脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『破滅の王』

【悲報】就職ルール廃止へ :暇つぶしニュース
何やっても謎の新卒信仰やめない限りどうしようもないと思うの


 10月に入り、いくら秋とは思えない寝苦しい夜が続くからと言って、いつまでもクーラーに頼っててはいかんと一念発起して窓開けて寝たら、一発で風邪ひいた。エアコンって偉大なのね

破滅の王

破滅の王

In force 空を埋め尽くす despite 恐怖の群れ

 1943年上海。大詰めを迎えつつある第二次世界大戦の最中に英仏独米日の各大使館に届けられた論文のフラグメント。そこに書かれていたのは治療法皆無の細菌兵器R2v、通称キング。サルファ剤やペニシリンすら無効化し腸内細菌に寄生する狂気の産物。その「破滅の王」を上海自然科学研究所研究員の宮本敏明は止められるのか。


 祝!直木賞候補作選定。そして落選残念でした。円城塔や宮内悠介の前例はあるとはいえ、まさかこの人の名をここで見ることになるとは。上田早夕里女史の歴史系SFの大作です。読後感は火星ダーク・バラードっぽいハードボイルド成分多め。明らかに731部隊系の先行作から影響受けまくっているというかオマージュなので、そっち系が好きな人にはお勧め。新種の細菌の恐怖が・・・って惹句ですが、正直特務機関の監視や追跡の恐怖の方がよっぽど背筋を凍らせてくださいました。政治犯ってあんな悍ましい恐怖と戦ってるんだと感心しきり。そんな訳で終盤以降はこの人の悪癖「せっかく魅力的な世界観を構築したのにそこで繰り広げられるのは単なるB級スパイアクション」にずっぽりはまってかなりの竜頭蛇尾で消化不良。落選理由をぱっと見の小難しさに求める人が多いですが、それ以上に展開に大分問題があると思うの。とは言え、その点だけ諦めれば、いつもの華麗な上田節がかなりしっかりした時代考証の上に展開されますので、どうぞご堪能あれ。読みやすいとは言え2段組み350ページは結構なボリュームですよ。

耳を澄ませ遥か彼方聞こえるだろう友の声が

 文章力ってかけがえのないギフトをもらった人は言葉の力を過信する気があるなあとしみじみ。特にこの方に顕著なんですが、「虚心坦懐に話し合えれば最終的には何とか分かり合えるはず」って信仰が根っこのところに感じられます。日本語の通じないキチガイって学歴職業関係なく結構な数いますよって言いたくなるなあ。以上汚れちまった元文学青年の繰り言でした。

Wings of the legend/Babylon

Wings of the legend/Babylon

帰ってきた今日の一行知識

731部隊の本来業務は「凍傷の予防及び治療法の研究」
それがどうしてああなった。現場出先機関の無体な暴走は日本人の悪い癖ですね