脱積読宣言

日々の徒然に読んだ本の感想書いたり、カープの応援したり、小旅行記書いたりしてるブログです

『20世紀SF2〜1950年代 初めの終わり』

http://himarin.net/archives/3496182.html
Gガンダムみたいに奇蹟の一作に多分きっとなってくれるはず。なるといいなあ。


 自転車新車購入僅か2日で盗難。鍵かかってないとはいえ、マンションの門扉の中に入れといたのに・・・。東京は治安が悪い悪いとは聞いていたが正直ここまでとは。そう考えると京都も広島も民度高かったんだなあ。


SRWZⅡ破界篇進捗

  • 2周目最終話「破界の世紀」リヴァイダモン撃破。トップエース:クロウ=ブルースト@ブラスタ。

20世紀SF〈2〉1950年代―初めの終わり (河出文庫)

20世紀SF〈2〉1950年代―初めの終わり (河出文庫)

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身勝手な運命に息をついても

初めの終わり

石器時代青銅器時代鉄器時代―これから先、こういうのは全部ひっくるめてひとつの大きな名前で呼ばれるだろう。地球上を歩き、朝には鳥の声を聞いて、羨望のあまり叫んだ時代としてね」by「夫」

 
 大地を這う重力の奴隷から、大宙を舞う自由人への雄飛の刻は今。


 相変わらずブラッドベリの作品は詩的です。で、私は現代詩が大っ嫌いです。

ひる

「こいつの正体がなんであるかは知らん。しかし、わが合衆国陸軍のコンボイがこんなものに阻止されると思ったらまちがいだ」byオドネル将軍


 突如ニューヨーク州のど真ん中に現れた謎の生物。アメリカの威信はこの怪物を打ち砕けるのか。

 
 古き良き昭和円谷特撮テイスト漂う一編。あの頃の特撮屋がSF作品を元ネタにしていたのがよく分かります。最近の特撮が今一ぱっとしないのは多分元ネタの選び方に問題があるんでしょうね。

父さんもどき

「あいつには、二、三、教えてやらなきゃならんことがある。ふたりだけでじっくり話し合ってみたほうがよさそうだ」by「テッド=ウォルトン

 
 父さんが父さんもどきに乗っ取られちゃった。チャールズは父の仇をうち、平穏な日々を取り戻せるのか。


 古き良き昭和東映特撮テイスト漂う一編。「ひる」がウルトラマンだとすれば、こちらは怪奇大作戦か。以下同文。しかし、何度よんでもこの類の入れ替わり譚は条件反射的に小便ちびりそうになるなあ。

 

終わりの日

うらやましいぜ。バカになれば、なんだって信じられる」byノーマン


 数多の予言に謳われた破滅の日が遂に訪れる。その最後の日に彼らは何処で誰と何をして過ごすのか。


 浅田次郎の「特別な一日」の翻案元(多分)。避けえぬ破滅を前に世紀末チックな大混乱が当たり前な欧米と、特別でないただの一日を過ごしてみせるんだの気概を持つ日本。同じテーマを扱うにもこれだけ差が出るのは、やはり国民性の差なんでしょうね。

なんでも箱

「彼女は幸福な、環境に適応した人格を持ってるみたいに見えるわ。ただほんのちょっと、この奇妙な……プラスがあるだけなの」by「先生」


 人には見えない「なんでも箱」を後生大事に抱えるある少女の精神的ケアにおける課題と介入の是非について。


 実に難儀なちょっと彼岸に足を踏み入れかけた女の子の担任教師の奮闘物語。教師の方は心の底から共感できるんではないでしょうか。

隣人

「レジナルドだと!百姓のくせにごたいそうな名前じゃねえかい?」byバート=スミス

 
 平和で退屈で閉鎖的なクーン谷に鉄のカーテンを超えてやってきた謎の隣人ヒース。彼の来訪はこの村をどう変えるのか。


 ザ・田舎!って感じの閉鎖性とおせっかいがにじみ出た一編。田舎者の難しさは日本だけの問題ではないんだなと。

幻影の街

フェックル冷蔵庫!フェックル冷蔵庫!買わなきゃ損だよフェックル冷蔵庫!フェックル、フェックル、フェックル、フェックル、フェックル、フェックル―by宣伝車


 謎の爆発音と賑やかな宣伝車の音の支配する街タイラートン。その喧しくも静謐な日常に潜む違和感に気付いてしまったバークハートの運命はいかに。


 世界は誰かに作られた箱庭ってありふれたモチーフをうまく使った変化球。なんだアメリカ人もゴリ押しの宣伝屋には辟易してるんだってなんだか微笑ましくなる作品です。

真夜中の祭壇

「おまえがほんとに百戦錬磨のスペーサーなら、レッドラインはどこにある?」by「若者」

 
 どこにでも転がっているとある酒場の日常風景。


 しんどい長期出張から帰ってきた、誰も待ってくれてる人もいない寂しい若者がふらりと入った場末の酒場でどこにでもいるような酔っ払いに絡んで意気投合するってだけのお話なんですが、最後にはトンでもないどんでん返しが!
 待ってはいるんですが、それがどうしたって感じです。文章自体はきれいで読みやすいので読み飛ばしましょう。

