最近暇つぶしに愛用しているPitariというサイトで反ワクのお方に絡まれたので表題について少しお勉強してみました。医療機関の門前の小僧としては、しったかで無知を晒すのは怖いのですが、先方が「高校理科レベルの初歩的な医学知識」で構わないとおっしゃって下さったので勇気を出して。
獲得免疫について
獲得免疫系
初期の脊椎動物に進化し、より強力な免疫反応を起こし、個々の病原体が特定の型であることを示す抗原によって判別し記憶(免疫記憶)する機構である。応答は抗原特異的であり、抗原提示と呼ばれるプロセスの間に特異的な非自己の抗原であるという認識が行われる必要がある。抗原特異性の認識によって、特定の病原体あるいは特定の病原体感染細胞に対して調整された応答の発動を可能とする。このような調整された応答を開始する能力は体内の記憶細胞によって保持される。もし病原体が1回以上生体に感染するなら、このような特定の記憶細胞が使われて即座に病原体は排除される。 (wikipediaより修整引用)
紀元前5世紀にトゥキュディデスが「以前病気にかかって回復した人々は患者を看護しても2度罹ることはない」と記したのが、免疫に関する最初の記録かな。経験から上記の知識は人類に共有されていたとは思いますが、体系的な学問となるのは19世紀のパスツールの研究を待ちます。当時主流だった瘴気論を退け細菌の存在を予言した彼やそれに続くコッホ・北里柴三郎らの手により免疫学は長足の進歩を遂げました。
肝心の機序としてはwiki読むだけで頭痛くなるくらいに複雑怪奇なのですが、自分なりの理解としては、「ウィルスなどの抗原に体内で生成された抗体が結合することにより標的化され、リンパ球などによる抗原の排除を促す」のが免疫系の基本反応で、獲得免疫ってのは「特定の抗原に対して特異的に結合する抗体を作成する反応を細胞に記憶させること」って理解であってるんでしょうか。ワクチン接種は「発症はしないけど免疫記憶はできる程度に弱毒化された抗原を事前に接種する」ことによって細胞に予習させるって感じでしょうか。
もろに文系的な稚拙な理解で恥ずかしいことこの上なのですが、日常生活生きてく上では上記理解で十分なんじゃないかなと。ちなみに読み物としては少し古いですが↓が面白かったです。
m-RNAワクチンについて
mRNAワクチン
メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる天然化学物質の人工複製物を使用して免疫反応を起こすワクチンの一種。ワクチンは合成RNAの分子をヒトの細胞に導入し、細胞内に入ると、ワクチンのRNAはmRNAとして機能し、細胞は通常、病原体(ウイルスなど)やがん細胞によって産生されるはずの外来タンパク質を作る。これらのタンパク質分子は、宿主細胞を傷つけることなく、対応する病原体やがん細胞を特定して破壊する方法を記憶する獲得免疫を刺激する。
従来のタンパク質ワクチンに対するRNAワクチンの利点は、優れた設計と生産速度、生産コストの低減、細胞性免疫と体液性免疫の両方の誘導である。欠点としては、mRNA分子の脆弱性のため、コールドチェーンの流通と保存が必要であり、コールドチェーンが破綻して注射前に分子が分解すると、投与量が不十分となり、有効性が損なわれる可能性がある。また、従来のワクチンと同様の「予想される」副反応はあるため、自己免疫反応を起こしやすい人はRNAワクチンに対して副反応を起こす可能性がある。
mRNAワクチンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンとして大きな関心を集めている。2020年12月初旬までに最終治験を完了し、COVID-19ワクチンとして緊急使用許可を待機していた2つのmRNAワクチンがある(米国モデルナ社のmRNA-1273と、ビオンテック/ファイザー合同で開発したBNT162b2〈Tozinameran〉)。2020.12.2英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は世界に先駆けてmRNAワクチン(Tozinameran)を史上初めて承認した。(wikipediaより修整引用)
