脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

世界の猟奇事件と斜線堂有紀と円融帝について

痛いニュース(ノ∀`) : 【神奈川】「怒りがこみ上げてきて」面識ない女性をバットで殴打 殺人未遂疑いの男(37)逮捕 自らも帰宅後通報 相模原市緑区 - ライブドアブログ
Twitterかなんかで見た「こういう誰でも良かった系の犯罪者は結構、ヤクザとか明らかにガタイのいい男とかにも襲い掛かっているが、そっちは何事もなくあっさり撃退されてニュースになってないだけ」って内情にはなるほどなあって膝を打った。


 

おいそれと女を待っていた少し馬鹿な男と

猟奇事件+世界

猟奇
 怪奇・異常なものをあさり求めること。(『広辞苑 第五版』より引用)

事件
①事柄。事項。
②(意外な)できごと。もめごと。
③訴訟事件の略。裁判所に訴えられている事柄。
(『広辞苑 第五版』より引用)

世界
①宇宙の中の一区域。一仏の教化する領域。また、一説に「世」は過去・現在・未来の三世、「界」は東西南北上下を指し、「世界」はすなわち衆生が住む時間・空間。
②地球上の人間社会のすべて。万国。
③人の住む所。地方。
④世の中。世間。うきよ。
⑤世間の人。
⑥同類のものの集まり。
⑦ある特定の範囲。
⑧歌舞伎・浄瑠璃で、戯曲の背景となる特定の時代・人物による類型。
(『広辞苑 第五版』より引用)


 世界の猟奇事件と言って自分がすぐに思い浮かべるのは、唐沢俊一氏の『大猟奇』『世界の猟奇ショー』。レディース作家の奥様(ソルボンヌK子)のリアルさとチープさが同居するその独特な絵柄で描かれる凄惨な事件の数々は思春期真っただ中の自分にクリティカルヒットでした。あれから、裏もの系のコンビニ漫画で山ほど取り上げられるジャンルではありますが、未だにあれ以上の衝撃と感動には出会えていません。古本趣味といい、一行知識へのリスペクトといい、これといい、ホント自分は唐沢俊一の影響大きいなあ。

斜線堂有紀

斜線堂有紀
 平成五(1993)年~。日本の小説家。
 秋田県生まれ。埼玉県育ち。上智大学卒業。幼少期は体が弱く、星新一*1など片っ端から本を読んでいたという。ミステリーの面白さを知ったのは小学生時代に読んだはやみねかおる*2の作品。また、中学1年の春に読んだ佐藤友哉*3の『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』に衝撃を受け「佐藤友哉がいなければ、私は小説家になっていなかった」と明かしている。大学在学中であった2016.10投稿作「キネマ探偵カレイドミステリー」にて、第23回電撃小説大賞の「メディアワークス文庫賞」を受賞。'17同作にて作家デビュー。ペンネームは島田荘司*4『斜め屋敷の犯罪』から。'21.2『楽園とは探偵の不在なり』が第21回本格ミステリ大賞(小説部門)候補作となり、注目を浴びる。(wikipediaより修整引用)


 ミステリをとんと読まない今時奇特な読書人の自分が斜線堂有紀氏を知ったのは確か『ベストSF2021』で読んだ「本の背骨が最後に残る」*5。その名状しがたい、強烈な違和感を伴う凄絶な読後感に一発で名前を覚えた記憶があります。その後は「BTTF葬送」で頭をぶん殴られるような衝撃を受け、 もう完全にファンに。多作で自分が定期購読している唯一の雑誌『S-Fマガジン』にも「骨刻」「奈辺」「不滅」とコンスタントに短篇を発表してくれており、そのどれもが抜群に面白くかつぶっとんだ設定でこちらの常識をぶち壊してくれるんだからたまりません。今現在、伴名練・竹田人造と並んで一押しの作家さんです。

円融帝

円融天皇
 天徳三(959)~正暦二('91)年。在位:安和二('69)~永観二('84)年。村上天皇*6の第5皇子、母は藤原師輔*7の娘安子*8。諱:守平、法名:金剛法。
 959天皇宣下、'67冷泉天皇*9の皇太弟となり、'69即位。在位16年、'84花山天皇*10に譲位。'85出家。藤原詮子*11との間に生まれた懐仁*12一条天皇として即位。四円寺の第1である円融寺は円融天皇の御願。その後、円融院(寺)は院政の端緒を開いた場所として注目される。(『コンサイス日本人名事典 改訂新版』より引用)


