続新撰組について - 脱積読宣言

痛いニュース(ﾉ∀`) : 「真昼の決闘」猫vs蛇 - ライブドアブログ
いざ尋常に

　最近地味にヘコミ気味です。時間が経つにつれじわじわとボディーブローのように効いてきます。もう気力萎え萎えでやばいったらありません。と泣き言を言っていても始まりません。とりあえず目の前の宿題から一つづつかたして行こー。

迫リ来ル恐怖払イ　必殺乃剣ヲ翳セ

竜馬暗殺

　慶応三(1867)年11月15日夜八時半頃河原町蛸薬師下るの醤油屋近江屋新助方二階にて、坂本竜馬及び中岡慎太郎暗殺。この事件の犯人は当時から諸説紛々入り乱れ、現在も歴史好きの格好の議論の的となっています。ここではその様々な説を紹介していきましょう。

紀州藩説・・・海援隊の連中はこれを信じていたようで、暗殺の一ヶ月後の12月7日に、陸奥陽之助（宗光）を先頭に、紀州藩公用人三浦久太郎を油小路花屋町下るの天満屋で襲撃しました。しかし折悪しく、新撰組 *1が護衛していたため、両陣営死者一名ずつを出したものの襲撃は失敗に終わります。因みに、疑われた理由は事件の半年ほど前、海援隊の伊呂波丸と紀州藩の明光寺丸が備後の鞆の浦で衝突事故を起こし、伊呂波丸が沈没してしまい、その賠償金として海援隊が紀州藩から八万三千両をふんだくったという一件によるものです。なお、天満屋事件の首謀者の陸奥は紀州脱藩であり、その恨みもあったのではないでしょうか。
新撰組説・・・身内以外にはわかりにくい愛憎関係を抜きにすれば、分かりやすいのはこちら。近藤に引導を渡した、谷干城・板垣退助ら土佐藩連中を筆頭に人口に膾炙し、明治期に新撰組の悪名を広めるのに一役買いました。襲撃二日前に伊藤甲子太郎・藤堂平助が竜馬を訪問し、新撰組に気をつけるように警告してみたり、襲撃現場に残された鞘を原田左之助のものだと証言してみたりと、高台寺党の熱心なアナウンスがあったのも、広まった原因でしょう。
高台寺党説・・・そんなことしてたら、当然疑われます。最近流行の説で、『壬生義士伝』*2もこれを採用しています。
薩摩藩説・・・幕府を徹底的に武力で粉砕したい薩摩藩にとって、大政奉還を推進する竜馬は邪魔者でしかなかった。という最大受益者が犯人という理屈ですね。これも最近ブームです。尤もこれは以下に何でも竜馬を過大評価しすぎでしょう。フィクションの世界では『修羅の刻』で中村半次郎が陸奥出海に妨害され失敗する*3のが印象的です。

　他にも、土佐藩説・長州藩説・佐幕派説・中岡慎太郎説と百花繚乱ですが、実は学説的には京都見廻組の犯行一択です。明治三年に逮捕された今井信郎が自白した「刑部省口書」という一次資料が残っているので覆すのは相当に難儀でしょう。当時竜馬と幕府は大政奉還に伴い手打ち済みでしたが、現場には通達が届いていなかったようです。見廻組は以前に寺田屋で竜馬を襲撃した際、二名が射殺されているので、その恨みもあったのではないでしょうか。
　歴史の偉人竜馬がそんなつまらない理由で殺されたとは信じたくないのは分かりますが、もう少し冷静になってもいいんじゃないでしょうか。

新撰組崩壊

　大概駄々長くなってしまったので、以下流し気味で行きます。
　武弁一辺倒の新撰組からの脱却を図りつれてきた伊東ですが、はなから近藤に従い沈み行く幕府に忠誠を誓う気はさらさらなかったようで、斎藤（近藤の密偵だったようで、油小路事件以後何事もなかったかのように復隊）・藤堂・鈴木・篠原等をつれて独立します。
　当然近藤がそれを許すはずもなく、慶応三年11月19日、伊東を酒宴に呼び出し、その帰り途で暗殺。その死体を回収しに来た高台寺を襲撃。藤堂平助・服部武雄・毛内有之助の三名を討ち取ります。彼等の死体は二匹目の泥鰌を狙って、五日ほど放置されたそうで、近隣住民の迷惑が知れます。

　この事件と打ち続く隊内粛清で旧来の幹部の過半を失った新撰組にかっての輝きはもうありません。鳥羽伏見の戦いで、井上・吉村・山崎らを失いほうほうの体で江戸に戻った彼等は新撰組を解散し甲州鎮撫隊に再編成*4されます。意気揚々と甲州城に進軍した彼等ですが、谷干城率いる土州軍に散々に打ち散らかされ、完全に隊としての機能を失いました。終焉の地下総流山まで近藤に付き従った幹部は土方ただ一人というのだから悲しすぎます。

戦場ニ響キ亘ル　雄叫ビニ血潮滾ル

　調べれば調べるほど、新撰組という組織の駄目さ加減が露呈される気がするのですが、気のせいでしょうか？昨今の過大評価にもほどがありすぎます。
　とは言え、さすがに日本全国から寄り集まった隊士は多士済々、フィクションのネタに用いるのには最上でしょう。何せ、まともな対外戦果は池田屋事件のみ、あとはほぼ隊内で自己完結しているという便利な組織です。調べる資料が極小で済みます。気軽に歴史に手を出すのにはむいてるでしょうが、単なる新撰組マニアで終わってしまう危険性も常に孕んでいます。
　新撰組ファンの皆さん是非他の幕末の関係者にも手を出して、立派な歴史ヲタクへと進化してください。意外と楽しいですよ。