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何処がとはいえないが、絶対間違ってる気がする
このブログがさびれたら、それはカープのせいです。もっと更新したいなー。
愚痴はさておき、汚名挽回の為、たまには真面目な感想文を書きます。なんと古典の名作短編集です。当初の予定ではこの路線がメインになるはずだったのに、何処で道を間違えたのでしょうか。死んだ子の歳を数えても詮無いことです。というわけで、以下ネタバレ注意。
見上げれば星は天に満ちて―心に残る物語 日本文学秀作選 (文春文庫)
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科学と夢と情熱と日本の頭脳が生み出した
百物語 森鴎外
きょうぼくわひゃくものがたりにさそわれました。なにがおきるのかいまからたのしみです。
リベンジ失敗。何処が面白いのか、全く以って分かりません。相変わらず文章は綺麗ですが、それ以上の魅力を感じません。何より物知ったげな無用の横文字が神経を苛立たせます。何がアクサンチュエエだ一生アウフヘーベンしてやがれ馬鹿野郎。僕のようなお子ちゃまにはまだ鴎外は早いようです。だれか鴎外の良さを教えてください。ぷりーず。
秘密 谷崎潤一郎
ある日僕は知った。秘密という名の快楽を。多分僕は戻れない。
嗚呼谷崎はいい。女装趣味に目覚めた主人公が、昔の女と再会し、逢瀬を重ねるが、女は決して在所を明かそうとしない。意地になった主人公は何とか女の家を突き止めるが、秘密を失くした女に主人公は何の魅力も感じなくなってしまった。と、どうってことない筋立てですが、その文章の美しさには魔性を感じます。女装した主人公の艶姿。昔の女との邂逅シーンの幻想性。谷崎文学ここにあり。といった感じでしょうか。健全な青少年の皆さん。谷崎には手を出さないようにしましょう。世に氾濫する小説の九割がゴミになってしまいますよ。
疑惑 芥川龍之介
先生。私は女房を殺しました。
陰湿。粘着。無惨。人間の業が大好きな芥川らしい作品です。ねちっこくまとわり付くような不快感を、是とするか非とするかで、評価は真っ二つでしょう。救いのない結末に、蓋然性の乏しい展開。万人におすすめできる作品とは到底思えませんが、小さな頃押入れに篭った経験のある方なら、この魔性の快楽も理解できるでしょう。さあ、頑張って片付けようかな。
死体紹介人 川端康成
Box and Coxにまつわる掌篇
もっさり。久しぶりに川端を読みましたが、永年蟠っていた違和感の秘密が解けました。僕は川端が嫌いです。世間の異常な高評価に騙されていたようです。どうぞ「この権威主義の犬」と罵って下さいまし。
具体例。文章が回りくどい。描写に華がない。場面転換が不親切。小説が人格研磨のツールな御仁にはいいかもしれませんが、私には無理でした。古の発展途上の小説に疾走感を求めるのは無茶としても、谷崎の耽美、芥川の狂気、安吾のカリスマに比べると、どうしても凡庸な感が否めません。後、これは結構重大なことだと思うのですが、自分と川端は女の趣味が決定的に違います。これでは好きになれるわけもありません。薫も駒子も嫌いだ。
山月記 中島敦
「己の珠に非ざることを惧れるが故に、敢て刻苦して磨かうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出来なかった。」この言葉を何も感じず聞き流せる人間を、僕は信用しない。
文語文の魅力を彼以上に引き出せる人物など、今までもそしてこれからも決して出ないでしょう。読めば執筆意欲を無くしてくれること覿面です。創作活動の参考は両村上辺りで我慢しましょう。あれくらいなら何とか。って思えます。
身の程知らずの悪口はさておいて、解説。とはいえいまさらこんな著名な作品に私ごときが語ることは残されておりません。中国文学を翻案した作品でこれ以上の作品はないと断言できます。とりあえず読みましょう。難しくて読めなければ、漢文を勉強しましょう。それだけの価値はあります。
狐憑 中島敦
多分人類初の小説家の物語
ショートショート。山月記や李陵の完成度には比ぶるべくもありませんが、作者の非凡性を改めて感じさせます。つくづく早逝が惜しまれます。
業務連絡。友人Kへ。中島敦の全集を貸したまい。
ひとごろし 山本周五郎
ねーみなさん。あいつはこわーい人殺しですよー。近づいたら何されるかわかりませんよー。
結構有名な、仇討ちの相手に実力では勝てぬと悟って、道中人殺しと喚き続けて、ノイローゼにさせて本懐を達した頭のいい侍のお話。独白が多少鬱陶しかったり、途中の恋物語が完全に蛇足だったりと、難は多々ありますが、この題材を選んだ時点で勝ちは決まっていたでしょう。奇妙な与太話を破綻させずきちんと一篇の小説に纏め上げた力量は流石時代小説の大家。安心して読めます。周五郎は隠居後の道楽に丁度いいかも。今からちょっと愉しみ。
補陀落渡海記 井上靖
あなたも退路が断たれた経験はありませんか。もしそれが自分の命に関することだったらあなたはケセラ・セラと笑えますか。
浄土信仰の一種で、和歌山県の遥か南の海上にあるとられた補陀落山を目指して、小舟に乗って旅立つ儀式。即身仏の変形か。
この儀式の拠点の寺の住職が諸事情で望まぬ補陀落渡海を行う羽目になってしまう。実行までの期間の彼の懊悩を通して、人生と死について考えさせる名作。個人的に小難しいのとか哲学的なのは嫌いなのですが、ここまで完成度高いと全然問題ありませんでした。小説技法の進化を実感させてくれる作品。
西郷札 松本清張
お義兄さん。私はあなたを愛してしまいました。良人のいる身で許されぬ恋と知りつつも、逢えぬ日に貴方を思わぬことはありませんでした。
清張文学の神髄ここにあり。絶対清張は現代小説より、ノンフィクション風の時代小説の方が出来がいいと思うのですが、あまり共感を得られません。昭和史発掘などもっと評価されるべき作品だと思うのですが。司馬みたく分かりやすく書いてくれてないのが原因でしょうか。あの媚びない硬質さが大好きなのですが。
二作品*1省略
悪くはないですが流石に他のそうそうたる面子に比べると格落ちの感が否めません。ってゆーか疲れた。
世界に誇るこのパワー
嗚呼疲れた。たまにはこういうアンソロジーを読むのもいいものです。敬遠しがちな作家の作品を自然と読む事になり、新鮮な発見が沢山あります。作家ごとの特徴も分かるし、国語教育には最適だと思います。三流現代小説家や偏向した文化人の小遣い稼ぎに協力する暇があるんならこういう読み比べに時間を割いてもらいたかったです。
若い人は好き嫌いせず、短編をがんがん読みましょう。そうしないとこんな偏屈な偏読家になっちゃいますよ。お兄さんとの約束だ。