 村上天皇の第五皇子として誕生し、あまり期待もかけられなかったか、当時主流派から外れていた藤原北家の次男坊兼通の庇護下に育った守平親王。長兄の冷泉天皇がどうも統失気味だったようで早めの譲位が求められた際に、左大臣源高明の後援する次兄の為平親王立太子争いを演じることになります。当時高明は後援者の藤原師輔を失い孤立気味だったこともあってか、守平親王の勝利。その後、安和の変で高明が失脚した後満を持して即位しますが、権力争いの駒にされる人生はまだ始まったばかり。まず手始めに、大鏡にも描かれる関白伊尹死後の、兼家兼通兄弟の骨肉の関白職争い。ここでは亡母安子の遺志という体を取って大恩ある岳父兼通に関白就任を斡旋できました。そして、兼通死後次こそはと色気立つ兼家を尻目に関白職はもう一人の岳父の頼忠へ。こうなっては兼家の怒りは収まるはずもなく、ここから長きにわたる兼家と円融天皇の主導権争いが始まります。まず先手は兼家、自身の娘を女御に押し付け、その詮子は兼通・頼忠の娘が懐妊できないのを尻目に懐仁親王を無事出産します。正直そこで勝負ありなんでしょうが、円融天皇の凄いのはそこから。皇后に子供を産んだ詮子ではなく頼忠の娘遵子を指名してぶちぎれた詮子に我が子もろとも里帰りされたり、寛和の変の果てにようやく摂政の座をつかんだ兼家を横目に抜け抜けと院政始めようとしてみたりとなかなかの強心臓。正直かなりマイナーな天皇ではありますが、摂関政治が確立するまでの過渡期だったり、院政を先取りしてみたりとなかなかに重要なポジションのお方。上述の通り、ちょっといじればキャラも立てやすそうなので、是非今後もっとメジャーになってもらいたい天皇のおひとりです。

猟奇的なキスを私にして最後まで離さないで

 そういえば今まで語ったことなかった気がするので、ここで改めて自分の読書遍歴を。怪人怪獣図鑑と学習まんがとシャーロックホームズを無邪気に楽しんでいた小学校時代、中学時分に赤川次郎・西村京太郎・神坂一友野詳で今に続く読書習慣をつけ、高校の頃は井沢元彦唐沢俊一岡田斗司夫・と学会に頭からはまってこのblogを貫く思想の原型を固め、円融帝期の権力闘争だとか世界の猟奇事件だとかにニチャアってしてました。そして、大学時代にようやく小説の楽しさを知り浅田次郎山本弘に耽溺、社会人になってからは上田早夕里がそこに加わるくらいだったんですが、『S-Fマガジン』を読み始めてからは斜線堂有紀などの上述の三人に加え、石川宗生・柴田勝家・柞刈湯葉・春暮康一etcと追っかけたくなる作者さんが大挙して押し寄せてもう大変。人生の後半戦に入ってしまった今生であとどれだけ素敵な作品と作者に出逢えるのでしょうか。これからも一期一会を大切にしていきたいと思います。


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*1:親一。星製薬第2代社長。父一、母(小金井)精。東京大学農学部農芸科学科を修了した後、父の急逝により、経営難の星製薬を引き継ぎ、大谷米太郎に売却。以降は著述業に専念し、「ショートショートの神様」と称される人気作家となった。代表作:『ボッコちゃん』・『妄想銀行』・『未来いそっぷ』(小説)他。

*2:代表作:『名探偵夢水清志郎事件ノート』・『怪盗クイーン』・『都会のトム&ソーヤ』(小説)他。

*3:代表作:『1000の小説とバックベアード』・『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』・『デンデラ』(小説)他。

*4:代表作:『占星術殺人事件』・『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』・『寝台特急はやぶさ」1/60秒の壁』(小説)他。

*5:書誌年表見ると「回樹」の方が先で、それにも大分感動したのは覚えてるんですが、作者名を覚えるまでには至ってませんでした

*6:第62代天皇。諱は成明。父醍醐帝、母藤原穏子。忠平死後、摂関を置かず、天皇親政を実現、延暦の治と呼ばれる善政を敷いた。

*7:右大臣。正二位。父忠平、母源昭子。才知に長け、醍醐天皇より史上初めて臣下として内親王を降嫁されるなど重遇され、村上天皇の治下では事実上朝政を掌握し天暦の治と呼ばれる善政を布いた。

*8:村上天皇女御。父藤原師輔、母藤原盛子。子に承子内親王冷泉天皇為平親王・輔子内親王・資子内親王円融天皇・選子内親王

*9:第63代天皇。諱は憲平。父村上天皇、母藤原安子。父村上天皇崩御により即位するも、統失により奇行が目立ったため早々に弟の守平天皇に譲位。表舞台で繰り広げられる権力闘争を尻目に天寿を全うした。

*10:第65代天皇。諱は師貞。父冷泉天皇、母藤原懐子。外祖父の藤原伊尹に擁立され僅か生後10か月の異例の若さで立太子。成人後即位し藤原義懐・惟成の輔弼により革新的政治を志向するも寛和の変により失脚出家。出家後も長徳の変の発端となるなど、藤原氏内部の派閥争いに翻弄される人生を送った。

*11:東三条院円融天皇女御。父兼家、母藤原時姫。子に一条天皇

*12:第66代天皇。父円融天皇、母藤原詮子。寛和の変により即位。当初は外祖父の藤原兼家の、のちには岳父の藤原道長の傀儡として藤原氏の全盛期を現出した。