脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『華竜の宮』

年上の部下の扱いが分からない : ガラパゴス速報 跡地
年齢職責関係なく職場では誰に対しても敬語っての貫いとくのが私の処世術。年次や年齢や出自なんかの野暮な序列に頭悩ますのはナンセンス。どうしても必要なら階級か官位制でも導入すればいいんだ。正直たぶんそれが一番合理的です。


 2週間のご無沙汰皆さんいかがお過ごしだったでしょうか?私はというと、京都広島に帰省しておりました。なんで帰郷の事を帰「省」というのかがちょっと分かった気がします。戦場を離れて家族旧友と会うと良くも悪くも色んなこと考えちゃいますね。さあ、もう一回エンジンかけなおすぞ。

華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

夢の始まりは遥か海の向こう

 ホットプルームにより250メートルもの海面上昇が引き起こされたリ・クリティシャス後の世界。文明の過半が蒼穹の水底に沈んだ中でも人類は己が肉体を新たな環境に適応進化させ、しぶとく生き延びていた。そんな過酷ながらもようやく秩序の訪れかけた世界に再度降りかかる大災厄。人類はこの危難の時代を再び乗り越えられるのか。


 『魔法少女まどか☆マギカ日本SF大賞落選の衝撃の一報から、あの一世を風靡した話題作を蹴落としてまで受賞するとはどんな作品じゃいと気軽に手に取った一冊。読んだ感想はたった一つ。これを落選させたら日本SF大賞の沽券に関わるレベルの文句の付け所のない王道ど真ん中のSF作品。緻密な世界設定も魅力的なキャラたちも勿論ですが、何より暴力的なまでの文章力が大賞たるに相応しい威容を誇示しています。それだけ骨太な作品でありながらも、読んでてストレスを感じないのはラノベ文化に育った最近の作家の美点でしょうか。どこかグループSNEシェアードワールド的匂いを感じさせる世界設定とか、伏線張りまくった登場人物とか、外伝スピンオフ作り倒せそうな想像の翼をはためかす余地を多分に残してくれた構成は実に今風。
 主題の方はリ・クリティシャス後の黙示録的世界を懸命に生きる新人類の生命力に満ちた諦観に彩られる死生観。それと、主人公の青澄によって繰り返し語られる「対話」の重要性。純粋に言葉の力を信じる彼の姿は、正直ガキっぽい無邪気な正義感といわれてもおかしくないものですが、この作者がいうと説得力を感じてしまいます。これだけ文章の神様に愛されてるひとなら、そりゃあ言霊の力も信じたくなるわな。
 2段組約600ページの娯楽小説にあるまじき分量を誇る一冊ですが、読まないのは人生の損失です。いつまでもケータイ小説をのさばらせない為にも、実力者には正当な評価が与えられるべきです。

ひたすらにただ走り続けた日々はかけがえの無いこの仲間との軌跡

 日本人の死生観ひいては文化の根底にあるのはやはり仏教的諸行無常観。神の名の下になる永遠への到達をこそ至上命題と考える唯一神教のみなさんとは決して相容れぬものがあります。仮令もし2012のマヤのカレンダーが本当だったとしても、きっとそれはそれで美しい物語になるんだろうなって考えるあたり自分はどっか疲れてるのかも知れません。
 

帰ってきた今日の一行知識

世界の地震の約1割は日本の領海内が震源
M6以上のものに限れば2割超。日本文化の根源にある刹那性はたぶんこんなところから育まれたんでしょうね。正直永遠なんてものを信じれる環境じゃあありません。