「抗原を生成するようコードされたメッセンジャーRNAを細胞に挿入することにより、細胞自身に抗原を生成させ獲得免疫系の反応を惹起する」って理解であってんのかな。「従来のウィルスの弱毒化や抗原の単離とかに比べて開発量産にかかる期間が異常に速い」ってのがメリットのようです。デメリットとしては「遺伝子改造に類したイメージから、非専門家層のヒステリックな拒絶反応を招き易い」てのがあるでしょうか。遺伝子なんて「神聖」な分野に一時的とは言え、人為的な反応を起こさせるってのはそら感情的には怖いですよね。
IgG4について
免疫グロブリンG
免疫グロブリン(抗体)のクラス(アイソタイプ)のひとつで、2つの重鎖γと2つの軽鎖から構成される単量体型である。ヒトの血清の免疫グロブリンの75%を占め、体中の血液、組織液に存在する最も一般的な抗体の種類である。IgG分子は、形質細胞(プラズマB細胞)によって産生され、放出される。IgGには2つの抗原結合部位(パラトープ)がある。鳥類のIgGはしばしばIgYと呼ばれ、血清と卵黄の中に見られる。(wikipediaより修整引用)
代表的な抗体であるIgGのなかでも一番マイナーというか存在量の少ないのがIgG4ってことなんですかね。IgG自体はアレルギーやその他感染症の免疫検査なんかの時の検査項目でよく見る気がします。
でそのIgG4ですが、特徴としては「抗体依存性細胞障害(ADCC:Antibody-Dependent Cell-mediated Cytotoxicity)活性や補体依存性細胞障害(CDC:Complement-Dependent Cytotoxicity)活性が異なり、IgG4は他のサブタイプと比較してADCC活性が低くCDC活性を有さないという特徴があります」ってことなんですが、正直何が何だか。一応「IgG3→IgG1・IgG2→IgG4の順番で生成されて抗原にアプローチする」ってのは何となく理解しました。IgGの関わる免疫反応の最終段階で生成されるIgG4が多量に存在してしまうと一番最初に生成や活動をするはずのIgG3の生成や反応が抑制されるんで、IgG4が高値を示すのは色々不味いってことのようです。
コロナワクチン接種による高IgG4血症の誘発について
www.igakuken.or.jp
この論文の事ですね。現論文は英語なので流石に読めてないですが、上記の東京都医学総合研究所さんの解説記事によると、「頻回のワクチン接種により血清IgG4が上昇し、SARS-CoV-2の免疫回避を促進するだけでなく、がんや『IgG4関連疾患』を促進する可能性がある」だそうです。ワクチン接種の副作用でIgG4が上昇することが報告されていて、そうなるとIgG4関連疾患の発症や再発増悪に繋がるし、上述の通りの機序で理論上免疫反応自体が抑制されうるから、後続のワクチンの効果を逓減させたりがんの発生率増加の可能性を否定できないって感じでしょうか。個人的な感想としては、前者の「IgG4関連疾患の発症や再発増悪」はともかく、後者の「SARS-CoV-2の免疫回避やがんを促進」はかなり想像入ってるんじゃないかなあと。
まとめ
以上を総括しての私の個人的な感想といたしましては、コロナワクチン接種の副作用として稀に高IgG4血症を引き起こす。そこまでいかずともIgG4の過剰生成により、短期的には帯状疱疹の発症、長期的にはがんの発症率のUPが想定されることを否定できない。といったところでしょうか。ただこの副作用が起こりやすいのが、COVIDの高リスク患者ともろかぶりなので、そのリスクを想定した上でもワクチン接種による重篤化回避の便益の方が勝るという感じでしょうか。そもそもクラスター出た瞬間にオペは止まるわ、入院制限かかるわで超過死亡数跳ね上がるんですよね。そう考えると、ワクチン接種は多少の副作用のリスクを考慮した上でも、公衆衛生上欠かせないものだと思います。ポリオの生ワクチンによる薬害があったとしても、ワクチン接種によるポリオの根絶という偉業とは比較もできない訳で。とは言え、ワクチン打つたびにロシアンルーレット回すのも胃が痛いので、製薬会社各位には外野の批判に負けず、安全性の高いワクチンの作成に邁進してもらいたいものです。
