味の埋めネタのはずが思わぬ長文になってしまいました。同乗者一同は読み飛ばさずに読むこと。
この話題になった際、同乗の女性からは、「妖」といい、「ろくろ首」といい男は勝手に女を妖怪扱いして非道いとのお叱りを受けました。全く以てその通りなのですが、男にとって、女性とはどんな学問哲学よりも深遠な最大の謎なのです。艶やかで美しいその御姿。決して手に入らぬものへの羨望と嫉妬が恐怖と忌避へと転じたとて何が責められましょうか。聡明な才色兼備の麗人方には、悟空のやんちゃを見守る釈迦の寛容を願いたいものです。
まんじゅうこわい。お茶こわい。それより何より女がこわい。
参考文献
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幻想世界の住人たち〈4〉日本編 (Truth in fantasy (9))
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今日の一行知識
エルフのトレードマークのとがり耳は日本発祥
『ロードス島戦記』のディードリットが嚆矢ということらしいので、意外と新しいんですね。「中の人」*5は偉大です。
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