証言

〈信じろとはいわない。ただ、すがるだけ、好意に〉byメイス

 
 プロキオンから地球にやってきた哀れな亡命者もしくは悪辣な侵略の先兵メイス。「彼」の正体と運命はこれから始まる陪審員裁判に委ねられた。アメリカ人はこの招かれざる客をどう遇するのか。


 見事な良作。延々と続く敏腕悪役検事のターンに辟易としてきたころに突如明かされる驚愕の事実。それによって天秤は傾き決着の時は来る。と逆転裁判好きな方には堪らない一品。自由の女神の下りは余程のアメリカの愛国者でなければ失笑ものですが、それを差し引いても「彼」が「彼女」に変わる瞬間のカタルシスは最高の出来。本短編集随一の出来栄えです。

消失トリック

「ボーデシアのことをお忘れか?」byリーラ

 戦場ストレスに心を病み精神病院に収容された患者たち。厳重な隔離病棟から彼らが消失する事件が頻発。彼らは何処に逃避しているのか。


 T病棟の患者たちの中二病全開な妄想世界の描写が素敵。そうだよね、「世界」と「自分」は本来こうあるべきだよね。

芸術作品

「いいか、ISCMの力を借りないで、どうやってオペラ上演を実現させられると思う?きみがテルミンの独奏曲だのなんだの、その手の金も手間もかからない作品を書くつもりならともかく、そうでない以上―」byシンディ=ノニス


 シュトラウス22世紀に来る!!250年の時を越え蘇った天才はこの時代に何をもたらすのか。


 天才は今の時代にあっても天才足りうるのか。を問いかける作品かと思えば、なんだか変な方向にお話が進みます。正直精神造形家って、シュトラウスを登場させるためのガジェットに過ぎないものだとばかり。「シュトラウス」の苦悩と諦観の漂うラストシーンの美しさは必見です。

燃える脳

「あの男は、左目の筋肉だけで地獄を渡りきれる。もし、計器類が故障しても、自分の生きた脳だけで宇宙を航行できる……」byゴー・キャプテンへの世評


 英雄ゴー・キャプテン最後の戦い。


 B級スペオペと昼ドラと純文学と現代詩を混ぜこぜにしたような作品。まあ、そんなものが面白い訳もなし。

たとえ世界を失っても

いざ満たせ、この盃を
悔恨の冬着を春の炎にくべよ
時の鳥、とびゆく道はあとわずか
そして見よ、鳥はいま空をはばたく

byオマル=ハイヤー


 地球を震撼させたダーバヌーからの来訪者ラバーバード。このカップルは何故ダーバヌーを逐われたのか。そして、何故わざわざ召還されなければならなかったのか。


 保守的キリスト教道徳の支配する50年代のアメリカに同性愛の是非を問う問題作なんでしょうが、21世紀の今となっては何が問題なのかさっぱり。迂遠に過ぎる描写も間接的にも程のある問題提起も正直退屈。なのですが、何より物語の肝のラバーバードの正体を作頭解説で示唆しちゃあかんでしょう。編集は要反省。

サム・ホール

「サム・ホールに会いにいく。解放のために、またもどってくる」byマシュー=ウィリアムスン

 
 近くにあるは寄りて見よ、遠からんは音に聞け、ミスターリベリオン、サム・ホールここにあり。


 ちょっとした出来心で作った仮想人格があれよあれよという間に独り歩きして、いつの間にか「実体」を持った反逆の英雄となる。ちょっと前のフェイスブック革命を髣髴とさせる物語です。50年も前にこれを予見するとはポール=アンダースン恐るべしといったところでしょうか。あれよあれよという間に事態が雪だるま式に大きくなっていく様はなんとも痛快。サム・ホ−ルの英雄譚として読むだけでも十二分に楽しめます。しかし、自分のほぼ全人生が登録された管理社会か。自分のように傷だらけの経歴を持つ身としては、恐ろしいやら、逆に楽でいいかもって思うやら。

痛みから遠く逃れようとしても

 先の40年代の科学への牧歌的な信仰というか素朴な過大評価もあっさり潰え、ディストピアの頻出するようになった50年代SF。現在進行形で滅びの歌を聴きつつある東日本在住民としたら他人事ではありません。いつの日かあの頃のような「科学」への盲目的な信頼を取り戻すことのできる日は来るのでしょうか。まあ、今回のは科学側の問題っていうより、扱う側の致命的な怠慢と傲慢の引き起こした単なる人災な気もしますが。日本人ってどうしてこう作成は得意でも運用はド下手なんでしょうね。


美しければそれでいい

美しければそれでいい

帰ってきた今日の一行知識

現実に存在した単一として最強の兵器のの破壊力は50メガトン
その名はツァーリ・ボンバ。カタログスペックでは100メガトン級の破壊力を有するも、高威力過ぎて実験できる環境がないという理由で急遽デチューンされた代物で、リトル・ボーイの約3300倍の破壊力を誇り衝撃波は地球を三周する怪物兵器。なのですが、フィクションで攻撃力インフレの嵐にさらされた身にはたったそんだけ?と言いたくなる数値です。しかし、第二次世界大戦で使用された爆薬の総量が5メガトン分と聞くと、コロニー落としの600万メガトンって破壊力の異常さに改めて驚かされます。